MMA史上、最も洗練された2人のUFCファイターがUFC 204の舞台となったマンチェスター・アリーナのオクタゴンで繰り広げたファイト・オブ・ザ・ナイトにふさわしい激闘は世界中の人々の記憶にとどまり続けることだろう。
ミドル級タイトルマッチとして行われたこの一戦は王者マイケル・ビスピンが挑戦者ダン・ヘンダーソンをユナニマス判定で下した。
とはいえ、この白星を勝ち取るまでにはとてつもない努力が重ねられている。
総合格闘技の世界で多くの勝利を挙げ、数々のタイトルを手中に収めてきたヘンダーソンは得意技の“Hボム”を披露して第1ラウンド終盤から第2ラウンドにかけてはビスピンを大いに攻め立てた。とりわけ、最初のラウンドの攻防はヘンダーソンがチャンピオンベルトを手に勇退するかと期待させるほどの勇姿だった。
ヘンダーソンはUFC 100でビスピンと初対戦し、ノックアウトした試合が頭をよぎったと明かし、「初めてあいつをノックダウンした最初の試合を思い出した。アイツはフィニッシュするのに足りなかったし、オレはオレで十分じゃなかった」とコメントしている。
ヘンダーソンを迎えてミドル級王座の初防衛戦に挑んだビスピンはキャリアを通して見せてきたように、ビスピンらしい粘り強さを発揮。第1ラウンドでノックダウンを食らいながらも第3ラウンドではヘンダーソンが連発する“Hボム”をかわし、最終的にはユナニマス判定勝ちを収めた。リベンジを果たしたビスピンは名実ともにナンバー1の称号を手に入れたことになる。
「今は次の試合を楽しみにしている」と語ったビスピンは「まだベルトを持っているから、オレがチャンピオン。ものすごく満足だ。接戦だったけど、楽な試合なんて絶対にない。簡単なら誰だってやるだろう」と続けた。
UFC 204の論点に迫る。
願いがかなったムサシ、次は?
試合前、ゲガール・ムサシは自らが“レジェンド”と呼ぶ選手との対戦を長年待ち望んでいたと語った。その待望の相手がビトー・ベウフォートだ。
そして、与えられたチャンスを最大に生かしたムサシは第2ラウンドでベウフォートをノックアウトに下した。
「ファンが見たがっているのはこういう試合だ。今回の試合は完璧。完璧な勝利だぜ!」
試合後、そう叫んだムサシの次のステップはいかに。ミドル級の頂点を目指して駆け上りたいと言うムサシは「準備は万端さ。次の試合だっていつでも来い。確か、今は(ミドル級ランキング)5位にいるはずだから、ロバート・ウィテカーやデレク・ブランソンとか、オレよりも上位にいるヤツらかな。でも、オレがあいつらよりも優れたファイターだってことを証明する必要はないと思っている。ヤツらよりもっと技術的に優秀だからね」と話した。
ストルーフェ、マヌワが実力を発揮
オランダ出身のステファン・ストルーフェとロンドン出身のオランジミ・マヌワは両者ともヘビー級ファイター。両者とも違ったタイプのファイターでありながら、UFC 204では似たような活躍を見せた。
ここ最近は勝ち負けを経験していたベテランの2人。ストルーフェはここ6戦で3勝3敗。マヌワは4戦に出場し2勝2敗。両者とも今大会では素晴らしいパフォーマンスを見せ、再び軌道に乗っている。
ストルーフェは身長と素早さを利用してダニエル・オミランチェクからダースチョークを奪って白星をあげ、2012年以来のサブミッション勝利を収めている。マヌワは、素早いパンチ力とパワーを使いオヴィンス・サン・プルーを攻め立て、最後は強烈なKOで試合を決めている。
2人のヘビー級ランキング15位入りと、今後のビッグマッチを期待しよう
マヌワは試合後にこう語っている。
「トップ5と試合させろ、トップ5だ」
辛抱強さが報われたベクティック
497日という長い時間を経てようやくオクタゴンに戻ってきたミアサド・ベクティックは、対戦相手がケガにより3度変わるなどしたものの、UFC 204では万全の状態でラッセル・ドゥアンとの対決に挑んだ。
この試合に勝利し、戦績を11 勝0敗に伸ばしたベクティックは、しっかりと自信の存在をアピールし、オクタゴンを離れていた時間が無駄ではなかったと証明した。
急きょ出場が決まったドゥアンを圧倒的なパフォーマンスで下し、前十字靭帯(ACL)のケガから復帰を遂げたフェザー級ランキング15位のベクティック。ドゥアンからテイクダウンを奪い、辛抱強くポジションを奪うと、そのままリアネイキッドチョークを決めてキャリア5度目の第1ラウンド勝利を掴んだ。
ベクティック試合後次のように語った。
「今はすごく自然に感じる。何度も対戦相手が変わったりもしたけど、とにかく自分のやるべきことに集中した。この試合は死ぬまで忘れないよ。今まではずっと期待の新人として見られてきたけど、オレはもうそれ以上の存在だ。今のオレはコンテンダーだ」
英国の新たな実力者
7 人のイギリス人ファイターが出場したUFC 204。その中で目立つには相当なパフォーマンスが必要となった。
その役目を果たしたのが23歳の新人マルク・ディアケイジーだった。
サエウスキーとのクリンチバトルには苦戦したライト級のディアケイジーだったが、クリンチを逃れて立ち技に試合を持ち込むと、第2ラウンドの最後には強烈なパンチを炸裂させ、プロ成績を10勝0敗に伸ばした。
「印象強い試合をするようにしている。そのために戦っているんだ」