今の総合格闘技界でアンソニー・ジョンソンが一番驚異的な力を持っている男と言っても過言ではないだろう。日本時間31日(日)に行われたUFCファイトナイト・ニューアークのメインイベントでジョンソンに馬乗りで打ちのめされたライアン・ベイダーはどのように感じていたのだろうか。ベイダーにとって良かった点はすぐに決着がついたことだろう。ベイダーがテイクダウンを試みた際に、それを見事に回避したジョンソンはすぐさまマウントポジションを取るとレフェリーがストップをかけるまで容赦なく何度もパンチを浴びせた。
解説者であるジョー・ローガンは「“ランブル”が馬乗りになった瞬間、ベイダーの負けは決まっていた」と振り返っている。
今回のニュージャージー大会の論点に迫る。
1.成長を見せつけたジョンソン
ジョン・ジョーンズがライトヘビー級王者をはく奪された後、ジョンソンはUFC 187でダニエル・コーミエとタイトルを懸けて戦うも敗北。しかも、この試合中には多少のレスリング能力さえあればジョンソンのパワーを中和できることが浮き彫りとなった。
まさにそう感じ取っていたのがベイダーである。ニューアークでの試合に向けてパンチや蹴りを使って少しずつ距離を縮め、レスリングに持ち込みたいと説明していたのだ。
とはいえ、ジョンソン自身もコーミエとの試合では学ぶものがあったとコメントし、スタミナ切れが負けの大きな要因だったとして認めている。以来、アンソニー・ジョンソンはさらに賢く、強いライトヘビー級ファイターへと成長しており、寝技力も兼ね備えた今のジョンソンはアブナイ存在でしかない。
「人が何を言おうと気にしてない」と試合後に語ったジョンソンは自身のパフォーマンスについて「常に全力でトレーニングに専念するし、毎回自分のすべてを出して戦うことを心掛けている」と明かしている。 次にチャンピオンであるコーミエと戦うのはランキング1位につけるジョン・ジョーンズだと予想されており、ジョンソンはウェイティングリストに名を連ねることになりそうだ。とはいえ、ジョンソンはもしまたタイトル獲得のチャンスが与えられるならば、ベルトを保持しているのが誰であろうと戦う準備はできていると高らかに宣言している。
2.タイトル戦以上を視野に入れるロズウェル
ベン・ロズウェルは悲願のヘビー級タイトルを狙う一方で、最近は王座を手に入れる以上のことを考えているようだ。
ニューアークでジョシュ・バーネットを打ち負かした後、「今はこの階級にいるファイターを片っ端から潰していくことしか考えていないから、タイトル獲得は二の次かな。今夜はお楽しみというより、自分の実力を証明する場になったと思う」と語ったロズウェル。
それもそのはず。ロズウェルは総合格闘技の試合で初めてバーネットにサブミッションを決めたファイターとして歴史に名を刻んだのだ。ブラジリアン柔術の元世界王者であり、プロ格闘家として42試合を戦ってきたベテランのバーネットからタップを奪って勝利を収めたロズウェルは、たとえ今後王者に輝いたとしても“ザ・ウォーマスター”であるバーネットを打ち負かした今回の勝利は選手人生の宝だと述べ、バーネットに敬意を払っている。
さらに、ロザウェルは次に何が待ち受けていようと準備はできていると語った。
「さあどうだろう。現チャンピオンと前チャンピオンを戦わせたいのかな? そうするとオレとスティペ・ミオシッチが戦うことになりそうだね。もし少し順番を変えて、オレにファブリシオ・ヴェウドゥムと戦うチャンスをくれたら必ず倒してチャンピオンになるけどな」
3.ジミー・リベラは期待通りの活躍
UFC解説者であるブライアン・スタンに2016年に開花する選手の一人として期待されているジミー・リベラがユーリ・アルカンタラとの試合で期待通りの活躍を披露した。大会に先だってリベラについて語ったスタンは、オクタゴン内でリベラにできないことはないとまで絶賛。
その言葉通り、“エル・テラー”のニックネームで知られるリベラは今回もベテランのアルカンタラを相手にその凄まじい能力を存分に発揮している。
UFCで3勝目を記録し、経験豊富なアルカンタラとの厳しい試練の一戦を制したリベラは頂点を目指し、バンタム級ランキングのトップ10入りを目指したいところだ。
4.ここからが楽しみなセージ・ノースカット
ブライアン・バーバリーナとの試合に挑んだ“スーパー・セージ”ことセージ・ノースカットは出だしこそ勢い良く攻めたものの、第2ラウンドで“バムバム”の腕地固めに捕まると、いつもの勢いは一気になくなった。
若干19歳でプロ格闘家としてすでに7試合に出場しているノースカット。その成長が著しい一方で、今回の試合でまだ学習過程にあることが露呈した。
当初、アンドリュー・ホルブルックと戦う予定だったものの、大会2週間前に対戦相手が変更され、ウェルター級のバーバリーナと激突することになったノースカット。
失望の敗北を喫したとはいえ、ノースカットにとっては多くの明るい材料もある。キャリアの早い段階で改善すべき部分があることに気づけた点はむしろ良かったこととも言える。時として、ファイターが成長するためにはピンチや逆境を経験するのも不可欠なのだ。
一点、ノースカットが変える必要のない点はそのスポーツマンシップだ。今回の敗北をしっかりと乗り越えているように見える。試合後には負けた悔しさを隠しきれずにいたが、負けを真摯に受け止める姿勢はファン、関係者、全員に伝わった。
5.デビューを華やかに飾ったランディ・ブラウン
デイナ・ホワイト会長が手掛けるリアリティ番組『デイナ・ホワイトが行く、戦士を探せ』で発掘されたランディ・ブラウンが待望のデビューを果たした。相手はマット・ドワイヤーだ。
判定勝利を収めた後、ブラウンはほとんどプレッシャーを感じなかったと語った。
「本当に、いつも通りに試合できた。初めて、しっかり立ち技ができる大きい選手と戦ったっていうのもあって、最初は少し慣れるのに時間がかかったけど、それ以外は楽勝だったね」
そんな余裕も見せたブラウンの身体能力が全面に押し出される試合展開だったと言えるだろう。
スロースタートだった第1ラウンドが終了して以降は自分のリズムをつかみ、キックや膝を使った攻撃を次々と繰り出し、最後の10分を使って勝利をものにした。
将来が楽しみなブラウンは「最高のパフォーマンスができた。まだまだこれから。見ていてくれよな」と言い残してオクタゴンを去った。