デミアン・マイアが最後にバンクーバーで戦ったのは2011年6月のこと。しかし、マーク・ムニョスに判定で敗れているマイアにとっては決して良い思い出ではないだろう。 マイアはムニョスと対決する14カ月前にミドル級王座を懸けて当時ベルトを保有していたアンデウソン・シウバに挑むも敗戦。その後、同階級でもう2試合を戦った後にウェルター級に階級を落としている。今やウェルター級のトップコンテンダーにまで成長したマイアは日本時間8月28日(日)に行われるUFCファイトナイト・バンクーバーのメインイベントでカーロス・コンディットと対決する。マイアにはファイターとして成長する必要があった。ムニョスに敗れた試合から学ぶことが多かったと常に前向きなマイアは振り返る。 「結果的に物事は理由があって起きるものだ。ファイターとして、そして人として成長するには自分の置かれた状況や経験から学んでいくしかないんだ。グラップリングよりもストライキングに力を入れすぎた時期があった。ムニョスとはその時期に戦った」 2012年にウェルター級デビューを果たしたマイアは、世界レベルの寝技を再び自身の戦法に取り入れ始める。ストライキング技術に頼ることが間違いだったと認めたサインだと考える人も多かったようだが、実際はそうではなかったようだ。 「ストライキングに慣れることで成長を遂げなきゃいけなかった。ストライキングに集中した時期がなかったら、最近のような活躍はできなかったと思う。違う方向性や、アプローチを見いだして成長するためのプロセスだったと考えている」 その結果は現在38歳になるマイアの成績を見れば分かる。2013年にはジェイク・シールズに敗れ、翌年にもローリー・マクドナルドに立て続けに黒星を喫したマイアだったが、それ以降はニール・マグニー、グンナー・ネルソン、マット・ブラウンなどを下して5連勝を達成。連勝によりウェルター級ランキングトップ5に食い込んだマイアは、タイトル挑戦まであと一歩のところに迫った。 「すでにタイトル挑戦権が与えたれてもいいと思っている。“ワンダーボーイ(スティーブン・トンプソン)”と同じだ。タイトル戦に惜しくも敗れているコンディットのようなタフなファイターや元王者を倒すことができればオレにもタイトルに挑む権利が与えられるはずだ」 普段は尊敬的なマイアだが、タイトル争いに関しては決して発言を避けることはしない。魅力的な試合を戦うのは重要なことだと理解しているマイアだが、コンテンダーが長期に渡って順番を待つのであれば意味がないと考えているようだ。 「うまくバランスを保っていかないといけない。そうすることによって、試合の質も利益も上がっていくはずだ」
もしコンディットを下したマイアに待望のタイトル挑戦権が与えられたら? 元王者のロビー・ローラーと対決するよりも、新王者のタイロン・ウッドリーと対決する方がマイアにとって有利なのだろうか? マイアはこう語っている。 「有利とか、勝ち目がないとかは考えない。相手を有利にするのも、不利にするのも自分の準備や戦法、どれだけの力量でトレーニングするか、試合中にどれだけうまく作戦通りに戦えるか、それ次第だ。トップ15に入っているファイターはみんなタフだし、みんな全力で相手を倒すためにトレーニングしている。オレは目の前にいる相手だけに集中して、次に対戦する相手は考えずに、1試合1試合戦うだけだ。今はカーロス・コンディットに集中している。ウッドリーや、コンディット以外の相手を考えるのは意味のない話だ」 マイアは格闘技界で最も大人で、冷静な判断を下せるファイターだ。少なくともトップ10には入るくらい賢明な男だ。そんな真面目なマイアだが、UFCでの活躍をどれだけ楽しいと感じているのだろうか? マイアは笑いながらこう答えた。 「オレは格闘技が大好きなんだ、もちろん楽しんでいるよ。トレーニングも戦うことも楽しいと思える。夢は変わらずUFCチャンピオンになること。ブラジリアン柔術を代表して戦うというプライドがある。子供たちに柔術を教えたりすることも楽しいし、子供たちの見本になることが努力する意味に繋がるんだ。特に自分の子供も生まれて、今はそれをひしひしと実感している。格闘技は人生を通してやってきたし、これからもやっていく。でもプロとして戦えなくなる時が必ずくる。みんな年を取るものだ。でも、楽しみながらトレーニングができて、格闘家として成長を続けられる限り、前進あるのみだと思っている。今はまだ楽しめている」