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自分のためだけでなく、クリーブランドのために

 


この数年、現在UFCヘビー級王者のスティペ・ミオシッチにオクタゴンでの目標を聞く機会があったが、答えはいつも同じで、タイトルを自身の地元クリーブンランドに持ち帰ることであった。
半世紀に渡り、クリーブランドの熱狂的なスポーツファンは、何度となく何らかのスポーツ競技でのタイトル獲得というチャンスを手にしながら、あと一歩で手に届かず、悔しい思いをしてきたため、ミオシッチがヘビー級ランキングを駆け上がると、タイトル獲得は自分のためというよりも、クリーブランドのためになっていたのかもしれない。
しかし、今年5月ミオシッチがブラジル・クリチバで当時の王者ファブリシオ・ヴェウドゥムを下し、50年以上振りにクリーブランドにスポーツのタイトルを持ち帰ることができたのである。
その歴史的な出来事の数日後、ミオシッチはNBAのクリーブランド・キャバリアーズのプレイオフの試合にチャンピオンベルトと共に現れると、レブロン・ジェイムスが率いるチームに、NBAでも優勝という栄光を実現して欲しいというメッセージを送った。実際にキャブスがNBAで優勝した際には、ミオシッチが満面の笑みを浮かべ、肩にはヘビー級のチャンピオンベルトを掛け、ついにNBAでも愛すべき地元クリーブランドに優勝という素晴らしい栄光が刻まれることになったことを喜んでいた。
更にアンコールとして、ミオシッチは自身の初防衛戦を引っさげて地元クリーブランドに凱旋することになった。しかも相手はアリスター・オーフレイムでUFC 203のメインイベントとして登場したのだ。大会当日までの全てのイベントにおいて、街中がミオシッチを拍手、スタンディングオベーションを応援し続け、会場に姿を現した時には、登場曲が聞こえないほどであった。



「この1週間は本当に素晴らしかったよ。食べに行くにしてもどこに行くかわかっているし、どこに居るかも分かっていたし、何より家にも近いということは、本当に素晴らしい経験だった。緊張していたんだけど、悪い意味でのものではなかったし、誰の期待も裏切らなかった。地元で試合をするということは本当に素晴らしいことだったよ。」

会場での応援のことを聞かれると、「あれはクレイジーだったね。そうなるんじゃないかとは思っていたけどまさかね。忘れられない経験だったし、本当に感謝してるよ」と付け加えた。

多くのファンは、アスリートにとって地元での試合というのはプラスになると考えがちだが、本当のところは地元に帰ってくれば、メディアや友人や家族の要求も多くなり、例えば高校時代から会っていない知人に「2枚ほどチケットを手配してくれると助かるよ」など言われることも多々あるはずである。
しかし、ミオシッチにとっては、そうしたネガティブなことより、サポートしてくれる人が近くに居てくれるというポジティブな要素の方が大きかったらしい。更に、自分のホームグラウンドで1ラウンドKOを果たしたことで、ネットでの批判を一蹴することができたのである。
「少しプレッシャーになってところもあるけれど、大きな問題ではないし、できると思っていたよ。素晴らしいコーチ、そして妻に恵まれ、みんながサポートしてくれている。やれると思って行ったよ。最初のパンチが当たったけど、それから先は大丈夫だとったね。」

最初のオーフレイムのパンチがミオシッチを直撃すると、会場は静まり返り、キャンバスに倒れたミオシッチをオーフレイムはギロチンで締めようとしていた。ミオシッチにとっては、ジュニオール・ドス・サントス戦以来のダウンであるが、今年UFCで何度も見られたチャンピオンのダウンの一つになるのではと思われた。

しかし、オーフレイムのギロチンから逃げ、再び立ち上がって攻撃を仕掛けたミオシッチは、1ラウンド終了30秒前には逆にKOを奪っていたのだ。

Stipe Miocic earns a TKO win over Alistair Overeem at UFC 203 to defend his heavyweight title 「オーフレイムはキックで仕掛けてきたが、自分は対応できていた。手を下げて、左で攻撃を仕掛けていったよ」と語るミオシッチは、この時も冷静に状況を捉えていた。ディフェンスのミスからダウンしてしまったくよくよと考えるのではなく、まだ試合を止められていなく、立て直せること、そして何よりも1ラウンドの終了までに勝利を狙えると思っていたのである。
 
「ファイターとしては当然だし、自分は毎日進化していっているんだ。とにかくいつも通り試合映像を見て、トレーニングをする。そんな当たり前のことでも、常に改善すべきところが見つかるんだ。どんなキャンプを張っていても、どんなトレーニングをしていてもだ。常に改善することを目指しているよ。」

現在ミオシッチの次戦は決まっていない。3連勝中のチャンピオンは、対戦相手の母国、そして自身の地元での2つの大きなPPVイベントを成功させ、つかぬ間の休息を楽しんでいるようだが、ミオシッチ自身それが長く続かないことを望んでいるようである。

「正直少し疲れたところだし、UFCも休むことを許してくれたので休んでいるが、次は春あたりがいいかな。誰かのように1年間も休むつもりはない。4,5ヶ月休めば、次に進める準備は出来ているはずだ。」

ミオシッチの前に進み続けるというポリシーは変わることがないようだ。

「勝ち続けること、そしてベルトを持ち続けること。そして、試合の後にも言ったように、自分は諦めることはしない」と2017年の目標を語った。