UFCファイトナイト釜山見どころ:“コリアンゾンビ”母国がい旋! レジェンドのエドガーを迎え撃つ

UFCファイトナイト 見どころ
UFCファイトナイト・グリーンビル:ヘナート・モイカノ vs. ジョン・チャンソン【アメリカ・サウスカロライナ州グリーンビル/2019年6月22日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・グリーンビル:ヘナート・モイカノ vs. ジョン・チャンソン【アメリカ・サウスカロライナ州グリーンビル/2019年6月22日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間2019年12月21日(土)に開催されるUFCファイトナイト釜山のメインイベントでは、地元韓国のエースでフェザー級ランキング6位につけるジョン・チャンソンが、同4位のフランキー・エドガー(アメリカ)を迎え撃つフェザー級5回戦が行われる。

ザ・コリアンゾンビ、戴冠への正念場

UFC戦歴7戦(5勝2敗)にして、今回で6試合連続のメインイベントを務め、ファイトボーナス7度受賞の頼れる名勝負製造機のチャンソン。おなじみのニックネーム“ザ・コリアンゾンビ”は、チャンソンの全米デビュー戦となったレナード・ガルシア戦(2010年4月、WEC 48)で、何度倒されてもゆらりと立ち上がり、前進し続ける姿がゾンビそのものだとして自然発生的につけられたものだ。チャンソンも後に、「試合には負けたけれど、あのガルシア戦でコリアンゾンビは誕生したのだと思う。あの試合がなければ今の自分は存在しなかった」とセンセーショナルだったデビュー戦を振り返っている。

今回の対戦相手であるエドガーとは、2018年11月にデンバーで開催されたUFC25周年記念イベントで試合が組まれていた。しかし、エドガーの負傷欠場により、ヤイール・ロドリゲスが代打出場を果たすこととなる。試合はフルラウンドに渡る激しい打撃戦の末、第5ラウンド4分59秒、誰も想像しなかったようなロドリゲスのノールックのバックエルボーがさく裂し、チャンソンが壮絶なノックアウト負けを喫したのだった。勝っても負けても爪痕を残すチャンソンらしいあっぱれな散りっぷりではあったが、ジャッジのスコアカード上では勝っていただけに、悔やみ切れない敗戦となった。

「対戦相手がフランキーからヤイールに変わったときには、試合をするかどうか、かなり悩んだんだ」とチャンソンは振り返っている。「もう何カ月も、自分より背が低く、オーソドックスのレスラーを想定して練習していた。それが、背の高いサウスポーのストライカーに変わったんだから、何から何まで正反対だった」

「試合後には、みっともない姿をさらしてしまったと落ち込んだけれど、試合はほとんど自分が思ったとおりに進めたのだから、これで良しとしようと思うようになった。最後の最後まで、フィニッシュを狙って前に出続けたんだからね」

前回は6月にヘナート・モイカノを第1ラウンド58秒でノックアウト、有効打数16対0という完勝を収め、健在ぶりを示したチャンソンは試合後、「この勝利で、ロドリゲス戦の敗戦を忘れることができたよ」と語っている。内心ではまた負けてしまうのではないかとの恐怖心との戦いもあったのだという。

チャンソンは今回がUFCファイターとして初の母国がい旋となる。入場曲であるクランベリーズの『ゾンビ』が場内に鳴り響けば、観客は熱烈な歓声で母国の英雄を迎え入れることになるだろう。マックス・ホロウェイ長期政権が陥落し、乱世に突入した感のあるフェザー級戦線は今回、チャンソンが勝てば、間違いなく次期挑戦者候補に食い込んでくることになる。チャンソンも「もちろん、目指すはベルトだ。一歩一歩、目標に近づいていると考えている」と意欲的だ。

エドガー、フェザー級有終の美

元ライト級チャンピオンのエドガーは負傷欠場となったブライアン・オルテガの代打として試合2週間前の緊急オファーを受けての登場だ。

前回はUFC 240(2019年7月)でホロウェイの持つフェザー級タイトルに挑戦するも退けられてしまったエドガー。試合後には、「俺は子どもの頃から、身体の大きな相手とケンカをしてきた。身体の大きさなんて関係ないということを、息子に示したかった。でも、(ホロウェイのような)レベルの高い選手が相手になると、身体の大きさも関係してくるということなのかもしれない」と珍しく弱音を漏らしたエドガーは、実は来年1月に階級を下げてバンタム級でデビューすることが決まっていた。

エドガーはチャンソン戦について、「ほんの1年前に戦うはずだった相手。やり残した仕事は片付けたい。対策も検討済みだ。だからこのチャンスに飛びついたけれど、仮に今回勝っても、フェザー級ではすぐにタイトルに挑戦とはならないと思う。だから階級転向はあくまで一時延期にすぎない」と語っている。

キャリア14年、38歳、UFCでの総試合時間7時間37分33秒(UFCレコード)にして、タイトルマッチ以外ではいまだにほとんど負けたことがなく、トップファイターの地位を守り続けているエドガーは、息の長いキャリアの秘けつについて次のように明かしている。

「俺はとても負けず嫌いだ。だからこのスポーツをやっている。練習でも一番にならないといけないから、ペースを落とすということができない。若い選手に、年をとってもこれだけやっているんだということを示さないといけない」

「自分はエゴが強いと思う。あまり我を張らない方がいいという人もいるが、俺に言わせればエゴがあるからまだトップファイターとしてやっていけているんだと思う。自分でも、本当に頑固で、辛抱強くて、粘り強いと思う」

兵役中のチェ・ドゥホも参戦

UFCファイトナイト釜山には地元釜山在住の人気選手、“コリアンスーパーボーイ”ことチェ・ドゥホも出場する。

2014年にUFC入り後、いきなり3連続で第1ラウンドのノックアウト勝ちを収め存在感を示したドゥホ。2016年12月のカブ・スワンソン戦では、惜敗したとはいえUFC史に残る感動の名勝負を展開している。そして前回は2018年1月、ジェレミー・スティーブンスにキャリア初のノックアウト負けを喫し、2連敗となったものの、試合内容はスリリングそのもので、現在4試合連続でファイトボーナスを獲得中だ。

ドゥホは2019年から韓国の徴兵制度のもと、2年間の兵役に服している。ただ兵役中とはいえ、地元での試合の出場に支障はないのだそうだ。「2年間は長いと思うかもしれないけれど、自分にとってはファイターとして成長するための時間だと思っている」とドゥホは語っている。前回、韓国で行われたイベント(2015年11月、ソウル)でもノックアウト勝利でポストファイトボーナスを獲得しているドゥホが地元で成長した姿を披露する。

全14試合中7試合が韓国対世界の構図となっている年内最後のUFCファイトナイト釜山、コリアンヒートを土曜の夜に満喫しよう。

【文 高橋テツヤ】
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