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ジョーンズとコーミエのライバル関係の内幕

 



レスラーと戦うとなると、ジョン・ジョーンズはいつも腹に一物を持っている。ましてや相手がダニエル・コーミエとなれば、この元UFCライトヘビー級王者の腹の中は、一物どころでは済まない怒りがわいてくる。

相手がウラジミール・マチュシェンコであれ、ライアン・ベイダー、ラシャド・エバンス、あるいはチェール・ソネンであれ、ジョーンズの気持ちの中では輝かしい実績のレスラーを倒すということには、いつも大きな意味があった。それは「本来は自分だったかもしれない」と世界に宣言するための、ベルトに刻みこまれた目に見えない勲章なのだ。

NCAAディビジョン1や国際レベルのアマチュアレスリングでの優勝歴は、アスリートとしてのジョーンズが成し遂げていない唯一のことである。と言うのも、ジョーンズは約10年前に家庭の事情で大学を中退、プロMMAの世界に急いで足を踏み入れるしかなかったからだ。それ以降、彼は無名のファイターから若き天才、チャンピオン、そして史上最強へと上りつめてきた。いまや彼の最大のライバルは鏡に映る自分自身のみである。

ジョーンズが日本時間4月24日(日)開催予定のUFC 197のメインイベントで復帰し、ダニエル・コーミエと対戦する時、彼は現王者の拳によってではなく、法を犯(おか)してベルトを失った元王者として登場する。現王者コーミエは2015年1月にすでに、激闘ではあったが明確な差をつけられて、ジョーンズに判定負けを喫している。

米国代表として2度のオリンピック出場経験があるコーミエはそれ以来、アンソニー・ジョンソンを王者決定戦で下し、次いでアレクサンダー・グスタフソンを名勝負の末に葬って防衛に成功してきた。コーミエは確かにチャンピオンだが、ジョーンズにはその称号への反論がある。最近、ジョー・ローガンが行ったインタビューの中で、ジョーンズはそのことを直接、コーミエに向かって口にした。

ジョーンズが「ダニエルは王者ではない。ベルトを持っているのは彼だ。でも彼はチャンプではない。それはみんなが分かっていることだ」と口火を切ると、コーミエも「じゃあお前がチャンプだというのか?」と返す。

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ジョーンズ:その通りだ。

コーミエ:だからといってお前は何でも好きなようにやってよくて、その責任を負わなくてもよいというのか?

ジョーンズ:そんな話はしていない。

コーミエ:お前は自分の行いのせいでベルトを失ったんだから、それとこれとは同じ話じゃないか。

ジョーンズ:その点は正しい。確かにベルトを失った。でもあなたはチャンプではない。

コーミエ:じゃあ、チャンピオンはいないというのか? だってお前はチャンピオンではないのだろう?

 


両者がこの間、声を荒らげることはなかったが、そこにはすさまじい緊張感と敵対心があった。両者には、初戦の前の記者会見での乱闘、25分間の試合での激闘、そして2014年夏以来続いている口撃の攻防の蓄積がある。敵対心はなくなるどころか、ますます強くなるばかりだ。この確執を見世物だと言う声も少なからずあるが、そうでないという証拠に、カメラが回っていないところでも彼らはにらみ合いを続けていたのだ。

「テレビ用に確執を無理に作り上げていると思っている人がいる」とコーミエは語っている。「なら、どこかの裏通りにジョンとオレを放置してみてくれ。オレらは戦い始めるから」

こうして現時点でこのライバル関係はライトヘビー級ベルトの保持者が誰であるのかということとは無関係になっている。

「この敵対心はオレがトップなのに、あいつがトップになりたくて仕方がないということから生じているんだ」とジョーンズはローガンに説明している。「でも真実は、彼が自分より優れた相手を扱いきれていないだけなんだ」

「頭がおかしいんじゃないのか」とコーミエは笑い飛ばす。



この確執はどこに端を発しているのだろう。ジョーンズのレスラーへの思いは本物ではあるが、だからといって前述したアマレスのスターたちとの間に、これほどまでの悪感情をこじらせたことはない。自分より実績が上のレスラーを倒すことは、ジョーンズの個人的な目標なのであって、達成したらそれで終わりだ。

“DC”ことコーミエとの初戦の前に、ジョーンズはスタンド戦ではコーミエに勝つだろうと見られていたが、実際にはジョーンズはレスリングで勝負を挑み、結局、その勝負を制してコーミエからテイクダウンを3回奪ったのだった。一方のコーミエは25分間で8回のテイクダウンを試み、1回しか成功させていない。その1回も、ジョーンズが試合前に予言した通りに、ジョーンズがすぐに体を入れ替えている。

「これはレスリングではないんだ。ヒザもヒジも使えるし、パンチもキックもあるケージファイトなんだ」とジョーンズは語っている。「レスリングよりずっと奥が深い。オレはヤツにそのことを教えてやる」

彼は言った通りのことを達成したが、確執の炎は試合後にも残り、結局、来月の再戦までくすぶり続けるのであった。出場停止処分を受けた後、ジョーンズはファンにトレーニング状況と禁酒状況を伝える一方で、将来の対戦相手コーミエに、微妙な、時にはあからさまな当てこすりを投げつけ続ける。その過程でジョーンズは多くのファンにとってアンチヒーロー的な存在となり、先頃ラスベガスで行われた記者会見を、WWEのD-ジェネレーションXでおなじみのチョップのポーズで締めたのだった。

 


これにはファンが大受け。他方、2回アメリカの五輪代表に選ばれたコーミエには、本人も驚くほどの大きなブーイングが投げつけられている。

「ブーイングをすればよい。当然のことだと思うよ」

ルイジアナ出身のコーミエはかつて、ジョーンズと仲良くしない理由を次のように語っていた。

「ジョンがそばにいると自分がいつもと違った感じになるのは、1つには試合で最高の彼を引き出したいからだ。それに加えて、オレにはどうも、ヤツのあの作り物のような態度には賛成できない思いがある」

おそらくこれが本題の本質なのだろう。コーミエはジョーンズの表の顔が裏の顔と合っていないと感じ、裏の顔を露呈させてやろうとしているのである。一方、ジョーンズにしてみれば、史上最強という自分のステイタスも、自分に負けたことも、あくまで認めようとしないベテランからずっとジャブを食らってきたのだ。この確執は本物である。そして、ジョーンズがここ数年、ライバルについて冷静に語ってきたのと同じように、彼は最初の試合の前に、コーミエは敵対したくないタイプの人間だと認めていたのだ。

「僕のことを本気で怒らせる人がいる」とジョーンズは明かしている。「それで結局ブランドン・ベラは顔面を骨折した。チェール・ソネンは1ラウンドで敗退。ラシャド・エバンスは顔面への執拗(しつよう)なエルボー攻撃ですっかり屈辱を受けた。ランページ・ジャクソンに至っては、もう何年もたっているのに、オレのヒザ蹴りにまだ文句を言っている。別に警鐘を鳴らすわけではないけれど、オレを怒らせると戦いへのインスピレーションは高まるのは確かだね」



一方のコーミエも、来月にはジョーンズと戦い、この確執に終止符を打てることに燃えている。

「お前はそうして偉そうにしているのが好きなんだろうが、はっきり言っておいてやろう。これはオレの人生だ。オレはお前を倒すためなら喜んで死んでやる」コーミエはまっすぐにジョーンズの目を見ながらそう語った。ジョーンズは同じ視線で見つめ返しながら、驚くべき返事を口にした。

「そうなる覚悟をしておけよ」