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UFC 200への歩み:ジュルジュ・サンピエールの軌跡

 


Photo by Kevin Lynch/Zuffa LLC via Getty Images
ジョルジュ・サンピエールに対する当初の考えは概ね、今日でも真実のように思える。

ここで2008年の話を紹介しよう。

「ジュルジュ・サンピエールに嫉妬するのは簡単な話だ。折れた鼻、傷跡、欠損歯が絶えない世界において、サンピエールのスタイルと外見は古いハリウッドスターをほうふつさせる。そんな巧まない彼の優雅さは自身の戦い方にも繋がってくる。何をやっても一度で成功して見せる男であり、繰り返し同じ動きをすることは筋肉の記憶を高めるためだけに行っている。完璧を目指すのではなく、すでに完璧に到達しているのだ」

「チャック・リデルという名前しか知しらない女性たちがサンピエールを知っている理由はそこにある。マイク・タイソンがヘビー級を牛耳っていた頃に格闘技を見ていなかった子供たちが、サイドキックを練習しながら“GSP最高”と叫んでいるのも同じ理由だ。ウェルター級王者のマット・セラとの試合が行われるベル・センター(モントリオール)に2万2,000人の観客が駆けつけるのもまた、同じ理由だ」

「幼少期に格闘技家がかっこいいと思わせてくれる存在、それがジュルジュ・サンピエールである。アンダーカードに埋もれることなく、判定を待つ試合などしない。メインイベントで圧巻のフィニッシュを決め、女性をメロメロにする。サンピエールはそういう男だ」

あれから8年が経つが、いまだにサンピエールはオクタゴンに戻ってきていない。UFC 83でセラからタイトルを奪還して以来、ウェルター級の強豪たちと9試合をこなしていながらも、オクタゴンに一度も上がったことがないような顔つきをしている。女子たちは今でもサンピエールのとりこであり、多くのファンがもう一度サンピエールがグローブを付ける姿を見たいと願っていることだろう。

はたしてサンピエールは戻ってくるのだろうか? うわさは日によって変わる。とはいえ、モントリオールが誇る闘魂、サンピエールは今でもカナダのMMA界を代表する存在として君臨している。サンピエールは決して公から姿をくらますこともなければ、復帰に関するコメントを避けることもしない。いつものように待ち伏せしているのだ。オクタゴンの中でもそうだったように。

Photo by Donald Miralle/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images
GSP in action during his UFC 100 victory vs Thiago Alves (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC via Getty Images)
Photo by Jonathan Ferrey/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images

現在35歳のサンピエールにとって戦うことは相手を血祭にしたり、暴れまくるためではない。サンピエールにとって格闘技は脳の運動なのだ。彼より優れた技術を持った人間は少ない。打ち合いをしようとすれば、マットで試合をする。グラウンドで試合をしようとすれば、あざだらけになるまで打ち合いに持ち込む。作戦Aがうまくいかなければ、作戦BやCをぶつけてくる。毎試合が熱戦だったわけではない。しかし、そんな彼の試合は毎回称賛に値するものだった。

考えてみて欲しい。2度目のタイトルを獲得後、サンピエールは当時の階級(ウェルター級)を片っ端から蹴散らしている。それも現代のヘビー級ボクサーのように自分で対戦相手を選んでいたわけでないにもかかわらずだ。ジョン・フィッチ、B.J.ペン、チアゴ・アウベス、ダン・ハーディー、ジョシュ・コスチェック、ジェイク・シールズ、カーロス・コンディット、ニック・ディアス、ジョニー・ヘンドリックスといった時代を代表するトップファイターをサンピエールは倒してきた。

その中でカルロス・コンディットはノックダウンを奪うことに成功している。ジョニー・ヘンドリックスは判定で惜しくも敗れ、ニック・ディアスはニック・ディアスらしい試合をした。しかし、彼がタイトルを保持した5年半の間、この3人以外にサンピエールを極限まで追い詰めたファイターはいなかった。チームスポーツで言うところのダイナスティ(長年王座に君臨すること)に匹敵する。格闘技で言うところの偉人のようなとこであろうか。ジュルジュ・サンピエールは自身の運動神経や技術に関係なく偉大なファイターであった。

セラとの対決を前に「技術を持つことはもちろん重要だけど技術だけでは足りないんだ」とサンピエールは語っている。「犠牲を払う覚悟がないといけないし、それがオレの力になったと思う。もちろん技術的に身体能力的にも優れていたと思う。でも最終的にオレを頂点まで押し上げたのは犠牲を払う覚悟だった」

頂点にたどり着いたサンピエールはその後も頂点に君臨し続ける偉業を成し遂げた。彼にもう一度同じことができるのだろうか。2013年のヘンドリックス戦を最後に欠場しているサンピエールだが、その間にウェルター級はすっかり姿を変えている。現在のウェルター級は過去最強といってもいいだろう。王者ロビー・ローラーを筆頭に、ローリー・マクドナルド、スティーブン・トンプソン、タイロン・ウッドリー、デミアン・マイア、ニール・マグニー、マット・ブラウンといった強豪が名を連ねる。ニック・ディアスやカルロス・コンディットといったサンピエールの過去のライバルたちも忘れてはいけない。ネイト・ディアスやコナー・マクレガーも外せない。

過去の栄冠を取り戻すか、それ以上の活躍を見せる。もしくは、3年のブランクを経てサンピエールが復帰を果たし、連勝記録が途絶えてしまうか。どちらにしても面白い。サンピエールはどうするのだろうか? 決断はいつになれば下されるのか?

それは時が経てば分かるだろう。サンピエールは正しい決断を下すに違いない。それが彼のやり方だ。

Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images
Fans came out in full force to Rogers Centre for GSP at UFC 129 (Photo by Tom Szczerbowski/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)
Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images