12月の月間レポートは、まるでオスカーの前に発表されるより小規模な賞のように感じられる。人々の注目はすでに年度末の賞の方に移っており、その最後の候補者である12月の選出者たちは見過ごされがちだ。
しかし、今年は12月のオクタゴンに足を踏み入れた面々が、見事な戦いを見せた。これから数週間後に発表される2025年の優秀パフォーマンスのトップ10に入ることが、十分に見込まれる活躍だ。
だからこそ、完全にホリデーモードに入って2025年シーズンの閉幕を祝う前に、今年最後の2つのイベントが届けてくれた、傑出したパフォーマンスについて紹介しよう。
ブレイクアウト・パフォーマンス:メルキザエル・コスタ(UFCファイトナイト・ラスベガス112)
先に認めておくと、これは重複しているチョイスだ。コスタは今年、すでに1度この賞に選ばれている。しかし、彼が見どころのある2025年シーズンを、ラスベガスでフランスのモーガン・チャイエーを印象的なハイキックによってノックアウトしたことで締めくくったのも、また確かだ。
本当の意味で重要なショットが初めて打たれた際に、それがヒットして戦いが終わるという、一つの典型とも言える試合だった。強烈なヘッドキックが“ザ・ラスト・パイレート”ことチェイエーを海の底に沈めると予測していた者はいなかっただろう。序盤はお互いを探り合い、レンジとタイミングを計っていた両者は、いくつかの打撃を応酬する。そんな時、コスタが高く放った左足がチャイエーを捉えた。
リプレー映像を見て実に印象的なのは、チャイエーが手を上げて打撃を和らげているにもかかわらず、それをカンバスに倒してしまうコスタのパワーだ。コスタはこの試合で、今年4勝目をあげた。
コスタは今年、いつの間にか存在感を増したファイターの1人だ。数年前にはショートノーティスで契約し、1階級上げて登場したデビュー戦で、ティアゴ・モイゼスを相手に敗れながらも善戦した。フェザー級に戻ってから、気づけば6勝1敗をマーク。今年はアンドレ・フィリへの1本勝ちで始まり、チャイエーへの強烈なノックアウトで幕を閉じた。その間、クリスチャン・ロドリゲスとジュリアン・イローサに判定勝ちしている。
子どもの頃に白斑のせいでいじめを受けていたブラジルのコスタは、そんな自分のストーリーと、明るく、人を元気づける性格を軸に据え、かつて自分を嘲った言葉である“ダルメシアン”を二つ名とし、『The Lion King(ライオンキング)』の楽曲“ハクナマタタ”にのってオクタゴンに飛び込んだ。その姿を、誰もが高く評価している。
足がかりを見つけるまで時間を必要とするものの、いったん波に乗ればとてつもない成功をつかむファイターがいる。コスタもその1人。今はランキングを駆け上がろうとしており、間違いなく2026年に注目すべき選手だ。
特別賞:マイロン・サントス、イヴォ・バラニェフスキ、ファレス・ジアム、マヌエル・トーレス、ペイトン・タルボット、ヤロスラフ・アモソフ
サブミッション・オブ・ザ・マンス:アントニオ・トロコリを瞬殺したマンスール・アブドゥル・マリク(UFC 323)
12年前、UFC 143で“ザ・ナチュナル・ボーン・キラー”ことカーロス・コンディットがニック・ディアスとウェルター級暫定王座を争った時、コンディットは第1ラウンドでディアスにスピニングバックフィストをたたき込んだ。カリフォルニア州ストックトンが輩出した偉大なファイターであるディアスは、それを受けて“おい、ここでスピニングをやってきやがるのか?”と問いかけている。
この話を引き合いに出したのには理由がある。まず、もしコンディット対ディアスを見たことがない、もしくはしばらく見てはいないのであれば、ぜひ見てほしいから。そして、T-Mobileアリーナでマンスール・アブドゥル・マリクとアントニオ・トロコリが対峙したミドル級マッチの第1ラウンドで、試合開始から1分もたたないうちに、アブドゥル・マリクが素早く、力強くトロコリの首に取りついたとき、それによく似たフレーズが頭をよぎったからだ。
「おっと、ここでサブミットか?」
デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ シーズン8は、番組史上、最も総合力のあるファイターたちを送り出したと言えるかもしれない。それを最も裏づける存在が、アブドゥル・マリクだ。12月の試合で、アブドゥル・マリクはその説をさらに後押しした。彼のストライキングとレスリングのスキル、そして、尋常ではない運動能力はすでに多くの人々が目撃している。今回の試合を決めたギロチンチョークがあれだけ素早く、決定的だったところを見れば、28歳のアブドゥル・マリクにはまだまだ秘められた力があるはずだ。
この決定的な瞬間をさらに見どころのあるものにしていたのは、アブドゥル・マリクが試合開始直後から自分の強みを押し出し、トロコリを窮地に追い込んでいたことだ。アブドゥル・マリクが時間を浪費することなく打撃を繰り出し、戦いの場をカンバスに移すと、2人がスタンディングに戻ろうとしたその時にチャンスが訪れた。こういう場面では、体勢を立て直すことに集中したり、単純に相手が立つのをそのまま許してしまったりで、多くのファイターがチャンスを逃してしまいがちだ。しかし、『Xtreme Couture(エクストリーム・クートゥア)』のファイターであるアブドゥル・マリクはチャンスを見いだし、まだ膝立ちになっているトロコリにチョークを仕掛け、きつく締め上げた。
