過去を引きずるのはドナルド・セラーニの生き方ではないようだ。 今やMMA界を代表する打撃マシーンと化したドナルド・セラーニ。幼少期をコロラド州で過ごし、その広大な地で、生きる価値のある人生を歩む大切さを学んだのだという。そんな自由な生き様がセラーニをここまで魅力的な選手させたと言ってもいいだろう。 「最終的に一番大事なのは人生を楽しむこと。他のファイターたちにはそう言って教えている」とセラーニは語った。「もし今日地元の仲間から“5フィート(約150cm)も雪が積もっているからスノーモービルでも乗りにいかないか”なんて電話がきたら速攻で駆けつけるね。トレーニングを始めると、1カ月以上トレーニングにしか集中しないファイターが多いけど、オレにはそれが理解できない。オレなんて試合前に釣りに出かけたりするから、批判を受けたりもするけど、でもそれがオレのやり方だから」 「老後にするべき生活を今しいている感じかな。お金がなくなるまでは自分のやりたいことをするつもりだし、もし金が底をついたらウォルマート(北米で展開されるディスカウントストア/スーパーマーケット)で働くよ」 セラーニにとって最も大切なのが、“今、ここで”という観念だ。それは、後先を気にせずに物事を進めること。たとえ次の試合でノックアウトされようが、勝利してランキングを上げようが、セラーニは常に前進することを心掛けている。今回の試合はそんな彼のモットーを証明する良いチャンスになるだろう。 去年12月に現ライト級王者のハファエル・ドス・アンジョスに惜しくも敗れてしまったセラーニは、直ぐにでもオクタゴンに戻りたかったようだ。そんな中、B.M.Fランチ(ジム)のリーダーである彼は、ライト級を去り、ウェルター級で戦うことを決意したのだ。
セラーニのように、ある一定の地位を確立しながら他の階級で戦うことを選ぶ選手はそう多くない。タイトル戦の後ならなおさらだ。しかし、セラーニ自身は気にしていない。 「体重を増量していく作業が楽しいよ。今は177パウンド(80kg)だけど、今日の朝もグワカモレとかお菓子を食べたりしてね。まあ後で大量の汗をかいて減量もするし、嫌になる事なんて一つもない。階級を上げたからって、戦い方を変えるわけでもないし。もともとこの階級にいる奴らの方がデカいかもしれない。ただ、その分オレの方が早く動けるかもしれない。こればっかりは誰にも分からないだろ?」 前回のドス・アンジョス戦で第1ラウンドKO負けを喫したことについてセラーニは「この前の試合についてはあんまり話したくないな」と述べつつ、「しっかりやることをやらないで試合に出ると、打ちのめされるんだ、それが前回のオレだった。もっと腕立てだったり、腹を守る練習だったりをするべきだな。それも今となっては関係ないことだし、今週のピッツバーグ大会で本気を出す準備はできている」と続けて意気込みを語った。 WECそして、UFCでも長い間ライト級王座を追い続けていたセラーニだが、UFCファイトナイト・ピッツバーグで挑むウェルター級デビュー戦の相手は当初、ティム・ミーンズが予定されていたが、欠場することになり、急きょ、もう一人の“カウボーイ”のニックネームで知られるアレックス・オリベイラとの対戦が決定した。 ファンにとっては“カウボーイ”同士の対決となるこの試合は、どちらが本物の“カウボーイ”なのかを判断する良い機会になったと言える。その一方で、当のセラーニはそこまで“カウボーイ”対決に興味がないという。セラーニにとって対戦相手はあくまでも金儲けのために倒すべき存在であり、それ以上の感情はないという。 「対戦相手が変わったりするのはUFCではよくあること。アレックス・オリベイラにはこの試合に出でくれて“ありがとう”って言いたいね。ミーンズの欠場が決まった時にオレはメキシコで釣りをしていて、電波もWiFiも届かないところにいたんだ。UFCはオレが試合に出るって言ったら、相手が誰であろうと出るのは知っているし、後々、対戦相手が変わったのを聞いた時も、相手がいて、試合ができればオレは幸せだって思えた」 「最近、自分のトラックを壊しちゃったから、お金がいるんだよ。誰が相手だろうと関係ない。自分がどう試合するかだと思っている」