スティーブン・トンプソンが元ウェルター級チャンピオン、ジョニー・ヘンドリックスを豪快なノックアウトで沈めたとき、次期タイトル挑戦への気運が高まり始めた。 しかし、チャンピオンへの道はつねに厳しい。”ワンダーボーイ”ことトンプソンが出世物語をハッピーエンドで終えるためには、山頂に到達する前に、もう1つの課題を克服しなければならない。そしてローリー・マクドナルドはこれまででもっとも厳しい試練になる。 マクドナルドとトンプソンほど、UFC屈指のエキサイティングファイターの称号にふさわしい選手はいない。 MMA史上に残る名勝負となったタイトルマッチを終えて、”レッド・キング”ことマクドナルドは、トップコンテンダーの座を奪回すべく、これまでにない固い決意で試合に臨む。マクドナルドは、王者ロビー・ローラーと希代の激戦に屈したものの、ここで”ワンダーボーイ”に勝てば、挑戦者の列の一番前に戻り、再戦に備えることになる。 近年でもっとも鮮烈だった一方的な猛攻でトンプソンがヘンドリックスを1ラウンドでフィニッシュしたとき、MMAファンは誰もが、一歩下がってトンプソンを見直したものである。かつて無敗のキックボクサー(戦績57勝0敗)だったトンプソンは、UFC戦歴8戦目にして、もっとも破壊的な打撃力を持つオールラウンドなMMAファイターに進化したのだ。 ”マクドナルド vs. トンプソン”は、ファイト・オブ・ザ・イヤー候補であり、日本時間6月19日(日)に開催されるUFCファイトナイト・オタワの見どころナンバーワンである。
【メインカード】 セミメインイベントでは大人気のドナルド・”カウボーイ”・セラーニが、ベテランのパトリック・コーテと対決する。両選手ともに、UFCで2つ目の階級で上昇中だ。 コーテは現在3連勝中、ここ2試合ではテクニカルノックアウトでベン・サンダースとジョシュ・バークマンを沈めている。36歳のカナダ人ファイター、コーテはミドル級でタイトルを目指していた時代から8年を経て、今はウェルター級で活躍中である。 勝負師カウボーイにとってコーテは難敵だ。というのも、これまでオクタゴンで相対してきた誰よりも、コーテは最大(体格的に)の対戦相手になるからだ。セラーニがウェルター級でやっていけるのかを判断する一戦となるだろう。 メインカードの幕開けは女子ストロー級同士が125パウンド(約56.7kg)のキャッチウェイトで対戦する大一番。昨年、ヨアンナ・イェンドジェイチェクに5ラウンド判定負けを喫して以来の登場となるヴァレリー・レターノーがジョアン・コールダウッドを迎え撃つ一戦だ。レターノーは強い打撃の持ち主で、その技術を存分に発揮するにはコールダウッドが最適の対戦相手となる。 2015年は”JoJo”ことコールダウッドにとっては奇妙な1年だった。戦績こそ2試合1勝1敗であったが、自分らしさが発揮できていなかったように見えた。パーソナルな問題を片付けて、今のコールダウッドは絶好調だと語っており、レターノー戦での本領発揮を狙う。 【プレリム(前座試合)】 UFC参戦以降、ミシャ・サークノフは2人の対戦相手に圧勝した。デビュー戦をノックアウト勝利で飾ったラトビア出身のサークノフは、2戦目で今度はアレックス・ニコルソンを5分間にわたってめった打ちにした後、一本勝ちを収めている。 今回サークノフが対戦するのは、この試合がUFCデビュー戦となるイオン・クテラバ、これまでの戦績は11勝1敗、うち9勝がノックアウトという選手である。まばたき厳禁だ。 【アーリープレリム】 ジ・アルティメット・ファイター(TUF)ネイションズの優勝者エリアス・セオドルが、アゴの骨折が完治した”スマイリング”・サム・アルビーの復帰戦に臨む。 この試合はスタイル的に興味深いマッチアップとなりそうだ。セオドルはグラップリングが得意で、グラウンド戦に引き込もうとするだろうが、アルビーは強烈な大砲の撃ち合いが大好きな選手である。 UFCファイトナイト・オタワの模様はすべてニコニコ生放送で完全生中継される。