日本時間18日(月)に開催されたUFCファイトナイト・ボストンで、ドミニク・クルーズはまるで長期欠場などなかったかのように見えた。
ケガの連続でこの4年、愛してやまないこのスポーツから離れざるを得なかったクルーズは、前王者T.J.ディラショーを5ラウンドの名勝負で退けバンタム級王座を奪還、栄光の帰還を果たした。
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クルーズは捕まえにくくてクリエイティブな戦い方と、かつてない強い心でディラショーに立ち向かう。敗れたとはいえディラショーも王者の気迫を見せ、あわやクルーズ復帰に土を付けるかに思われた。
ディラショーを倒すためにクルーズが完遂した驚くべき戦略はMMAの歴史に残るもので、試合全体を通じ、見事なヘッドムーブメントとフットワークを駆使してディラショーのバランスを崩し続ける戦いぶりで、見る者を堪能させた。
クルーズの動きは前十字靭帯を3回も断絶した人間が本来やってはいけないものだった。しかし”ドミネーター”ことクルーズは自分に何ができないかについては興味などない。彼はタイトルを返上した瞬間から思い定めていた“タイトル奪還”という目標を達成すべく、トレーニングにいそしむばかりだったのだ。
UFCファイトナイト・ボストン大会の論点は以下の通りである。
1. 熟成のクルーズ、レガシーを固める
4年前にクルーズが欠場することとなったとき、トップ戦線への復帰への道には課題が山積していた。こんな大ケガからはたして復帰などできるものだろうか。これまでと同じように動くことができるのだろうか。格闘技の進化についていけるのだろうか?
試合前に負っていた足のケガを悪化させたクルーズは大会後記者会見に足を引きずって登場、ちゃんと治すから大丈夫、前にもやったことがあると語った。
とりあえず今は、クルーズはチャンピオンに復帰できたこと、世界で最高のファイターの1人を倒したことに満足している。彼はどんな質問にも答えてくれた。
「ベルトを取ることも、ここにまだ居場所があることも気分がいい」とクルーズは振り返る。「僕と同じ経験をしたら、誰だって自信なんか持てないと思う。4年間も欠場して、復帰戦でいきなり、指折りの最強のファイターと対戦するんだからね」
「もう技術的には、ディラショーのような選手には太刀打ちしようと思うべきではないのかもしれない。でも勝ったのはオレだ」
2. タイトルに狙いを定めるエディ・アルバレス
エディ・アルバレスはUFCと契約して以来、ずっと自分の欲求に頑固だった。それは、強いヤツと戦わせろ、ということだ。
アルバレスは前ライト級チャンピオンであるアンソニー・ペティスをスプリット判定で下し、戦績にまたしても箔(はく)を付けた。こうなると、次に彼がタイトル挑戦を要求するのも無理からぬことである。ライト級にはイージーな試合など1つもない。アルバレスは、殺人集団のカシラを連れてこいと乞うているのだ。
試合後のアルバレスは、本来は試合でもっとリスクを取りたいが、ペティスのような危険な相手の場合にはゲームプランに徹するしかないこともあると次のように振り返った。
「もう少し打撃を出せるとよかったとは思うよ。でもアンソニーは危険な相手だ。僕の考えは、ヤツを疲れさせて、あの派手な攻撃を封じておいて、金網に押し込んで殴りつけることだった。あんな優秀な選手を相手にリスクを取るのは難しい」
3. ブラウン、戦線に復帰
マット・ミトリオンに対する度重なるサミングには異論がないわけでもないが、トラヴィス・ブラウンがボストンで貴重な勝利を拾ったことには違いがない。
ブラウンにとって2015年は激動の年だった。唯一出場した試合ではアンドレイ・アルロフスキーに敗退。だからこそ、タイトル戦線に復帰するためには今回の勝利が必須だったのだ。ブラウンはこの結果で6位という自身のランキングを証明してみせた。
UFC代表のデイナ・ホワイトはUFC 195でアンドレイ・アルロフスキーに勝利したスティペ・ミオシッチの次期タイトル挑戦がほぼ確実であると語っている。そうなると、タイトル挑戦待ちで今後の予定がないのはアリスター・オーフレイムくらいしかいないことになる。オーフレイムは12月にジュニオール・ドスサントスを下して、現在3連勝中だ。
ブラウンの次の対戦相手はオーフレイムとの再戦になるのかもしれない。オーフレイムは2013年に”Hapa”ことブラウンに敗れており、当然にリベンジを狙ってくると思われる。
4. 輝き続けるコーテ
パトリック・コーテがアンデウソン・シウバの持つミドル級タイトルに挑戦したのはもう7年も前、UFC 90でのことだった。それ以来UFCで10試合、コーテはいまだに戦い続けている。
今回の勝利で3連勝、ウェルター級転向以降の戦績を5勝1敗としたコーテは、トップ15ランキング入り寸前だ。強い打撃とテクニックに、重ねた経験と深い洞察が加わり、コーテはウェルター級で興味深い存在になっている。
次の対戦相手を要求できる立場になったコーテの次戦はどうなる?
「トップ15の選手とやりたい。あるいは、8月に復帰してくる男がいたな。そう、ニック・ディアスだ。かかってこいや、ニック!」とコーテはぶちあげている。
5. ボストンのトップファイターが地元ファンを魅せる
ロブ・フォントとチャールス・ローザにはボストンで戦うプラスアルファの理由がある。それは家族と友だちだ。
ボストン出身の2人は強い勝ち方で客席のボストン子たちのプライドをくすぐった。
フォントはジョーイ・ゴメスをキレと破壊力のあるボクシングで圧倒し、これでUFC戦績は2勝0敗。フォントは見事なフットワークと正確さで52発もの打撃をヒットさせたあげく、2ラウンドにゴメスをノックアウトした。
ローザはこれでUFC戦績を2勝としたが、勝利は2度とも、ボストンでの試合であげたことになる。対戦相手は、わずか4日前のショート・ノーティスで代打役を引き受けた果敢なチャレンジャー、カイル・ボフニャクだ。試合全体を通じて、両者は容赦ないペースで攻撃しあったものの、勝利を拾ったのは一日の長があるローザだった。
フォントもローザも、地元ボストンで戦うことを楽しんでいる。
「友だちや家族のいるボストンにまた戻ってくることができるのかどうか、ちょっと心配していたんだ。この試合はぜひやりたかった」とローザは語っている。「ボフニャクはものすごくタフな選手で、僕は少し頭を使って戦う羽目になったけれど、またボストンで戦うことができただなんて、夢がかなったよ」