メインコンテンツに移動
Montel Jackson is interviewed after his KO victory over Da'Mon Blackshear in a bantamweight fight during the UFC Fight Night event at Ball Arena on July 13, 2024 in Denver, Colorado. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC)
アスリート

UFC月間レポート:2024年7月

2024年7月の傑出したパフォーマンスは?

7月のイベントは、確かに3つだけだったかもしれない。けれども、この31日間にオクタゴン内部で繰り広げられたアクションを振り返り、中でも最も輝かしかったパフォーマンスに対して賞を贈る上で、候補として取り上げるべき見事なアクションや壮大なパフォーマンスには事欠かなかった。

ブレイクアウト・パフォーマンス:ベラル・ムハメド

Belal Muhammad reacts after his victory against Leon Edwards of Jamaica in the UFC welterweight championship bout during the UFC 304 event at Co-op Live on July 27, 2024 in Manchester, England. (Photo by Chris Unger/Zuffa LLC)
Belal Muhammad reacts after his victory against Leon Edwards of Jamaica in the UFC welterweight championship bout during the UFC 304 event at Co-op Live on July 27, 2024 in Manchester, England. (Photo by Chris Unger/Zuffa LLC)

ムハメドがレオン・エドワーズとの試合終盤にエルボーを喰らって大量出血したことを理由に、この選考に異論を唱える人もいるだろう。それでも、試合に勝利し、新チャンピオンになったという点において、今月の栄誉にふさわしい選手は他にいない。

 

今後数週間から数カ月にわたって、36歳のシカゴ出身のムハメドが大西洋を渡り、イギリスの地でエドワーズからウェルター級のベルトを難なく奪うことは「最初から分かっていた」という具合に、いくつもの過去の発言が書き換えられるだろう。しかし、それは事実とは違う。

 

ムハメドはアンダードッグだったが、勝利への道筋が見えていたアンダードッグだった。それにもかかわらず、多くの人は現チャンピオンのエドワーズが地元でまたしても防衛に成功して、ムハメドの長らく続いた無敗記録とともに2人のライバル関係にも終止符を打つというシナリオを予想していた。そして、エドワーズの興味はすぐさまウェルター級でランキングを上げている無敗の3人のコンテンダーに向けられだろう、と。

 

そんな大方の予想に反して、ムハメドはエドワーズからタイトルを奪い、自分が世界最高のウェルター級ファイターであることを証明するという、この試合に向けて誓ったことを実現しようとする強い意思を試合開始早々から見せつけた。

Belal Muhammad punches Leon Edwards of Jamaica in the UFC welterweight championship bout during the UFC 304 event at Co-op Live on July 27, 2024 in Manchester, England. (Photo by Chris Unger/Zuffa LLC)
Belal Muhammad punches Leon Edwards of Jamaica in the UFC welterweight championship bout during the UFC 304 event at Co-op Live on July 27, 2024 in Manchester, England. (Photo by Chris Unger/Zuffa LLC)

ムハメドは競争が激しく層の厚いウェルター級で11連勝を達成したことで、あらゆる称賛と栄誉を自らの手で勝ち取った。そして、ランキング上位の選手を相手に6連勝を果たして王座に就いたのだ。

 

ウェルター級に、称賛に値する新しい王者が誕生した。

 

特別賞:ルアナ・サントス、モンテル・ジャクソン、ジェアン・シウバ、ビルナ・ジャンジロバ

サブミッション・オブ・ザ・マンス:パディ・ピンブレット vs キング・グリーン(UFC 304)

Paddy Pimblett of England secures a submission against King Green in a lightweight bout during the UFC 304 event at Co-op Live on July 27, 2024 in Manchester, England. (Photo by Chris Unger/Zuffa LLC)
Paddy Pimblett of England secures a submission against King Green in a lightweight bout during the UFC 304 event at Co-op Live on July 27, 2024 in Manchester, England. (Photo by Chris Unger/Zuffa LLC)

