UFCファイトナイト・サンパウロ見どころ:リョート・マチダが2年4カ月ぶりの復帰戦

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト・サンパウロ
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日本時間10月29日(日)に開催予定のUFCファイトナイト・サンパウロのメインイベントでは、リョート・マチダ(ブラジル)対デレク・ブランソン(米国)のミドル級戦が行われる。



出場停止期間中の心境を語るマチダ

2016年4月の薬物検査時に、禁止物質DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)の摂取を自ら認め、18カ月の出場停止処分を受けた“ザ・ドラゴン”ことマチダにとって、今回の試合は母国ブラジルで出場処分明けの復帰戦となる。DHEAは米国では店頭で販売されている、ごくありふれたサプリメントで、マチダはこれが禁止物質であるとは知らず、検査官にDHEAを飲んでいることを気楽に明かしたのだという。その後の米アンチ・ドーピング機構(USADA)の検査にも終始協力的で正直だったマチダには、寛大な措置を求める声も上がったが、検査を担当したUSADAが下した処分は厳しいものだった。

サンパウロで行われた大会前記者会見で、マチダは次のように反省の弁を述べている。

「起きたことには責任を取らなければならない。最初は処分が厳しすぎるとも思ったけれど、今では起きるべくして起きたことだったと思っている。試合から試合へと追われていた頃には、人としての成長が止まっていた。ところが、自分の過ちを認めた瞬間から、自分の人生は変わり始めた。おそらく、いったん皆さんの前から姿を消し、いろいろなことを学ぶ時間が必要だったのだと思う」

「みんな戦っているのに自分は・・・などと、他人と比較して焦ることもあった。ただ、この状況をしっかり受け止めてからは、自分は自分、他人は他人だと思えるようになった。18歳で大学に入る人もいれば、50歳で入学する人もいる。大事なのは、他人が何をしているかではなく、自分が何をしているのか、自分がちゃんと生き、ちゃんと練習することなんだ」

出場停止期間中にも、マチダは格闘技の奥義を究めるべく、鍛錬を怠ることはなかったという。

「試合があろうがなかろうが、マーシャルアーティストとしての稽古を欠かさない。キングスMMAやブラックハウスでも練習をしていたし、新たなトレーニング方法を求めてブラジルや世界各国を旅して歩いた。試合以上の自分の使命をみつけたと思っている」

2年4カ月ぶりの復帰戦、不安と期待と

空手をベースとした斬新なファイトスタイルでUFCライトヘビー級の階段を無敗で駆け上がり、2009年には当時の王者ラシャド・エバンスを下してタイトルを獲得したマチダ。この時、UFC解説者のジョー・ローガンが、「マチダ時代の到来だ!」と高らかに宣言するほど、盤石の強さを誇っていたのだ。その後も、マウリシオ・“ショーグン”・フアを迎えての大激戦の防衛戦、ランディ・クートゥアに引導を渡した試合や、ジョン・ジョーンズとの殴り合いなど、多くの記憶をファンに植え付けてきた。飲尿療法の実践者としても話題を呼んだ。

そんなマチダも39歳。ヨエル・ロメロ戦(2015年6月)以来、実戦は2年4カ月ぶりであり、現在2連敗中と角番でもある。この試合間隔についてマチダは、実戦を通じてしか得られない“戦いのリズム”を取り戻せるかどうかとの不安を明かしながらも、「自分の戦いをしっかり修正する時間が取れた。グラウンドでも、テイクダウンディフェンスでも、得意の打撃でも、常に改善できることはあるんだ」と、グレードアップした戦いを披露することを期している。

対戦相手のブランソンについては「オールランドなコンプリートファイターだと思う。でも自分は、彼のテイクダウンを防ぎ、空手殺法でフィニッシュできると信じている」と語っている。出場停止期間を腐ることなく無事に勤め上げ、表舞台に復帰してくるマチダの熟練の妙技に期待がかかる。



柔術マスター、マイアのこれまでとこれから

UFCファイトナイト・サンパウロのセミメインイベントではデミアン・マイア(ブラジル)対コルビー・コビントン(米国)のウェルター級戦が行われる。

柔術マスターにして、玄人好みのファイターズファイターであるマイア。複数の日本人UFCファイターからも、フェイバリットファイターとして名前が挙がるマイアであるが、格闘技を始めたきっかけは意外にも柔術ではなかったのだという。

「若い頃から格闘技が好きでね。最初はカンフー、次に柔道を習った。でもやっぱり一番好きだったのはヴァーリ・トゥード(ポルトガル語で“何でもあり”の意味、創世記のMMAの呼称)で、第1回のUFCを見てホイス・グレイシーに憧れるようになった。そこから柔術に入門するんだけど、目的はあくまでヴァーリ・トゥードで一番になることだったんだ。そのためにはホイスのように柔術で強くなければいけない、と思った。ただ、入門してからは、いろいろな技術があって、頭も使う柔術にすっかり夢中になってしまったんだけれどね」

2010年にアンデウソン・シウバの持つミドル級タイトルに挑戦するも判定負け、その後ウェルター級に転向し、UFC 214(2017年7月)に王者タイロン・ウッドリーに挑戦するも判定負けと、タイトル挑戦にまではたどり着くマイアではあるが、2度に渡って戴冠のチャンスを逸している。11月に40歳になるマイアは、これからの戦いについて、次のように心境を明かしている。

「幸せというものは、日常生活にあるごくシンプルで小さな事柄の中にあるんだ。人生とは、家族のため、生徒のため、友だちのため、そして世の中のために少しでも役に立つ人間になろうと進化していく旅路だと思っている。チャンピオンになったからといって、良い人間になるわけではない。むしろチャンピオンになろうとする経験と旅路にこそ意味があるんだ」

そんなマイアのグラップリングを「本当にワンパターン。老犬に新しい芸を仕込むのはもう無理」と切って捨てる対戦相手コビントンの挑発を尻目に、地元観客の前でマイアの名人芸がさく裂するのか。ブラジルのファンならずとも目が離せない。

【文 高橋テツヤ】
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