UFCファイトナイト・バンクーバー見どころ:言葉はいらない、タイトルもいらない、セラーニ対ゲイジーの真っ向勝負

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト・オタワ:アル・アイアキンタ vs. ドナルド・セラーニ【カナダ・オンタリオ州オタワ/2019年5月4日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・オタワ:アル・アイアキンタ vs. ドナルド・セラーニ【カナダ・オンタリオ州オタワ/2019年5月4日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間9月15日(日)に開催されるUFCファイトナイト・バンクーバーのメインイベントでは、格闘技ファン垂涎(すいぜん)のカードであり、年間最優秀試合有力候補ともっぱらのドナルド・セラーニ(アメリカ)対ジャスティン・ゲイジー(アメリカ)戦が行われる。

ランキングやタイトルを超越、男と男のロマン対決

かたや、“いつ何時、だれとでも(Anywhere, Anyone, Anytime)”の精神でUFC最多試合数(32試合)、最多勝(23勝)、最多フィニッシュ(16回)、最多ファイトボーナス(18回)など数々のレコードを打ち立ててきた”カウボーイ“ことセラーニ(MMA戦績36勝12敗、UFC戦績23勝10敗)。

こなた、“やるか、やられるか(Kill or to be killed)”戦法で、UFC入りして以来5試合で6度のファイトボーナスを獲得している名勝負製造機であり、1分間の平均有効打数8.5発(UFC史上最多記録)を誇る殴り屋中の殴り屋、“ハイライト”ことゲイジー(MMA戦績21勝2敗、UFC戦績3勝2敗)。

近頃では勝ち星にこだわり、タイトル挑戦権にこだわり、チャンピオンになるための道筋や有利な対戦相手を計算するような選手が多い中、セラーニとゲイジーほど、ランキングやタイトルを超越した存在も珍しい。とにかく試合を断らないセラーニは、勝とうが負けようが、ベルトがあろうがなかろうが、ファンは王の帰還のようにリスペクトを込めて迎え入れる。

ゲイジーもまた、勝ち負けに人気が左右されることのない存在だ。何しろ戦績3勝2敗にして、ファイトボーナスを6回受賞しているのだから、勝っても負けても同じように表彰されているわけだ。というのも、ゲイジーの試合自体は基本的にいつも同じ、真っ向勝負の激戦なのであり、結果がたまたま違うだけなのだ。

セラーニ、激闘ファーガソン戦からの復活へ

前回はUFC 238(2019年6月)でトニー・ファーガソンと明日なき戦いを演じたセラーニ。アル・アイアキンタとの5ラウンドにわたる熱闘を制してからわずか35日後、お得意のショートインターバルでライト級トップコンテンダーマッチに臨んだセラーニだったが、その結果は不運なものとなった。

第2ラウンド終了後、呼吸をしやすくすべくセラーニが鼻をかんでしまったところ、その拍子にダメージを受けていた右目が風船のように膨らんでしまい、視界が閉ざされ、試合続行が不可能になったのだ。

実は第2ラウンドの終わりを告げるホーンが鳴った後で、打撃のコンビネーションの最中だったファーガソンのパンチがセラーニの顔面を捉えてしまったことから、目が腫れたのはファーガソンの反則パンチのせいではないのかと、ケージ上は一時騒然となった。しかし、レフェリーがリプレー映像を検証をした結果、ホーン後のパンチはセラーニの目にヒットしたものではなかったと判定され、結局、ファーガソンの有効な攻撃がドクターストップにつながったとして、ファーガソンのTKO勝ちが宣告されたのである

不透明感のある決着に、場内は大ブーイング、オクタゴン上にファンからものが投げ込まれる混乱状況を呈する中、セラーニは「オレはまだまだ戦いたかった。オレは辞めてはいないぞ」と叫んでいる。

セラーニは試合後には病院に直行、長期欠場につながりうる眼窩(がんか)底骨折も案ぜられたが、検査の結果、骨折がなかったことは不幸中の幸いだった。そして今回のセラーニは、前回のフラストレーションを払拭(ふっしょく)すべく、完全燃焼を見せてくれることだろう。

混じりっけなしのバイオレンス、ゲイジー

一方、前回は2019年3月のUFCファイトナイト・フィラデルフィアでエドソン・バルボーザとの対決に臨んだゲイジー。試合開始早々、お互いの得意技である強烈なローキックで激しく打ち合った両者だったが、やがてバルボーザをフェンスに詰めたゲイジーが第1ラウンド2分30秒、右フックでフィニッシュした。2018年8月のジェームス・ビック戦に続いての第1ラウンドノックアウトだった。

試合後のゲイジーは、「MMAは地球上で最もタフなスポーツだ。どんなイヤなヤツにもこれだけはお勧めできないほどタフだが、自分はこれが好きでたまらない。自分はこれをやるために生まれてきた。だから翼がもぎ取られるまで続けるぞ」とコメントしている。

今回のセラーニ戦についてゲイジーは、「混じりっけなしのバイオレンスをお目にかけよう」と意気込みを語っている。「言葉はいらない。カウボーイはあらゆるレコードの持ち主だ。そして自分は100%男だ。100%男というのは、試合が終わった時に100%、自分が気絶しているか、相手が気絶しているという意味だ。そんな2人が戦うんだ」

かつては同門で練習パートナーだったという両者、練習中にセラーニがゲイジーをノックアウトしたことがあったのだという。

「ああ、ノックアウトされたよ、スパーリングでね。当時はまだ、自分はプロデビュー前の小僧だったんじゃないかな。大人になった今、仕返しができることにワクワクしているよ」

ファンタジスタのペレイラ、秒殺王ダフィーも参戦

UFCファイトナイト・バンクーバーにはこの他にも楽しみな見どころが満載だ。中でもミシェル・ペレイラ(ブラジル)のUFC2戦目は注目に値する。前回のダニー・ロバーツ戦では、ケージを駆け上がって殴りかかるショータイム・スーパーマンパンチ、相手の目の前で突然縦回転して放つ大車輪キックなど制御不能な大技を連発、最後は垂直跳び式ヒザ蹴りでロバーツのアゴ端を捉え棒立ちにさせると、顔面に右のストレートをめりこませ、完全失神ノックアウト勝ちを収めている。UFC参戦以前には、MMAの試合なのにムーンサルトアタックやドロップキックも披露してネット上でバズったこともあるペレイラは、自由すぎる戦い方が魅力的なファンタジスタだ。

さらに、かつて日本マットでも活躍したヘビー級ファイター、トッド・ダフィー(アメリカ)の4年ぶりの復帰戦も見逃せない。UFC 102(2009年8月)ではティム・ヘイグをわずか7秒でノックアウトし、ヘビー級最速ノックアウト勝利を記録。キャリア9勝が全てノックアウト勝ちで、その合計時間がわずか9分53秒という秒殺王だ。かつては若きスター候補生だったダフィーも、度重なるケガや病気で欠場が長びき今や33歳になった。ここからのダフィーのキャリア巻き返しに注目したい。

【文 高橋テツヤ】
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