ニックネームの選択、ブラジル人ファイターにとってこれほど難しいことはない。“ザ・フェノム”や“ザ・スパイダー”の他にも、大きい鼻を意味する“ナパオン”や靴のような顔という意味の“カラ・ジ・サパト”といったニックネームが存在する。その一方で愛称を持つことなく、ここまで活躍してきたファイターがグローバー・テイシェイラだ。 テイシェイラはシンプルに、グローバー・テイシェイラを選んだ。 「ニックネームはオレには似合わなかった。でもそれでいいんだ。ニックネームは誰かにつけてもらうものだ。自分でつけるものじゃない」 誰もテイシェイラを皮肉るようなニックネームをつける勇気がなかっただけかもしれない。日本時間8月21日(日)に行われるUFC 202でアンソニー・ジョンソンと対決するブラジル・ソブラリア出身のテイシェイラは真面目で、少し威圧的な空気を醸し出しているものの、実はUFCきってのジェントルマンなのだ。4月にラシャド・エバンズから圧倒的なKO勝利を収めた際も、テイシェイラは紳士的であった。 エバンズ戦で鳥肌の立つようなフィニッシュを披露したテイシェイラは決してオクタゴン中を走り回ったり、フェンスに乗り上げたり、バックフリップしたりすることはしなかった。相手の置かれている状況を理解し、敬意を表した。それがテイシェイラのやり方なのだ。 「ラシャドは凄く良いヤツだし、これはビジネスだからな。オレが勝つって分かっていたようなものだから祝う必要もない。カーウソン・グレイシーは勝利後に祝うヤツを嫌うってパウロ・フィリオが言っていた。喜びすぎるファイターが多いんだ。グレイシーは“なんでそんなにはしゃぐんだ? 負けると思っていたのか? だからそんなに嬉しいのか?“って聞いたらしい。だから試合前後は落ち着くようにしている。祝ったりしない。嬉しくないわけじゃない。良いパフォーマンスができてもちろん嬉しいけど、はしゃいだりするのはオレのやり方じゃない」 エバンズに勝利して3連勝を決めた36歳のテイシェイラ。ライトヘビー級王者のダニエル・コーミエとのタイトル戦出場はならなかったが、代わりにランキング1位のジョンソンとの対決に挑むこととなった。テイシェイラはエバンズ戦後に、ジョンソンとの対決を要求していた。 「ジョンソンと試合をするのがビジネス面から見て、一番正しい判断だと思った。次にタイトル挑戦に一番近い男だ。もちろんコーミエに挑戦したいけど、順番を抜かすのはジョンソンに失礼なことだ。ジョンソンはオレよりランキングも上だし、試合を申し込んだのは次に誰がタイトル戦に出るのかを決めるため。長い間ジョンソンはタイトル戦に出ることはないだろうし、オレにとってしっくりくる試合なんだ。とりあえずオレたちが試合をして次にタイトル戦に出る男を決める。ジョンソンを倒さない限り、タイトルは見えてこない」 ここまで紳士的に試合を要求できるのはテイシェイラしかいないだろう。遅咲きとはいえ、テイシェイラのキャリアは良い仕上がりを見せている。今夏を通して行ったキャンプの影響で、コネチカット州にある自宅でのバーベキューができなかったことが唯一いつもと違う点だと言う。 「バーベキューを少しやめて、試合に集中する必要があった。試合の5、6週間前はバーベキューしない。ステーキを焼いたりはするけど、パーティーはなしだ」 ダンベリー(コネチカット州)で最も有名な男の人気が落ちてしまうのでは? 「友達は分かってくれるさ。オレが試合に集中しないといけないことも。試合が終わった後の方が盛り上がるだろ。それがファイターの生き方なんだ。休日もなければ、誕生日をお祝いする時間もない。試合後の1週間だけかな。お祝いの時間は」 テイシェイラは勝利を祝えること願っているようだ。 「昔チャック(リデル)に“誰とでも戦えないといけない”って言われた。アンソニー・ジョンソンは強敵だし、本物のファイターだ。ジョンソンを倒して自信をつける必要がある。オレの目標は王者になって、タフなファイターたちと戦うことなんだ」