2016年12月31日(日)に米国ネバダ州ラスベガスのT-Mobileアリーナで開催されたUFC 207メインカードの試合レポート。
バンタム級 5分3ラウンド
T.J.ディラショー vs. ジョン・リネカー
「ベルトを寄越せ。あれは俺のベルトだ! トップコンテンダーと戦っているのは俺だ。アイツはランキング6位や8位と戦っていやがる! クルーズはビッチだ。逃げていやがる! あれはおれのベルトなんだ!」
2016年12月31日(日)に米国ネバダ州ラスベガスのT-Mobileアリーナで開催されたUFC 207メインカードでバンタム級2位のブラジリアン・ファイター、ジョン・リネカーを30-26の大差のユナニマス判定で退けた同級1位、元バンタム級王者のT.J.ディラショーはそう叫んだ。
クラウチングに構えたディラショーが頭を左右に揺らしながら前に出る。リネカーはディラショーのキックをよく見て何度もその蹴り足を受け止めるとテイクダウンを狙う。残り時間3分15秒、鋭い踏み込みからディラショーが両足タックルで鮮やかにテイクダウンを成功させるとガッチリとハーフガードで押さえ込む。ディラショーのダース・チョークと鉄槌も厭わずに強引に立ち上がったリネカーは前蹴りを繰り出しディラショーの構えを崩しにかかる。ジリジリと前に出ながらリネカーが鋭いフックを振るうがディラショーは狙いすました打撃を的確に繰り出し、相手を懐に飛び込ませない。
開始後15秒、一度目の試みでテイクダウンを成功させたディラショーだが、リネカーはすぐに攻防をスタンドに戻すことに成功する。ボディ打ちから上に繋げたいリネカーがジリジリと前に出ると、残り時間3分30秒で再びディラショーが両足タックルを成功させ、相手をハーフガードで押さえ込みながらコツコツとパウンドを落とし始める。残り時間2分30秒、上体を起こしたディラショーのパウンドが激しさを増すと、リネカーは足関節を織り交ぜながらなんとか起き上がるチャンスを探るものの、ディラショーはそれを許さない。
リネカーがジリジリと前にでるがディラショーはキビキビとしたヘッドムーブで相手に狙いを絞らせない。残り時間2分40秒、ディラショーがリネカーの右フックにあわせて容易く両足タックルを成功させると立ち上がろうと背中を見せたリネカーの背後に回り込む。残り時間1分15秒、リネカーを横亀で制していたディラショーが意表をつくヒザ固めを狙うがリネカーはこれを振りほどく。リネカーは逆転を狙い最後までその豪腕を振るい続けたものの、ディラショーの軽やかなフットワークが最後まで相手を寄せ付けなかった。
ウェルター級 5分3ラウンド
キム・ドンヒョン vs. タレック・サフィジーヌ
ドンヒョンが強引に前に出て攻防をグラップリングに持ち込むが、サフィジーヌは切れ味の鋭い支釣込足でドンヒョンをマットに転がしてみせる。すぐに立ち上がったドンヒョンは得意の払い腰を狙うがサフィジーヌも即座に跳ね起きると上手く距離をとってドンヒョンを突き放す。両者の距離が離れると、ドンヒョンはほとんどノーガードで左右の強打を突き出しながら、歩くように前に出る。何度も四ツの攻防にはなるものの、サフィジーヌの巧みな首相撲と支え吊り込みに阻まれドンヒョンはテイクダウンが奪えない。
ドンヒョンは強引に前に出続けサフィジーヌの打撃の距離を潰し続ける。ガードを下げたドンヒョンは何度もサフィジーヌのパンチを被弾するものの、その足が止まることはなくサフィジーヌはやりにくそうだ。両者は組み際に互いに打撃を命中させるがいずれも決定的な一撃とはならならずにラウンドを終えた。
開始早々猛烈な乱打戦を繰り広げる両者。サフィジーヌの右ハイキックがドンヒョンを捉えるが、ドンヒョンは下がらず前に出る。3ラウンドに入るとドンヒョンがサフィジーヌを押し込む時間が長くなったように思えるものの、ドンヒョンも試合を決定づける明確なテイクダウンを奪えない。残り時間50秒、サフィジーヌが両足タックルを見せるがドンヒョンはこれを難なく潰し、すぐに前進を再開する。金網際のスクランブルで、ドンヒョンが横三角を狙ったところで試合終了のブザーが鳴った。
ジャッジの判定は29-28、29-28、そして27-30のスプリット判定でドンヒョンを勝者として支持。これで戦績を22勝3敗1分け1ノーコンテストと伸ばしたウェルター級9位のキム・ドンヒョンは、UFCウェルター級史上4位となる、UFC13勝を記録。一方、元Strikeforceウェルター級王者、UFCウェルター級12位のタレック・サフィジーヌは16勝5敗と戦績を落とした。
フライ級 5分3ラウンド
ルイス・スモルカ vs. レイ・ボーグ
オーソドックスから細かくジャブを突くスモルカの周囲をボーグは時折スタンスをスイッチしながら距離を取って回り込む。残り時間3分40秒、両者が偶発的に交錯すると、スリップしたボーグにスモルカが即座に距離を詰める。するとボーグは鋭い両足タックルで飛び込みリバーサルを成功。ボーグは時折チョークと鋭いヒジを織り交ぜながらスモルカを背後からコントロール。残り時間1分40秒でフルマウントを奪うとそこからアームバー、そしてオモプラータでスモルカを攻め立てる。ラウンド終了間際にボーグを自身のガードに捉えたスモルカだが、その顔面には既に無数のカットが刻まれている。
ボーグが頭を振りながら前に出る。またもや偶発的に距離が詰まった両者はスクランブルに突入し、スモルカがトップを取ったかにみえたところでボーグがタックルでトップを奪い返す。下からのヒール・ホールドで距離を取りたいスモルカだが、ボーグはこれを振りほどくと強烈なパウンドを振り下ろし、一気にサイドに回り込む。なんどもスクランブルを仕掛けるスモルカだが、ボーグは素晴らしい反応で相手の仕掛けを潰し、スモルカを逃がさない。
ボーグはすぐに距離を詰めるとスモルカを金網に押し込み両足タックルで押しつぶすようにテイクダウンを奪う。スモルカも足を登らせ積極的な仕掛けを見せるが、ボーグは的確な対応を見せ、スモルカに反撃の糸口を与えない。ボーグは残り時間3分でスモルカを肩固めにとらえるとガッチリと締め上げるがここはスモルカに凌がれる。肩固めを逃れたスモルカはなんとか立ち上がるものの、ボーグはしつこく組み付きスモルカに反撃を許さない。残り時間30秒、スモルカはついにボーグを突き放し、攻防をスタンドに戻すことに成功し、打撃で先手をとったスモルカがボーグの背後に回り込みかけたところで試合終了のブザーが鳴った。
ジャッジの判定は30-27、30-26、そして30-26でレイ・ボーグ。2ラウンドで足首を痛めたボーグだったが、最後までパフォーマンスを落とさずフライ級の強豪ルイス・スモルカを完封してみせた。
戦績を10勝2敗と伸ばしたフライ級13位のレイ・ボーグは、試合後に減量苦から階級を上げる可能性を問われると、「調整をしなくてはいけない。早い時間帯の計量は初めてだったし、個人的なゴタゴタもあった。だけどDJと戦いたい、来年に実現できたらと思っている」とフライ級にとどまる意思を明らかにした。また、この一戦の結果、同級12位のルイス・スモルカは11勝3敗となっている。