UFCファイトナイト・サクラメント見どころ:ユライア・フェイバー、地元マットで現役復帰

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト・サクラメント:ユライア・フェイバー(2019年7月10日、アメリカ・カリフォルニア州サクラメント/Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)
UFCファイトナイト・サクラメント:ユライア・フェイバー(2019年7月10日、アメリカ・カリフォルニア州サクラメント/Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)
日本時間7月14日(日)に開催されるUFCファイトナイト・サクラメントのセミメインイベントでは、地元の英雄ユライア・フェイバー(アメリカ)が2年半ぶりに現役復帰、現在8連勝中の新進気鋭リッキー・シモン(アメリカ)と対戦する。

軽量級のパイオニア、フェイバー

2016年12月に、今回と同じ会場であるゴールデン・ワン・センターでのブラッド・ピケット戦で判定勝ちを収め、現役を引退した“ザ・カリフォルニア・キッド”ことフェイバー。試合後の勝利者インタビューでは、「すばらしい人生経験をさせてもらった。まるで実生活の博士号を取得したような気分だ。現役生活は卒業しますが、これからも突き進んでいきます!」とフェイバーらしい明るい前向きなコメントでキャリアにいったんの幕を閉じていた。

フェイバーは、アメリカの軽量級MMAシーンのパイオニアとして尊敬されている存在だ。

「僕は若い頃から、軽量級についての未来像を抱いていた」とフェイバーは語っている。「それがどんな形になるのか、何を意味するのかは全くわからなかったけど、なぜか自信だけはあった。軽量級には大きな役割があると信じていたんだ」

「僕が戦い始めた頃、UFCで最も軽い階級はウェルター級だった。だから軽量級の選手にとっては、まだ晴れ舞台がなかった。でもボクシングでは、ロベルト・デュラン、シュガー・レイ・レナード、オスカー・デラホーヤ、フロイド・メイウェザー、マニー・パッキャオといった軽量級のスターがきら星のように存在している。MMAでもそうなるのは時間の問題だと思ったんだ。足りないのは個性あふれる選手の存在だった。だから僕はそこの穴を埋めようと決意したんだ」

フェイバーは2006年から2008年までWECフェザー級王者に君臨、ジェンス・パルバーやジョセ・アルドとの激闘が大きな話題をよんだ。UFCでは2010年にWECを吸収合併した際に、フェザー級とバンタム級についてはWEC王者をそのままUFC初代王者に認定、選手もほぼそのまま移管し、軽量級部門を本格始動させたのである。

軽量級人気を自ら引っ張るだけでなく、フェイバーは軽量級MMAファイターの梁山泊(りょうざんぱく)となるジム、チーム・アルファ・メール(以下、TAM)を創設、ジョセフ・ベナビデス、チャド・メンデス、T.J.ディラショー、コーディ・ガーブラント、セージ・ノースカット、石原“夜叉坊”暉仁といった人材を続々と輩出し、軽量級戦線を大いに盛り上げている。

現役引退後のフェイバーは、2017年7月に堂々のUFC殿堂入りを果たすと、2018年10月にはグラップリング大会『QUINTET.3』に出場、同じく2017年のホール・オブ・フェイマーである桜庭和志との夢の対決を実現させる(時間切れドロー)など、精力的な活動を続けている。

40歳の再チャレンジ、悲願の戴冠へ

今回、現役復帰を決めた理由について、フェイバーは次のように語っている。

「後悔したくないんだ。この歳(とし)にしてはまだまだやれていると思っているし、やるのであれば早い方がいい。だってもう40歳だよ。クレイジーだよなあ。実は以前から、40歳になったら何かにチャレンジしたいとは思っていたんだ。(3月に)子供も生まれたし、モチベーションはますます高まっているよ」

もしフェイバーに思い残すことがあるのだとしたら、それはUFCでタイトルを獲得できていないことではなかろうか。UFCではタイトルには4度挑戦し、いずれも退けられた。WEC時代を含めると、タイトルマッチでは7連敗中なのだ。キャリア13年、戦績MMA戦績は34勝10敗のフェイバーは、40歳からのまさかの再チャレンジで、中年の星になることができるだろうか。

今回のイベントにはフェイバーに加え、TAMからジョシュ・エメット(アメリカ)、ダレン・エルキンス(アメリカ)、アンドレ・フィリ(アメリカ)、ベニート・ロペス(アメリカ)が参戦、あたかもTAM夏祭りの様相を呈している。

会場の照明が落ち、おなじみの入場曲『カリフォルニア・ラヴ』(2Pac)が流れると、沸き上がる地元観客の大歓声の中、オクタゴンに向かって歩みを進めるフェイバーの勇姿が再び現れる。ワン・アンド・オンリーのこの入場シーンを見るだけでも、感動で胸が詰まるUFCファンも少なくないはずだ。

汚名返上デ・ランダミー、無敗の逸材ラッド

UFCファイトナイト・サクラメントのメインイベントでは、女子バンタム級マッチ、ジャーメイン・デ・ランダミー(オランダ)対アスペン・ラッド(アメリカ)の一戦が行われる。

2017年2月開催のUFC 208で行われた女子フェザー級初代王者決定戦で、ホリー・ホルムを判定で下したデ・ランダミー。新女王誕生にも場内からブーイングが飛んだのは、微妙な判定結果への不満だけでなく、この試合でデ・ランダミーの有効打が第2ラウンドおよび第3ラウンド終了のホーンが鳴った後でホルムにヒットしたせいだった。

その後、最初の防衛戦の対戦相手にクリス・サイボーグの名前が挙がると、デ・ランダミーはサイボーグの過去の薬物検査失格を理由に試合を拒否。これによりデ・ランダミーはベルトをはく奪されてしまう。

こうしたことからネット上では「ダーティチャンプ」や「サイボーグ戦を回避している」などと炎上。こうして現在ではすっかり悪役の座に押し込められてしまっているデ・ランダミーだが、UFC戦績5勝1敗、女子バンタム級ランキング1位、そしていったんはタイトルまで獲得した実績は否定できない。ふだんは母国オランダで警察官の仕事をしているデ・ランダミーは、「いじめられている人のために勝利をささげたい」と意欲を見せている。

他方のラッドはまだ24歳にして戦績8勝0敗、百戦錬磨のトンヤ・エビンジャーやシジャラ・ユーバンクスを下してバンタム級ランキングで急上昇(現在ランキング4位)、ロンダ・ラウジー以来の逸材とも評される地元カリフォルニア州出身の新鋭グラップラーだ。

自身初のメインイベントに、前回の試合から6週間という短いインターバルで出場するラッドだが、「練習はいつもしている。9時から5時の仕事みたいに、毎日欠かさずやっている。UFCファイターはそうあるべき」と平然と語って動じない。打のデ・ランダミーか、極のラッドか。メインを締める女の熱き戦いは、次期タイトル挑戦者決定にも大きな影響を与えることになりそうだ。

【文 高橋テツヤ】
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