オクタゴンで30秒以上を過ごしたことのないスティーブ・ボッセにとって、UFCキャリアは波乱に満ちた道のりと言えるだろう。 プロ格闘家として8連勝を収めた後、UFCと契約を結んだフランス系カナダ人のボッセは2014年4月にカナダのケベックシティで行われた“ジ・アルティメット・ファイター・ネーションズ・フィナーレ”で同じカナダ出身のライアン・ジモーとのデビュー戦も予定されていた。ところが契約直後、ボッセは戦いで蓄積された治らない肩の痛みを原因に突然の引退を表明したのだ。 ボッセは“ケベック・シニア・ホッケー・リーグ”に加えて、乱闘の多い“ノース・アメリカン・ホッケー・リーグ”で150試合に出場し、1,000分以上のペナルティータイムを経験している荒い男である。そんなボッセは「肩も全身も、すごく痛かったんだ。MMAを辞める決意をした時は、自分の将来のことを考えて、消防士の仕事一本で頑張ろうと思っていた。でも自分の中の戦士心がまたトレーニングに連れ戻したんだ」と説明した。 引退表明から一年が経った頃、再びボッセのUFCキャリアが動き出す。カナダ・モントリオールで行われたUFC 186でランペイジ・ジャクソンの代打としてファビオ・マルドナドと相まみえることになったのだ。しかし、この対決が決まった数日後にジャクソンの欠場が撤回され、マルドナドとの試合が改めて組まれたため、ボッセは語るべき試合がないにもかかわらず、メディアデイに参加するはめになった。 そんなボッセも今は34歳。ようやく去年6月にUFCファイトナイト・ハリウッドでチアゴ・サントス相手にUFCデビューを果たしたものの、その結果は悲惨としか言いようがない。 オクタゴンのドアが閉まるとほぼ同時にサントスの蹴り攻めに見舞われたボッセは下半身や胴体を攻め立てられ、最終的にこめかみに蹴りを入れられてノックアウト。2015年で最高のノックアウトとの呼び声高い一撃を食らってマットに倒れこんだ。 「MMAをやっている人間なら、必ずいつかUFCで戦いたいと夢見るはず」と言うボッセは「なのにオレの初戦はKO負け。しかも人生最大のKOだった」と悔やんだ。 今週末のUFCファイトナイト・ブリスベンにて再びUFCに帰ってくるボッセの相手を引き受けるのが、21カ月もの間、オクタゴンから遠ざかっているジェームズ・テフナだ。 今やUFCのベテランとなったウェス・シムズ、ヒューストン・アレクサンダー、マービン・イーストマンから白星を奪ってきたボッセは「失うものは何もない。(最悪としか言えない結果だった)デビュー戦の後だけに、しっかり自分の実力と、UFCのケージの中で何ができるのかを証明したい」 「この試合に勝って、オレが“ボス”ってことを皆に見せたい」 対するテフナは4連勝を挙げて話題となった後に、グローバー・テイシェラ、マウリシオ・フア、ネイト・マーコートに3連敗を喫する屈辱を味わった。2015年をケガで棒に振ったテフナは母国オーストラリアでの試合に勝利して連敗を止めたいところだ。 一方、ボッセは日本時間3月20日(日)にブリスベン・エンターテイメント・センターで開かれる大会を前に、両者が感じている危機感を楽しんでいるようだ。 試合を目前にして「良い試合をするつもりだよ。ジェームズも地元で、3連敗を止めるために必死で勝ちにくるはずだし、オレも負ける訳にはいかない。必ず良い試合になるよ」とコメントしたボッセ。 デビュー戦でKO負けを喫し、遠回りで不思議なUFCキャリアを歩んできたボッセだが、今週末の試合に勝利することは自身のキャリアに再び意味を持たせるチャンスだ。 しかし、ボッセはそこまで深く考えていない。というのも彼は全力で戦い、ファンを喜ばせることにだけに集中しているからだ。 「暴れて勝利をつかむ。ただそれだけに集中する」と意気込みを語った。