美しい。その一言に尽きる。

 

実に高い期待がかかっていたこのライト級マッチについて広く言われていたのは、グリーンがピンブレットに首を攻撃するチャンスを与えれば、評価の分かれるリバプール出身のファイターであるピンブレットはそれをすかさずつかみ、フィニッシュを決めるだろうということだった。試合はまさにその前評判通りに進んだ。

 

インサイドに入れない、もしくは思う通りの打撃が出せない様子だったグリーンは、アウトサイドからやや焦りのある、雑なショットを繰り出した。その動きによってピンブレットの足をつかんだグリーンだったが、ピンブレットが守りに徹さなければならないほどのポジションではない。ピンブレットはギロチンチョークに動き、グリーンは戦術の変更を強いられる。グリーンはすぐに左足をピンブレットの背中にまわした。

Paddy Pimblett of England reacts after his victory against King Green in a lightweight bout during the UFC 304 event at Co-op Live on July 27, 2024 in Manchester, England. (Photo by Chris Unger/Zuffa LLC)
Paddy Pimblett of England reacts after his victory against King Green in a lightweight bout during the UFC 304 event at Co-op Live on July 27, 2024 in Manchester, England. (Photo by Chris Unger/Zuffa LLC)

2人がカンバスに倒れるや否や、ピンブレットはトライアングルチョークへと移行。正確な位置取りと緻密な調整でタイトにグリーンを締め上げていく。意識の暗転を回避すべくスペースを探したグリーンだが、暗闇は次第に迫る。一方のピンブレットは、グリーンを葬るために必要なステップをすべてこなしていった。

 

常に1本勝ちを狙う能力を持ち、実際に仕掛けたときには高いフィニッシュ率を誇る“パディ・ザ・バディ”ことピンブレットによる、見事な仕事だった。

 

特別賞:エヴァン・エルダー vs ダリウス・フラワーズ、ルアナ・サントス vs マリヤ・アガポバ、ジュリアン・エローサ vs クリスチャン・ロドリゲス、コーディ・ギブソン vs ブライアン・ケレハー、ビルナ・ジャンジロバ vs アマンダ・レモス、サム・パターソン vs キーファー・クロスビー

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:モンテル・ジャクソン vs ダモン・ブラックシア(UFCファイトナイト・デンバー)

Montel Jackson punches Da'Mon Blackshear in a bantamweight fight during the UFC Fight Night event at Ball Arena on July 13, 2024 in Denver, Colorado. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC)
Montel Jackson punches Da'Mon Blackshear in a bantamweight fight during the UFC Fight Night event at Ball Arena on July 13, 2024 in Denver, Colorado. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC)

ジャクソンは最高のバンタム級ファイターでありながら、ほとんど話題にされてこなかった。そして、ジャクソンはそういったポジションにとどまることに全く問題を感じていないという。それは、デンバーでブラックシアと戦う前に、本人が語っていたことだ。

 

32歳でミルウォーキー出身のジャクソンは、4連勝をマークした状態でこのイベントを迎えていた。UFCデビューからの9戦で7勝2敗を記録し、前戦ではハニ・ヤヒーラをノックアウト。デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ シーズン2に出場して以来、このファイターの成長をつぶさに見てきた者ならば、そのプロキャリアのほぼすべてがオクタゴン内部で築かれたものであることを知っている。そしてそれこそが、ジャクソンのランク上昇のプロセスが、一部の人が期待するほどの速さではない理由だ。

 

しかし、ジャクソンは自分がバンタム級の本格的なダークホースと見なされる頃合いに達したことを理解している。ブラックシアを手早く片付けた一戦は、その点を強調するのに大いに役立った。

Montel Jackson reacts after his KO victory over Da'Mon Blackshear in a bantamweight fight during the UFC Fight Night event at Ball Arena on July 13, 2024 in Denver, Colorado. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC)
Montel Jackson reacts after his KO victory over Da'Mon Blackshear in a bantamweight fight during the UFC Fight Night event at Ball Arena on July 13, 2024 in Denver, Colorado. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC)

