UFC 200のセミメインイベントで、ブルース・バッファーがブロック・レスナーのユナニマス判定勝ちをコールした瞬間から、元UFCヘビー級チャンピオン、現WWEスーパースターの去就についての憶測が飛び交い始めた。レスナーはまたUFCで戦うのだろうか。それともWWEに完全に復帰してしまうのだろうか。MMAを続けていくためにはWWEのボス、ビンス・マクマホンと話し合わなければならないのだろうか。
試合後、メディアの取材に応じたレスナーは、ある意味第一声で憶測を打ち消して見せた。
「ブロック・レスナーはブロック・レスナーのやりたいと思うことをやる」
2011年以来ほぼ5年ぶりのオクタゴン復帰を勝利で飾ったレスナーは、このように語ったのだった。

ではブロック・レスナーのやりたいこととは何であろうか。それについては口にしなかった。まず彼には8月にWWEのビッグイベント“サマースラム”でのランディ・オートン戦が決まっている。その先はまだ分からない。
「そんなに焦るなよ」と彼は言うが、選択肢があるというのは悪いことではない。今回復帰したレスナーが”スーパー・サモアン”ことマーク・ハントにぶちのめされていたら、今後どうするかの決断は随分と簡単だったことだろう。しかし、レスナーはぶちのめされることも、負けることもなかった。それどころか、本物のトップ10ファイターを、本物以上のパワーで制したのだ。
「これで疑惑も晴れただろ」とレスナーはほほ笑んだ。「オレもパンチに耐えられる」
パンチに耐えられるどころか、その運動能力とレスリング能力は、38歳にしていまだに、どのヘビー級ファイターにとっても手に負えないものであることをレスナーは証明して見せたのだった。前回のUFC在籍時にレスナーを悩ませた2度の憩室炎との戦いを終えて、ついに体調も万全になったということもある。格闘技ファンなら誰しも、”ザ・ビースト”ことレスナーの試合を、もっともっと見たいと思ったことだろう。
UFC 200の論点に迫る。
コーミエも”スパイダー”が相手では勝ちきれない
プロ格闘技はつらい稼業だ。ファイトウイークにメインイベントがキャンセルされ、その翌日に新しい対戦相手があてがわれ、その対戦相手を完封したことでブーイングを浴びる。チャンピオンがこんな目にあうのは格闘技だけであろう。アンデウソン・シウバを下したUFCライトヘビー級王者、ダニエル・コーミエが直面したのがまさにこれだ。
もっとも、”DC”ことコーミエはレスリングで勝ちを狙うに際して、ブーイングは意に介さず、ただ自分のやりたいことをやっただけだと語っている。
「ああいうブーイングはもはや相手にはしていられないんだ。オレには他人の感情を操ることなどできないからね。万一、負けでもしたら大変なことになる。だから、やるべきことをやったまでだ」
彼は勝ちを収め、キャリア史上最も厳しい試練の1週間を終えることができた。本来対戦することになっていた男、ジョン・ジョーンズとの対戦については、コーミエは先行きが見えないと語っている。
「2年も待っているわけにはいかない」とコーミエは、ジョーンズに科せられる可能性がある出場停止期間に触れて語った。王者は当面、8月のアンソニー・ジョンソンとグローバー・テイシェイラの一戦の結果を待つとしている。
他方の”ザ・スパイダー”ことシウバについては、負けはしたものの、役割を果たせたことに満足しているという。
「今日の試合も自分にとっては1つの挑戦にすぎない」とシウバは語っている。「これまでの現役生活で、良いときもあれば悪いときもあった。オレはただ自分の愛するスポーツに取り組みたいだけなんだ」

ケインの台頭
誰からも愛されるケイン・ベラスケスではあるが、正直言って、2013年10月のジュニオール・ドス・サントスとの3戦目以降は本来のケイン・ベラスケスではなかった。それから3年、過去2度ヘビー級チャンピオンに輝いたベラスケスは今回トラヴィス・ブラウンを過去最高のパフォーマンスで下した。つい最近まで負傷に苦しみ、今年初めのファブリシオ・ヴェウドゥム戦を欠場していたことを思えば、今回の出来栄えはいっそう光る。
