日本時間4月15日(日)開催のUFCファイトナイト・アリゾナには日本の岡見勇信が出場し、ディエゴ・リマ(ブラジル)と対戦する。昨年、4年ぶりのUFC復帰を果たした岡見選手に、今回の試合への意気込みを聞いた。
「今回は言い訳のできない試合。何が何でも勝ちます」
Q: 昨年のUFCジャパンでは、マウリシオ・ショーグンの欠場を受けて、わずか6日前のオファーで急きょ出場となりましたが、オファーが来た時はどんなお気持ちでしたか?
岡見: ビックリしました。(ライトヘビー級の)ショーグンがケガしたからといって、(ウェルター級の)自分にオファーが来るとは全く思っていませんでしたから。まずは15分ほど歩きながら頭を整理して、お気に入りの書店に入って心を落ち着かせたりしてから、やりますというメールを打ったんです。
Q: 結果は岡見選手にとってキャリア初の一本負けとなりましたが、対戦相手のオヴィンス・サン・プルーは、岡見さんがテイクダウンを取りに来たことに驚いたとコメントしています。
岡見: 自分に自信がある場所で勝負をしたかったのです。グラウンドで相手を疲れさせてから、関節技を仕掛けたいと思っていました。打撃で正面衝突するよりも、その方が勝機を見いだせると考えました。
(フィニッシュとなった)ヴォンフルーチョークについては、彼の得意技であることは知りつつも、まだ余裕があると思っていたのですが、気がついた時には意識が途切れていました。
Q: 今回の試合については、どんな気持ちで臨まれますか。
岡見: 言い訳ができない試合だと思っています。準備期間もたっぷりありましたし、適正階級の試合でもあります。自分が今のUFCでどれくらい戦っていけるのかが明らかになる試合です。この1試合でUFCキャリアが終わる可能性もあると思っていますので、全てをかけて、何が何でも勝ちに行きたい。
これまでに積み重ねてきた経験や失敗を踏まえて、今の岡見が一番強いと自信を持って言えるんです。だから、これで通じないなら、もう厳しいと思う。そんなチャレンジを、このUFCという舞台でお見せできるのは幸せです。とにかく、結果を見てもらえればと思います。
Q: 対戦相手のリマは海外メディアで、「オカミのゆっくりしたペースにはつきあわず、若さを出して動かしていきたい」と語っています。
岡見: ・・・まあ、確かに若いですよね。ムエタイベースの選手なので、打撃で勝ちたいんでしょう。自分としては、やるべきことをぶつけるだけです。対戦相手は誰でも良かった。組まれた試合を受けようと思っていました。
「競技面だけでなく、考え方でもソネンの影響を受けています」
Q: ところで岡見選手は、キャリアの早い時期から、UFCを目指しておられたのですか?
岡見: 若い頃は、海外で戦っていきたいという気持ちが強かったんです。当時は海外でなかなか勝てなかった。でもそうしたことが自分の成長の糧になりました。UFCから最初にオファーをもらった時にも、海外で戦えることがうれしくて、行くことに決めたんです。
Q: 新しいファンがUFCファイトパスで岡見選手の過去の試合を見るとしたら、お薦めのベストバウトはどれですか。
岡見: うーん(長考)・・・。(マーク・)ムニョス戦でしょうか。頑張って勝ち切れた試合だと思っています。あるいは(ルシオ・)リナレス戦。これは海外練習の成果が出た試合で、自分にとって今後の道しるべとなりました。
負けた試合でもいいなら、チェール(・ソネン)戦、そして(アンデウソン・)シウバ戦が、自分にとって大きな転機になっていて、印象に残っていますね。
Q: ソネンと言えば岡見選手の練習パートナーとしてもおなじみですが、負けた後、岡見選手の方から稽古を付けてほしいと頼んだとか?
岡見: ええ、試合が終わってすぐ、帰りの車の中でお願いしました。チェールと試合をして、ビックリしたんですよ。あんなに何度もテイクダウンされたのが初めてで、やられながらチェールの動きに感銘を受けてしまったんです。味わったことのなかったMMAのタックルをまざまざと見せつけられて、これを攻略しないと、自分は生き残っていけないと確信しました。
Q: UFCファイトナイト・ジャパンの出場を決心する際にも、岡見選手は「ソネンならどうするだろうか」と考えたとか。
岡見: 競技者としてだけでなく、チャンスに貪欲(どんよく)であること、人間としての強さを大事にしていることなど、考え方の面でもチェールの影響を受けています。彼なら出場を即決するはず、断るわけもないと思いました。
Q: ちなみにソネンの試合前のトラッシュトークについて、岡見選手はどう思っておられるのですか?
岡見: プロとして本当に素晴らしいと思っています。それに、普段からああいう人だと困りますが、素顔は本当に優しいんです。そこまでしなくても、と思うくらいの気遣いの人なんですよ。
Q: ちなみに、ソネンのおしゃべり好きは普段からなんですか?
岡見: それはもう、ものすごいおしゃべりです。何をそんなにしゃべることがあるのかと不思議なくらいです(笑)。
「やっと自然体で格闘技に取り組めるようになりました」
Q: さて、プロデビュー16年目、戦歴45戦というベテランの岡見選手ですが、格闘技に対するアプローチなどについて、最近変わってきたことがあれば教えてください。
岡見: 練習でムダを削ることがうまくできるようになったと思っています。昔のようにやみくもに練習するのではなく、自分の強みを高めるために本当に必要なことを、取捨選択できるようになりました。
実はこれまで、ノックアウト勝ちしてやろう、みんなに喜ばれるような試合をしようと理想を追い求めすぎるところがあって、それがうまくいかず、自分でも不甲斐(ふがい)ない思いをすることが多かったのです。だから自分は、勝った試合でも、自分の試合を見返すことはほとんどなかった。
それがここにきて、シンプルで自然体になりました。やるべきことが明確になって、練習も楽しいのです。
Q: ちなみに、勝利の後、エア刀で立ち回るサムライポーズは最近もおやりになっていますか。
岡見: いやあ、最近は全然やっていませんでした。今回勝ったらやりたいと思います!
【インタビュー/文 高橋テツヤ)】