メインコンテンツに移動
/themes/custom/ufc/assets/img/default-hero.jpg

引退してなお多忙、マット・セラの日常

 

 


マット・セラの引退後の生活は充実している。引退という言葉から連想するような、ノンビリと落ち着いたライフスタイルからはほど遠いとはいえ。

「自分は本当についている、と思う」と元UFCウェルター級王者は典型的な1日を紹介してくれた。「朝起きると、まず子どもを幼稚園に連れて行く。もう一人を小学校に連れて行ったら、自分のジムに行く。そこでドリル練習を少しやったら家に帰って、今度は2歳の子どもを”リトルジム”というところに連れて行き、それから家族でランチを食べるんだ。夜は自分のジムで教える。ビギナー向けクラスもあれば、プロ向けのコースもある。何人かをチョークで締め落とす。そんな素晴らしい日を過ごしているんだよ」

ニューヨーク州ロングアイランド出身のセラは現在41歳、現役最後の試合となった2010年のクリス・ライトル戦から5年たった。戦績は17勝7敗、世界タイトルも獲得し、ジ・アルティメット・ファイター(TUF)で優勝も果たした現役時代よりも、今のセラは忙しいかもしれない。オンラインでヒットしているリアリティ番組『Dana White: Lookin' For a Fight(デイナ・ホワイトが行く、戦士を探せ)』への出演、そしてクリス・ワイドマンやアルジャメイン・スターリング、アル・アイアキンタといった選手のコーチ役もあり、セラには過去の栄光にゆっくりと浸る時間はほとんどない。

もっとも、セラによると、忙しさの種類が違うのだという。

「試合があるときは、とても自己中心的にならないといけないんだ」とセラは語っている。「合宿の中盤になると、家族を義理の親のところへ行かせて、自分に一切の邪魔が入らないようにしていた。試合というのは、金網の中の15分だけのことじゃないんだ。準備期間を含めて2、3カ月がかりの仕事で、その難しさはなかなか分かってもらえないと思う。そして、40歳の坂を越えたわけだ」とセラは笑う。

「今はとても幸せだよ。現役時代を振り返っても満足しかない。やり残したことはないと思う。提示された試合は全部受けてきたからね」

Matt Serra (far right) gets tased on Lookin' for a Fight確かにそうだ。セラは、ホール・オブ・フェイマーのB.J.ペン、マット・ヒューズ、フランク・トリッグ、そして将来のホール・オブ・フェイマーであるジョルジュ・サンピエール、そのほかにもライトルやイーブス・エドワーズ、ディン・トーマス、ショーニー・カーター、カロ・パリジャンといった、当時のベストファイターたちと戦ってきた。勝利を飾って大いにスポットライトを浴びた試合もあったものの、セラにとって最も思い出深い試合といえば、2005年のUFC 53で行われたカロ・パリジャン戦なのだという。

「あの試合では本当にヘトヘトになってしまってね」とセラは振り返る。この試合、第1ラウンドでセラはパリジャンをノックアウト寸前まで追い込みながら、結局3ラウンド戦って判定負けを喫したのだった。「途中でやめたくて仕方なかったのだけれど、自分でそうすることを許さなかった。そしてどうにか最後まで、降参したと口にしないでやり通すことができたんだ。確かに打ち負かされはしたが、心は折られていない。それが自分にとって、勝利よりも意味のあることだったんだ」

この後、セラはTUFシーズン4で優勝し、さらに2007年にはジョルジュ・サンピエールをノックアウトしてウェルター級タイトルを奪取し世界を驚かせることになるのだが、その1つ前の試合としてニュージャージー州アトランティックシティで開催されたこのパリジャン戦が、”ザ・テラー”ことマット・セラがUFCファイターとして、地元から一番近くで戦った試合だった。先週、ニューヨーク州でMMAが解禁されたことを、”エンパイアステート”の愛称で知られるニューヨーク州のMMAのパイオニアであるセラほど喜んでいる人はいない。

「思えば遠くまで来たものだ」とセラは語っている。「すべてをずっと見てきたからね」

「実にエキサイティングだ。ゆくゆくは彼らはマディソン・スクエア・ガーデンで戦うことになるのだろう。素晴らしいことだよ。とても特別なこと、ほとんど非現実的なことにすら思えるよ」

グローブのホコリを払って、いっそマディソン・スクエア・ガーデンで現役復帰してみては、との声を笑い飛ばしながらも、セラはその記念すべき日には必ず会場に、コーチとしていくつもりだと語っている。

「選手とは本当に親しい関係でね。ただの生徒じゃなく、彼らはもう友だちなんだよ。彼らと一緒にいることが楽しいんだ。もう自分のために入場をしようとは思わないけれど、彼らと一緒に入場をしてみたい。その方がいい。それでも参加したことにはなる。私が楽しみにしているのはそれなんだよ」

「実にエキサイティングだ。ゆくゆくは彼らはマディソン・スクエア・ガーデンで戦うことになるのだろう。素晴らしいことだよ。とても特別なこと、ほとんど非現実的なことにすら思えるよ」

ここで再度、夫として、父として、コーチとして、そしてリアリティショーの出演者としての役割を考えると、やはりマット・セラの世界には過去の栄光に浸っている時間がないとして、ではセラはUFCホール・オブ・フェイム入りについて考えたりすることもないのだろうか。

Matt Serra takes a turn in the passenger seat of a race car on episode 3 of Dana White - Lookin' for a Fight.「その判断は他の人にお任せするよ」とセラは語っている。「ホール・オブ・フェイムに入るべきなのかどうか、それは自分で言うことではない。優秀な選手たちがこれから殿堂入りしていくことだろう。その一員にはなれないのかもしれない。でも、自分はそんな彼らの多くと戦ってきたし、彼らもそのことは覚えていてくれている。それで満足だ。地球最強の選手たちと戦ってきた。中には本当に危険な相手もいた。自分にとってはそれで十分だし、現役生活に関しては後悔はない」

セラの現役生活は単なる勝ち負けの記録だけでは語りきれない。サンピエールやエドワーズ、ライトル、トリッグといった相手に勝ち、他方でペン、ヒューズ、トーマスに判定負けを喫した(トーマス戦はどちらが勝ってもおかしくはなかったが)ものの、セラについて語る際には、ファイターとしてだけでなく、コーチとして、あるいはこのスポーツのアンバサダーとしての影響力についても忘れてはならない。

とはいえ、そのことはまたの機会にしよう。今のところ、マット・セラは順調にやっている。忙しいが、上々だ。

「人生の新章を楽しんでいる」とセラは述べている。「これ以上は望むべくもないね」