UFCファイトナイト・ミルウォーキー見どころ:ライト級トップファイターのサバイバルウォーズ!

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト・アトランティックシティ:公式計量セレモニーに登場したケビン・リー【アメリカ・ニュージャージー州アトランティックシティ/2018年4月20日(Photo by Patrick Smith/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・アトランティックシティ:公式計量セレモニーに登場したケビン・リー【アメリカ・ニュージャージー州アトランティックシティ/2018年4月20日(Photo by Patrick Smith/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間12月16日(日)に開催されるUFCファイトナイト・ミルウォーキーのメインイベントでは、ライト級ランキング4位のケビン・リー(アメリカ)と、同8位のアル・アイアキンタ(アメリカ)の一戦が行われる。

「アイアキンタを前座に引きずり下ろす」とリー

2014年に21歳でUFC入りしたリーのキャリア初黒星は、UFC初戦でアイアキンタに喫したものだった。リーにとっては、プロはレベルが違うことを思い知らされる敗戦だったという。

「デビュー戦は俺にとって初の大舞台だった。それまで500人の前でしか戦ったことがなかったのに、いきなり1万人の前で戦ったんだ。しかも、あんなに強い選手も初めてだった。自分にとってはすごく勉強になる試合だった」

「当時、練習は1日1回、同じコーチとマンツーマンで練習するだけで、大学生としての生活や勉強も満喫していた。だけど、試合後にはラスベガスに引っ越し、エクストリーム・クートゥアでフルタイムの練習をするようになったんだ」

以来、UFC戦績13戦10勝と経験を積みあげてきたリーはまだ26歳、ライト級トップ10での最若年ファイターだ。2017年にはトニー・ファーガソンとライト級暫定王者を争った(一本負け)。前回の試合ではエドソン・バルボーザの回し蹴りを食らって大ピンチに陥るも、そこから逆転ノックアウト勝ちで地力の強さを見せつけている。

アイアキンタへのリベンジはリーにとっては過去の自分との決別の証(あかし)でもある。

「今の自分は当時と全く別人になっている。今回の試合でチャンピオンクラスのファイターであることを証明したい。俺とアイアキンタでは人間のタイプも全く違う。酔っ払ってホテルの部屋を破壊する彼のような男の発言権がこれ以上増すようなことがあってはならない。だから、彼を前座に引きずり下ろすことは俺の個人的な義務だと思っている」

アイアキンタ、「前回と同じ目に遭わせてやる」

ジョー・ローゾン、ホルヘ・マスビダルといった強敵を倒して人気実力ともに急上昇だったアイアキンタは、ケガとの戦い、ファイトマネーへの不満などを原因として2015年から2年間、オクタゴンから遠ざかる。その間、アイアキンタは地元ニューヨークで不動産業に従事、「世界トップ10の不動産屋」(本人談)に上り詰めていたのだという。

2017年4月の復帰戦で、ディエゴ・サンチェスを98秒でノックアウトしたアイアキンタは、2018年4月に行われたUFC 223でハビブ・ヌルマゴメドフとのライト級王者決定戦に出場した。このイベントではもともと、ポール・フェルダーとの試合が組まれていたアイアキンタだったが、ヌルマゴメドフの対戦相手の相次ぐ欠場を受けて、試合前日になってタイトルマッチのお鉢が回ってきたのだ。3ラウンド戦のトレーニングしか積んでいなかったアイアキンタだったが、結局、ヌルマゴメドフと5ラウンドを戦い抜き、惜しくも判定負けを喫するも、なお評価を上げたのだった。

リーとの前回の試合をアイアキンタはこう振り返っている。

「ヤツは計量の時に(UFC会長の)デイナ・ホワイトに向かって、“小切手帳を用意しておけ、オレが全部持って帰るぞ”とか何とかわめいていた。リーはそれまで無敗だったから、これからも同じように勝てると自信過剰だったんだろう。そこでオレに恥をかかされたんだ。あれ以来、オレのことはヤツの脳裏に常にあったはずだ」

「人間としてはどうだか知らないが、彼もファイターとしては成熟してきたことだろう」とその後のリーの成長を認めるアイアキンタだが、リーの試合にはまだまだ穴があると指摘する。

「イージーファイトだ。また自信過剰で来るなら、同じ目に遭わせてやるさ」

勢いは本物か、フッカー試金石

UFCファイトナイト・ミルウォーキーのセミメインイベントに登場するのはライト級ランキング14位のダニエル・フッカー(ニュージーランド)と、同5位につけるエドソン・バルボーザ(ブラジル)だ。

2017年にライト級に転向してからは4試合連続のフィニッシュ勝利で一気にランキング入りを果たした急上昇株のフッカー。イズラエル・アデサンヤ、シェーン・ヤング、カイ・カラ・フランスらを輩出して好調なオークランドのシティ・キックボクシングのリーダー的存在だ。

かつてマーク・ハント、レイ・セフォーといったニュージーランド勢がK-1を席けんしたものだが、フッカーは新世代の“キウイファイター(ニュージーランド人ファイター)”によるUFC征服をもくろんで、自らのジム、コンバット・アカデミーを設立し、選手育成活動にも乗り出している。そのためにも負けられない今回の試合は、フッカーにとってまさに過去最高難度の対戦相手だ。

「ずっとやりたかったトップ級の選手との対戦がかなった。15分間、限界まで激しく戦う。ベストの相手に勝つことが、タイトルへの近道だと思っているからね」

白星街道復帰を期すバルボーザ

一方、バルボーザは2012年のテリー・エティム戦でさく裂させたUFC初の回し蹴りノックアウト劇で一気にファンのハートをつかんだ。パフォーマンスボーナス7回獲得の名勝負製造機にして、アンソニー・ペティス、ギルバート・メレンデスらに勝利をおさめた猛者ではあるが、現在はヌルマゴメドフ、リーに敗れてキャリア初の連敗中である。

そこで、バルボーザは約2年間所属した、フランキー・エドガーらが所属するアイアン・アーミー(ニュージャージー州)を離れ、今年7月からはフロリダのアメリカン・トップ・チームに復帰、心機一転で再起を期している。

ブラジルのファヴェーラ(スラム街)出身のバルボーザは貧しい子供に無料でムエタイを教えるファヴェーラ内のジムで格闘技を始め、8歳でデビュー、21歳の頃にはブラジル国内で向かうところ敵なしの強さを身につけたものの、それだけでは生計が成り立たず、2009年にアメリカに移住、2010年にUFC入りを果たした。

バルボーザにとって今回の試合のテーマは、白星街道復帰だ。

「自分のキャリアでも最も重要な試合になる。自分はいつも、皆さんを楽しませる試合をしたいけど、今回ばかりは結果が欲しいんだ。必ず勝つ」

ライト級ランカー4名が頂点を目指してしのぎを削るUFCファイトナイト・ミルウォーキーをどうぞお見逃しなく!

【文 高橋テツヤ】
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