プロ10戦で9勝0敗1分となったアブドゥル・マリク。いずれ彼がトップファイターとなったときに振り返れば、今回の試合はそのキャリアにとって、最初の小さなベンチマークだったと思えるのかもしれない。
特別賞:クリス・ダンカン vs. テランス・マッキニー、ヤロスラフ・アモソフ vs. ニール・マグニー
ノックアウト・オブ・ザ・マンス:ケヴィン・ヴァシェホス vs. ギガ・チカゼ(UFCファイトナイト・ラスベガス112)
12月は本賞にふさわしい候補が数多くそろっていたが、2025年最後から2番目のUFCのイベントでチカゼを下したヴァシェホスの勝利が選ばれた。この1戦は、将来有望な存在としてのヴァシェホスのポテンシャルを示すと同時に、競技最高峰の舞台で戦う若手ファイターとして着実に成長を遂げていることをはっきりと映し出していた。
第1ラウンド、24歳のヴァシェホスはジョージア出身のベテランであるチカゼを相手に、蹴りの間合いをなかなか攻略できずにいた。チカゼは左脚から繰り出すボディキックを的確に打ち込み、ヴァシェホスの腹部を赤く染め上げる。その流れの中で、チカゼが蹴りをチェックした際にヴァシェホスの脚が裂けるアクシデントもあった。経験豊富なベテランが武器を正確に使い分け、頭角を現したばかりの若い新鋭を巧みにコントロールする、よくある光景だった。
しかし第2ラウンド序盤、ヴァシェホスは一転して内側への踏み込みを徹底し、強い意図を持って前進。振りの大きい打撃を起点に圧力をかけることでチカゼを後退させ、ケージ際へと追い込んだ。“エル・チーノ”ことヴァシェホスが距離を詰める中、チカゼは左へ回りながら反撃を試みるが、その動きが決定的な隙となる。ヴァシェホスは瞬時に軸足を切り替え、スピニングバックフィストを放つとこれが強烈にヒット。37歳のベテランをキャンバスへ追い込み、追撃の打撃で試合を終わらせた。
大きな伸びしろを秘めながら、なお経験を積む段階にある若手による、見事な修正力だった。ヴァシェホスはデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ シーズン7でジェアン・シウヴァと判定までもつれる激闘を演じ、一躍注目を集めると、翌シーズンにUFCとの契約を勝ち取った。ロースター入り後のルーキーイヤーでも3戦3勝と結果を残し、その評価が決して誇張ではなかったことを証明している。
この内容で試合を締めくくったことは、アルゼンチンの若き才能がフェザー級戦線における将来の脅威であることを、あらためて印象づけるものだった。その将来は、そう遠くないかもしれない。
特別賞:サントス vs. ムハメド・ナイモフ、バラニェフスキ vs. イボ・アスラン、ジアムvs. ナジム・サディコフ、マヌエル・トーレス vs. グラント・ドーソン、ジェイミー・リン・ホース vs. テレザ・ブレダ、コスタ vs. チャイエー、マネル・ケイプ vs. ブランドン・ロイバル
ファイト・オブ・ザ・マンス:イヴォ・バラニェフスキとイボ・アスランによる激闘(UFC 323)
UFC 323で行われたライトヘビー級の1戦で、バラニェフスキとアスランは合計85発の有効打を放ち、そのうち52発をヒットさせた。さらに両者合わせて3度のダウンも記録している。15分間の試合と聞けば、この攻撃数は控えめに感じられるかもしれない。しかし、12月6日にラスベガスで行われたこの試合で、2人がオクタゴンに立っていた時間が90秒に満たなかったと知れば、その数字がいかに異常なものだったかが分かるはずだ。
わずか1分半で終わった試合について、こう表現するのは不思議に思えるかもしれないが、その短い時間の中には、どちらが倒れてもおかしくない瞬間が何度も訪れていた。決定打が出るかと思われた直後、今度は相手が流れを引き戻す一撃を返す。主導権は何度も入れ替わり、そのたびに緊張感が跳ね上がる。狂乱の攻防は、最後まで一切緩むことなく続いていった。
この競技を15年間取材してきた中でも、間違いなく最もスリリングな90秒間だった。そしてその印象は、イベント後に『The Bigger Picture(ザ・ビガー・ピクチャー)』の“One Last Thing(ワン・ラスト・シング)”で紹介した以下のエピソードによって、さらに色濃いものとなった。
ポーランド出身のバラニェフスキが、2025年9月16日にネバダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されたデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ シーズン9、第6週のライトヘビー級マッチで、ブラジル出身のマハメド・アリーにノックアウト勝利を収めた後、歓喜の表情を見せている。
この試合そのものが極めてエンターテインメント性の高いものだったのは言うまでもない。しかし、バックステージでそれを見守っていたエクストリーム・クートゥア所属の3人、エリック・ニックシック、ブラッド・タヴァレス、サディボウ・シーが、怒濤の攻防が続く中で、仲間であり友人でもあるバラニェフスキに向けて声援と指示を送り続けていたことで、その魅力はいっそう際立つものとなっていた。
「アッパーだ、イヴォ!」
「ストレートだ、イヴォ!」
「違う、イヴォ!」
今後、どちらかが試合に臨むたびに、この声が頭の中でよみがえることになるだろう。そして、この一級品の大乱戦は、何度も脳裏で再生され続けるに違いない。
特別賞:ピョートル・ヤン vs. メラブ・ドバリシビリ、スティーヴン・アスプルンド vs. ショーン・シャラフ