UFC 199のメインイベントは負傷したクリス・ワイドマンに代わってマイケル・ビスピンがルーク・ロックホールドの対戦相手になったことで、またひとつ、熱きライバル対決が実現する。2人の対決は日本時間6月5日(日)にカリフォルニア州イングルウッドのザ・フォーラムで行われる予定だ。
ロックホールドとビスピンが互いに嫌い合っているのは明白。もっと言えば、昔からずっとそうだ。それでも、今回のメインイベント変更にあたっての変化はストーリー展開だろう。
当初、ロックホールドと対戦予定だったワイドマンは失ったタイトルの奪還を目指していたが、下馬評ではプラス145でアンダードッグ(不利だと見なされる方の選手)だと考えられていた。しかし、ビスピンはプラス650のオッズがついている。方や、圧倒的に有利と見られているロックホールドに1,000ドル(約11万円)を賭けて彼が勝利したとして、100ドル(約1万1,000円)の儲けにしかならない。
ベガスは事実上、ビスピンが10年にも渡って追い続けてきたタイトル争いにおいてロックホールドに勝つチャンスがないと言っているのだ。とはいえ、シンデレラストーリーの実現は下馬評が示すほど不可能ではないかもしれない。
ビスピンは前回の試合で史上最高のファイターと称されるアンデウソン・シウバを打ち負かしている。今や自信に満ちあふれるビスピンは以前にもロックホールドと対戦したことがある。本人はどうなるのかも知っていれば、前回のミスもきちんと理解している。
一方、ロックホールドは今やUFCの世界で最も優勢なファイターの一人だ。パワー、正確性、忍耐力のすべてを合わせ持ち、圧倒的な攻撃力ゆえにパウンド・フォー・パウンドランキングでは3位につける強者でもある。
とはいえ、UFC 199の見どころはこの1試合だけではない。
【メインカード】
明らかにメインイベントとしても成立する対戦がパウンド・フォー・パウンドランキング4位のドミニク・クルーズが長年のライバルであるユライア・フェイバーを迎えて挑むバンタム級タイトル防衛戦である。
クルーズは今、最も満足感を得た試合から次の戦いへと向かおうとしている。前回の試合で王座を奪還した相手、T.J.ディラショーは長年、フェイバーの友人でありトレーニングパートナーだった。タイトルマッチがクルーズ対ディラショーの再戦ではなく、フェイバーが挑戦者に選ばれたことでこのトライアングルが成立。
とはいえ、クルーズとフェイバーにも因縁はある。ライバル2人の激突はこれが3度目。本当なら、ジ・アルティメット・ファイター(TUF)シーズン15で対戦するはずだったが、クルーズが負傷したため、中止になった。
フェイバーといえば、クルーズを打ち負かしたことのある唯一のファイター。やり残した仕事をやり遂げるには自身最大の敵をたたきのめし、タイトルを勝ち取るしかない。
また、メインカードにはフェザー級のランカー同士がぶつかる一戦も組まれている。ランキング4位のマックス・ホロウェイに挑むのは同5位のリカルド・ラマスだ。ジョゼ・アルドとフランキー・エドガーが7月のUFC 200で暫定王者を争うことになっており、ホロウェイ対ラマス戦の勝者が次に頂点を目指す者となるかもしれない。
ハワイ出身のホロウェイはフェザー級史上、最多連勝記録を持つ一人で現在8連勝中だ。最後に負けたのは現フェザー級王者コナー・マクレガーと対決した時で、すでにそれから3年近くが経っている。
ディエゴ・サンチェス戦で印象的な勝利を飾ったラマスはホロウェイとの話題性十分な試合のチャンスを得た。過去9試合で7勝をマークするラマスがホロウェイを打ち負かせば、その評価はうなぎのぼり間違いなしだ。
【プレリム】
フェザー級ランキング12位につけるブライアン・オルテガがプレリムのメインでベテランファイターのクレイ・グイダと対戦する。
2015年からの2試合で連勝を収めるオルテガはブラジリアン柔術に長け、スタンドでの攻撃力を生かす円熟した試合運びは、強力ファイターが多数属するフェザー級においてその名をとどろかせるに至っている。
UFC 199関連情報:対戦カード一覧
“ザ・カーペンター”の異名を持つグイダは過去6試合で勝利と敗北を繰り返し、なかなか勝利の波に乗れない。しかし、知識豊富なグイダがタイトルコンテンダーを目指すオルテガに一矢報いる可能性は十分にある。
【アーリープレリム(前座試合)】
時は2014年、ウェルター級のランキングを駆け上っていたショーン・ストリックランドは話題の中心にいた。オクタゴンデビューから2連勝を飾り、完ぺきな戦績を誇ってトップ15入りは確実だと思われていた。
しかし、ストリックランドの常勝街道は閉じられ、話題になることもなくなっていく。しかし、これに報いたストリックランドは1敗を喫した後の2試合を制して格闘技戦績を17勝1敗としてUFC 199の試合に臨む。拳を合わせるのはトム・ブリーズ(10勝無敗)だ。
ブリーズは前戦で苦戦を強いられたものの、なんとか勝利をもぎ取り、ウェルター級の新星として活躍を続けている。
アーリープレリムを締めくくる対戦となるストリックランド対ブリーズ戦。目を見張るパフォーマンスで勝利を手に入れたファイターにはランキングのトップ15入りも見えてくるはずだ。