UFCファイトナイト・セントルイス見どころ:アジア人初のUFC王者を目指せ! チェ・ドゥホの快進撃

UFCファイトナイト 見どころ
UFC 206:カブ・スワンソン vs. チェ・ドゥホ【カナダ・オンタリオ州トロント、2016年12月10日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 206:カブ・スワンソン vs. チェ・ドゥホ【カナダ・オンタリオ州トロント、2016年12月10日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間1月15日(月)に開催されるUFCファイトナイト・セントルイスでは、ジェレミー・スティーブンス(米国)とチェ・ドゥホ(韓国)がメインイベントで拳を交える。

激闘派スティーブンスの格闘哲学

前回、2017年9月に開催されたUFC 215で元Strickforce王者のギルバート・メレンデスを下して連敗を食い止めた31歳のスティーブンス。予定されていた自分の結婚式を延期して臨んだこの試合で、キャリア10年のベテランは手数でメレンデスを圧倒、試合後には「自分史上ベストなパフォーマンスだった」と満足げに語っていた。

「スタミナ強化中心のトレーニングに変えたんだ。フロイド・メイウェザー方式だね。だからこの歳(とし)になって、打撃の数が倍増している。ラウンドインターバルに座る必要もなかったよ。2連敗していたし、嫁さんももらうし、謙虚になってやり直すしかない」

第1ラウンドでのフィニッシュが13回、奪ったノックダウン数は16回(これはアンデウソン・シウバの18回に次いでUFC史上第2位だ)、ファイトボーナスは7回受賞というUFC随一の激闘派スティーブンスは、自身の格闘哲学を次のように語っている。

「オレらはバーファイト時代から生き残ってきている本物のファイターだ。本物のファイターなど、もはやほんの一握りしかいない。ディアス兄弟、ドナルド・セラーニ、ホルヘ・マスビダル、マット・ブラウン、それにマーク・ハント。オレはこうした選手が好きだし、格闘技のあるべき姿だと思っている。裸一貫でこのスポーツに命をかける。試合を断らない。リスクなど考えない。ヤバイ対戦相手から逃げない。近頃ではアスリート的なことやらトラッシュトークやらエンターテインメントやらがやたらに喧伝(けんでん)されるが、オレらは今でも、ナンセンスなことは抜きで、マウスピースをぐっとかみしめ、必死に戦うだけの現実主義者なんだよ」

チェ戦について「セントルイスに暴力と混沌(こんとん)がやってくる。もちろん血も流れることになる」と激戦を予言するスティーブンスは「試合はドッグファイトになる。オレは勝つためなら何でもやる」と闘魂を燃え上がらせている。

今年中のタイトル挑戦を目指すチェ

一方の“コリアンスーパーボーイ”ことチェは、2014年のUFCデビュー以来、第1ラウンドでのノックアウト勝ちを3試合続け、4戦目となる前回のカブ・スワンソン戦(UFC 206、2016年12月)では、会場が興奮のるつぼと化すドラマティックですさまじい殴り合いを展開、惜しくも判定負けを喫したものの、負けてなお大きく評価を上げた。異例の試合後敗者インタビューで「僕は本当に勝てると思っていた。これで十分ではないというのなら、もっと練習するしかない。もう負けない」と堂々と宣言していたのが印象に残る。この試合はUFC公式サイト選定の2016年ベストファイトトップ10でも、コナー・マクレガー対ネイト・ディアスなどの名勝負を抑えて第1位に輝いている。

あれ以来、肩のケガもあって今回が13カ月ぶりの復帰戦となるチェは「僕は欠場中にますます強くなった。身体が強くなっただけでなく、考え方などメンタル面でも成長した。僕がトップに立つ日も遠くない。まずは次の試合に集中して、良いパフォーマンスをお見せしたい」と充実ぶりをアピールしている。

対戦相手のスティーブンスについては、「根性があって、パンチの強い選手だ。すぐれたゲームプランも立てている。彼と戦うことになれば、とても面白い試合ができるのではないかとかねて思っていた」と腕を伏している。

1年後には徴兵でいったん戦線を離れる予定のチェであるが、「徴兵中にもファイターとしての進化を止めるつもりはない。よりすごい選手になって戻ってくるだけだ。それでも、できればそれまでにタイトルに挑戦しておきたい。僕の目標はチャンピオンになること、そして見る人の血を沸かせるような試合をすることなんだ」と、これから急ピッチでチャンピオンロードを躍進していくことを誓っている。

アジア人初のUFC王者誕生なるか。チェの快進撃から目が離せない。

引退撤回、新生ベウフォート

UFCファイトナイト・セントルイスのセミメインイベントでは、ユライア・ホール(米国)対ビトー・ベウフォート(ブラジル)の一戦も行われる。

現在40歳、キャリア20年になる大ベテランのベウフォートは前戦、ネイト・マーコートを判定に下し(2017年6月、UFC 212)、4試合ぶりに白星を得た。この試合の前には、引退やUFC離脱もほのめかしていたベウフォートだったが、本拠地フロリダを離れ、モントリオールのトライスターMMAでの出稽古を始めたことで、現在では「また子どもに戻ったような」気分になっているのだという。

「これまで、ちょっと燃え尽きていた感があったけど、モントリオールに単身赴任して、キッチン付きの小さなアパートで暮らしていると、若い頃の気持ちがよみがえってくるんだ。まだ5試合はできる。新しい自分をお見せしよう」と現役続行を宣言している。

ホール、内なる力に覚醒

ホールもまた、3連敗後の前回の試合(2017年9月、クリストフ・ヨトゥコ戦)で勝利街道に戻ってきた選手だ。この試合、第1ラウンドで大ピンチに見舞われ、「もう嫌だ。タップしよう。そして、こんなアホらしい仕事はもう辞めよう」と考えていたというホールだが、第2ラウンドに入って急にスイッチが入る。

「何だこんなもの、畜生。どいつもこいつも馬鹿野郎。実際にそう口に出してぶち切れたら、ノックアウトしていた。勝った試合では、これまでにもこんな感覚に陥ったことがある。自分では制御できないんだが、このぶち切れ感覚に入ると、まるで自動運転のように、やるべきことを身体が導いてくれるんだ」

ホールはこの感覚を「考える肉体、踊る精神」、もしくは「ドラゴンボールZ・モーメント」と名付けている。ベウフォートお得意の序盤の猛攻をしのげば、ホールの恐るべきドラゴンボールパワーが誘発されることになりそうだ。

UFCが25周年を迎える2018年の第1弾、UFCファイトナイト・セントルイスをお楽しみに。

【文 高橋テツヤ】

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