2人がオクタゴンの中央に達するや否や、ジャクソンはジャブからストレートを繰り出す。その攻撃はブラックシアを正面から捉え、ブラックシアはカンバスへどうと倒れた。それは追撃の必要などないクリーンショットで、ジャクソン自身もそこのことを即座に悟っている。対戦相手が崩れ落ちるのを片目に、ジャクソンはもうその腕を挙げていた。

 

UFCで5連勝を飾ることは、階級や対戦相手のレベルを問わず、難しいことだ。だが、ジャクソンはそれを果たしつつ、階級のトップに近づいてきた。いまやジャクソンはトップ15入りしており、名前の横に数字を冠している選手たちとオクタゴンで相対するのに十分過ぎるほどの実績を残している。

 

 “クイク”ことジャクソンは、これからもバンタム級で厄介な存在であり続けるだろう。人々がそのことに気づく時期は、以前からもう始まっている。

 

特別賞:チャールズ・ジョンソン vs ジョシュア・ヴァン、ハイダー・アミル vs リー・ジョンヨン、ブルーノ・シウバ vs コーリー・サンドヘイゲン、ミック・パーキン vs ウカシュ・ブゼスキ、トム・アスピナル vs カーティス・ブレイズ

ファイト・オブ・ザ・マンス:ジェアン・シウバ vs. ドリュー・ドーバー(UFCファイトナイト・デンバー)

Drew Dober kicks Jean Silva of Brazil in a lightweight fight during the UFC Fight Night event at Ball Arena on July 13, 2024 in Denver, Colorado. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC)
Drew Dober kicks Jean Silva of Brazil in a lightweight fight during the UFC Fight Night event at Ball Arena on July 13, 2024 in Denver, Colorado. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC)

組み合わせが決まった瞬間から、これが見逃せない試合になることは明白だった。なぜなら、ドーバーは退屈な試合にアレルギーを持っているとすら言えるファイターで、たとえそれが自分にとって最善ではなかったとしても、激しい打ち合いを積極的に求めているからであり、一方のシウバはUFCでの初年度にしてすでにテクニカルノックアウト勝ちを2回収め、階級を上げての試合に――そして、ドーバーのホームタウンであるデンバーの標高に――迅速に備えていたからだ。

 

この2人は、その高い期待をさらに越えてみせた。

 

試合開始早々、両者はポケットからの打ち合いにエキサイトする。ドーバーは持ち味であるバウンシングキックボクシングによって前進し、シウバはカウンターで迎え撃ちつつ、序盤から頻繁にチェックレフトフックを出していった。

Jean Silva of Brazil reacts after his TKO victory over Drew Dober in a lightweight fight during the UFC Fight Night event at Ball Arena on July 13, 2024 in Denver, Colorado. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC)
Jean Silva of Brazil reacts after his TKO victory over Drew Dober in a lightweight fight during the UFC Fight Night event at Ball Arena on July 13, 2024 in Denver, Colorado. (Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC)

試合が進むにつれて激しさは増していき、ドーバーの右目に切り傷ができた。シウバのスピニングバックエルボーが、小さかったその傷を広げ、相当な量の血液が川となってベテランの顔から流れ落ちる。試合が中断されてもおかしくない傷だった。

 

第3ラウンド開始前に診断を受けて試合を続行したドーバーだったが、さらに数発のヘビーショットを食らい、傷がさらに大きくなった。顔(および半径5フィート以内の範囲)は血まみれになり、試合はついにストップされた。

 

終始エキサイティングな1戦だった。UFC 303での鮮烈な戦いで世界に名を知らしめたのに続き、デンバーでも興奮のバトルを繰り広げたシウバ。ファイティングナーズを代表する選手であるシウバが次に何をやってのけるのか、誰もが期待に胸を膨らませている。

 

特別賞:チャールズ・ジョンソン vs ジョシュア・ヴァン