アイルランド生まれのスーパースター、コナー・マクレガーは、歴史を作りつつあるだけではない。彼はすでにMMAのゲームを変えてしまっている。
UFC 196はもともと、フェザー級王者のマクレガーが史上初の世界王座2階級同時制覇を目指す冒険だったのだ。
しかし、ライト級王者のハファエル・ドス・アンジョスが負傷欠場することとなり、代打でネイト・ディアスが登場、マクレガーとウェルター級で”マネーファイト”を行うこととなった。結局マクレガーは、単に階級を1つ上げただけでなく、ライト級を飛ばして2階級上げてしまったのである。”マクレガー vs. ディアス”はUFC 196の中でもとりわけイチオシの一戦だ。
マクレガーとディアスはここ数カ月、因縁を高めてきていた。マクレガーの前回の試合後、ディアスがマクレガーを挑発、この夢の対戦の可能性をファンの頭に植え付けた。そのわずか2カ月後、夢が現実になったのである。
試合だけでもファンの期待感は高まるばかりだが、これに先立つ舌戦もますます魅力的だ。先週、カリフォルニア州トーランスで開催された試合前記者会見でマクレガーとディアスが繰り広げた辛辣(しんらつ)な言葉のやりとりは、ファンの気持ちをガッチリとつかんでいる。
ストックトンの悪童、ディアスはいつものディアス流で、マクレガーの一言一言をコケにしてまともに取り合わず、一方でフェザー級王者も、いつもながらの独創的な口撃を連打。この論戦こそ、ファイトウイークのハイライトになることは間違いない。
しかし、オクタゴンの扉が閉まった瞬間、マクレガーはこれまでUFCで経験したことのない課題に直面することになる。対戦相手が自分より大きいのだ。フェザー級において”ノートリアス”ことマクレガーは対戦相手を見下ろしていたが、今回はディアスの方が身長も高く、リーチも長い。ディアスは、このことがマクレガーの泣きどころになるはずだと考えている。
マクレガーはUFCおよびWECフェザー級の歴史上、最も高いノックダウン率(15分間で2.31回)を誇っており、パワフルで正確な打撃で、UFC7戦中6試合でノックアウト勝ちを記録している。ディアスはボクシングスキルに優れ、好戦的な打ち合いでおなじみだ。ディアスは、マイケル・ジョンソンに勝った試合で、1試合での強打打撃着弾数238というUFCレコードを誇る。柔術も世界レベルで、グラウンド戦になればマクレガーにとって厄介なことになる可能性がある。 
ホリー・ホルム vs. ミーシャ・テイトロンダ・ラウジー以外の女性がUFC女子バンタム級タイトルを防衛したことはこれまで一度もなかった。それもこの試合で過去のこととなる。
UFC 196のセミメインイベントでは、ホリー・ホルムが獲得したばかりのタイトルをかけて、最初の挑戦者ミーシャ・テイトを迎え撃つ。
2015年11月、オーストラリアのメルボルンで戦った試合と比べ、今回はホルムにとってずいぶん違った試合になる。前回のホルムは、元絶対王者に対して圧倒的に不利だと言われながら試合に臨んだが、今回のテイト戦ではホルムの方が有利と見る向きが多い。ラウジーに対するあの残酷なまでのノックアウト劇の後である。そんな下馬評も驚くべきことではない。
しかし、ホルムは今回の試合にあたって、テイトはこれまでに全く経験のないパズルを解くようなものであり、いっそう難しい試合になると自分に言い聞かせている。テイトにはレスリングをベースにした試合運びがあり、打撃の持ち技もラウジーより危険だ。
テイトのレスリングと打撃が、この階級で史上最高のストライカーであるホルムをしのぐことができるのかどうかが見どころである。
メインカード
2試合のライトヘビー級対決の前には、今回のビッグカードの1つ、ランキング4位のアマンダ・ヌネスと11位のワレンチナ・シェフチェンコの一戦が組まれている。ロンダ・ラウジーが復帰までに時間がかかるようであれば、ヌネスにとってここでの勝利が次のタイトル挑戦者につながる可能性も濃厚。他方でシェフチェンコが勝てば、この階級に次代の大物登場との非常ベルが鳴りひびくことになる。
過去5戦で4勝のヌネスは前回、サラ・マクマンを圧倒して1ラウンド、一本勝ちを決めた。シェフチェンコは12月のUFCデビュー戦で、サラ・カフマンにスプリット判定勝ちを収めている。
世界レベルの柔術で有名なヌネスも、近年はストライカーとして進化中。ムエタイの勇者シェフチェンコは、その立ち技でヌネスに試練を課したいところだ。 
プレリム
UFC 196のメインカード突入前にも、プレリミナリーの2試合で花火大会が予想される素晴らしい試合が組まれている。ともにウェルター級戦で、1つはエリック・シウバ対ノーディン・タレブ、もう1つはケガから復帰のブランドン・ザッチ対シアー・バハドゥルザダだ。
UFC入り以来4年強のシウバは、常にウェルター級で最も面白い試合をする選手。一方、対戦相手のタレブは、”ジ・アルティメット・ファイター:ネイションズ”に出場、UFCでは過去4戦で3勝を記録している。
ザッチは2試合連続で1ラウンドでのノックアウト勝ちを記録した後、ベンソン・ヘンダーソン、グンナー・ネルソンという難敵との試合に臨んだものの、ともにタップアウト負けを喫してしまった。そんなザッチがいよいよ戦線復帰、ケガも癒え、再びパンチがうなりをあげる。 
アーリープレリム
ディエゴ・サンチェスの名前が対戦カードに書かれていれば、たいていその試合がパフォーマンスボーナスの有力候補だ。そのサンチェスは今回、ライト級に復帰し、ベテランのジム・ミラーと対戦する。
サンチェスはUFC全体の中でもファンが最も多い選手の1人であり、退屈な試合は決してしない選手だ。ミラーは過去4戦で3敗しているが、その対戦相手はライト級のトップコンテンダーばかり。両者とも次こそは勝ち星を狙って、オクタゴンにすべてを出し切ることだろう。