ベラスケスが3度目のベルト獲得に挑戦するまでには、あと1、2試合は勝たなければならないのだろうか。それとも、すぐにでもタイトルに挑むことはできるのだろうか。ベラスケスの希望ははっきりしている。
「スティペ(ミオシッチ)と(アリスター)オーフレイムの勝者と対戦したい。一番強いヤツと戦いたいんだ」
ブラジル万歳
ブラジルの格闘技ファンにとっては”失われた週末”となってしまう可能性もあった。ブラジルのファンが応援する選手は、インターナショナルファイトウイークの3大会で、いくつかの重要な試合に臨んだ。
UFCファイトナイトとTUF(ジ・アルティメット・ファイター)はつらい結果だったと言っても過言ではない。ディレノ・ロペス、レジナルド・ヴィエラ、 チアゴ・タバレス、フェルナンド・ブルーノが相次いで敗戦、さらにはハファエル・ドス・アンジョスがライト級タイトルを失い、クラウディア・ガデーリャのヨアンナ・イェンドジェイチェクが持つストロー級タイトルへの挑戦も失敗に終わった。
チアゴ・サントスがゲガール・ムサシにフィニッシュされるなど、日曜日になっても出だしは不調だったのだが、UFC 200が終わってみれば、ブラジルには世界王者(アマンダ・ヌネス)と暫定王者(ジョセ・アルド)が誕生、そして負けはしたものの、普通の勝者よりもよほど多くのファンを獲得したレジェンドファイター(アンデウソン・シウバ)がいた。
「ハファエルとクラウディアについては残念な結果だったが、そのことで自分にプレッシャーをかけないようにした。試合にはとてもいいエネルギーを感じながら臨むことができた」と、フランキー・エドガーを下してフェザー級暫定王者となったアルドは語っている。「オレは自分のために戦う。そのためには、オレは自分のすべきことをするまでで、ブラジルがベルトを持っていないといったことについては考えていない。とはいえ結果的にブラジルに2本のベルトがあることはうれしい」
女子バンタム級戦線はメリーゴーラウンド状態へ
やってみなければ分からない、とはよく言ったものである。
アマンダ・ヌネスがミーシャ・テイトに勝って、UFC女子バンタム級タイトルを取ってしまうとは誰も思っていなかったのだ。しかし、このブラジルの爆弾はただ勝っただけでなく、テイトを圧倒し、第1ラウンドでテイト時代を唐突に終わらせたのだった。この勝ちで、ヌネスはこの階級をもう一度かき回し、ロンダ・ラウジーの名前を戦線に引き戻すこととなった。
ラウジーは2015年11月に敗れて以来、試合復帰を発表してはいないのだが、考えてみてほしい。ラウジーは2012年12月にタイトルを授与された。つまり、彼女はタイトルをあと1カ月で丸3年保持していたことになるのだ。その一方で、ラウジーがベルトを失ってから8カ月間で、3人目の王者が誕生したのである。
これはつまり、次のいずれかを意味している。つまり、力の均衡の時代がやってきたか、あるいは王者時代のラウジーがやはりそれだけ偉大だったか。どちらも正しいのではないだろうか。この階級はかつてなく競争が激化している。そして、昨年にオーストラリアで不運な一夜を過ごしたラウジーは今でも、パウンド・フォー・パウンド(体重を同一だと仮定した選手の強さ)でトップファイターの1人なのである。
ラウジーの復帰が間近なのだとしたら、直ちにタイトル挑戦が与えられるべきであろうか。それはもちろんだろう。これまでの実績は十分なのだ。しかし、ラウジーの復帰が2017年に持ち越されるとすれば、”ザ・ライオネス”ことヌネスに挑戦するのは誰になるべきか。ジュリアナ・ペーニャの存在がある。UFCでいまだ無敗、UFC 200ではキャット・ジンガノを相手に大きな勝利を挙げている。
”ザ・ベネズエラン・ビクセン(ベネズエラの雌ぎつね)”ことペーニャなら、口説く必要すらない。
「これ以上にもはや何をすればいいの」とペーニャは大会後記者経験で述べている。「私は、チャンピオンと、チャンピオンの挑戦者の両方を倒している選手に勝った。もうタイトル挑戦の資格は十分だし、本来あのタイトルは私のものであるべきだと思っている」