ヴィランテ戦目前のクリス・バーネットに直撃インタビュー! 「日本が恋しいし、日本で戦いたくてたまらない」

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UFC 268:クリス・バーネット【アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク/2021年11月5日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 268:クリス・バーネット【アメリカ・ニューヨーク州ニューヨーク/2021年11月5日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間11月7日(日)に開催するUFC 268でジアン・ヴィランテとのヘビー級マッチに挑むクリス・バーネットに、試合前の心境やUFCデビュー戦、日本に多くいるファンに向けた思いなどを聞いた。

――日本での戦いについて

初めは、誰彼構わず連絡していた。オレの体重は340ポンドで、アメリカには機会がなかったから、フォーラムとかを探して、プロモーターたちにメールを送りつけていた。たぶん本物のアドレスじゃなかったんだろうけどな。それでようやく『Island Fights(アイランド・ファイツ)』のディーン・トゥールに気付いてもらえたんだ。彼は言ったよ、“君はデカいな。それならきっとデカいことをやってくれるだろう。だから、君を採用する”ってね。オレは4勝0敗してヘビー級タイトルを取った。それから彼はオレが日本で戦えるように知り合いを紹介してくれたんだ。

彼らが最初に考えていたのは、オレを“全盛期のボブ・サップ”みたいにすることだった。イノキ・ゲノム・フェデレーション(IGF)に入り、そこでクマの着ぐるみのパフォーマンスを始めたんだ。340ポンドなら、愛される340ポンドになってやろうじゃないかって思ったんだ。そうしたらみんな大喜びさ! たとえ負けても同じくらい反響があった。日本のファンは本当に愛情や応援を惜しみなく与えてくれるんだ。オレのことをのけ者になんてしない。本気を見せている限りは応援してくれる。それでオレは何度も日本に戻った。

――UFCと契約するまでの長い待ち時間について。

アリスター・オーフレイムがUFCの試合前によくオレをトレーニングパートナーに呼んでいたんだ。5度の王者スティペ・ミオシッチも、別の王者と戦う時にオレを呼んだ。だからオレは多くのUFCファイターとトレーニングしていた。最初は――うそはつかない――ただの歩くサンドバッグだった。でも次に行くたびに彼らはこう言うんだ、“なあ、おまえすごく良くなってるよ、なんで契約しないんだ?”って。オレは“あんたらがデイナに話してくれないからだろ!”って答えたよ。

アリスターがテキサスでロイ・ネルソンと戦った時、オレは自分のハギーベアのジャケットを着て最前列に座っていた。そこへデイナが通りかかったから、声を掛けたんだ。“よお、そこの人、オレのことが目に入ってるだろ!”ってね。彼は“君が誰かは知っている。でも、その体重をコントロールしないとダメだな。私に証明してごらん”って言ったんだ。

オレはUFCとの契約が手に入らない限り減量するつもりはなかった。太っててもハッピーだし、それでいいと思っていたんだ。でも、そこから真剣になって、あるアイランド・ファイツの試合で260ポンドになって登場した。それを一目見たディーンに、“よし、これからいくつか電話をかける。準備をしておけよ”って言われた。それからさらに2年かかったけど、オレは常に準備を整えていた。6連勝したんだ。それでようやくUAEで試合するチャンスを得て、そのイベントにはデイナ・ホワイトも来るはずだったんだけど、そこへあのロックダウンさ。彼はオレたちがいるファイトアイランドまでほんの1時間の場所にいるのに、出発することができなかったんだ! “いまさら冗談だろ?!”と思ったよ。めちゃくちゃ気分が落ち込んだ。

でも、こう考えるようにしたんだ。“分かった、今回はだめかもしれない。それでもオレは戦い続ける。人々を喜ばせ続けるんだ。UFCに行かなくても、MMAの戦いを違うレベルに持っていく他の方法があるはずだ”とね。それから文字通り1週間ぐらい後だった、“来週の予定は?”って電話がかかってきたのは。ディーン・トゥールはいつもオレのために大きな役目を果たしてくれた。そしてオレはファースト・ラウンド・マネジメントと契約した。

――念願のUFC入りを果たし、カルト的人気のファイターとなったことについて。

オレはいつも人々を笑顔にするエンターテインメントを重視してきた。自分が金を払って何かを見るなら、楽しみたい。こういう試合って安くないだろ? だから、オレを応援してくれている人がいるのに、いいところを見せられず、がっかりさせるようなことは絶対にしたくない。オレにはひたすらみんなを楽しませ、できることを全部やり尽くす以外の道はないんだ。

陽気で、悪ふざけが好きで、ダンスがうまいオレだから、たくさんのファンがいるのは分かっている。けどそういう“カルト的”なのを望んではいなかったんだ。そういう連中はたいていUFCにはたどり着けないからな。普通はUFCを出た後でカルト的な方向に行くもんだ。オレはそっちを目指していた。でも、契約する前にもう人気者になっちまっていたから、受け入れるしかなかったよ。

――初めてのUFCについて。

初めてのオクタゴンで感じた興奮? オレは常に“強気”なタイプだから、全然そういうのはない。でも、入場のときは・・・初めての試合だったから、バカなことをしたくなかったし、クマのコスチュームも着ていなかったし、緊張していたと思う。何も考えられなかった。どうやって言葉を発したらいいのかも分からない感じさ。プレッシャーがすごかった。普段はうまくプレッシャーに対応できるんだけど、デイナ・ホワイトが“クリス・バーネットがショートノーティスでベン・ロズウェルと対戦することになった”と、自分のことを投稿してくれていたんだ。そうしたら、ESPN MMAがオレのハイライトをあげてくれて、インスタグラムのフォロワーが2日間で1万人も増えた。

“とにかく呼吸しよう、大丈夫。とにかく息さえすればいい”と思った。コーチたちが“おもしろがっているクリスはどんな試合も勝つ。やるべきことをやっているクリスはどんな試合も勝つ”と言ってくれたんだ。自分としては“そうだ、そりゃそうだ。そのクリスを探しに行こう!”って感じだったかな(笑)。精神的にはまったく余裕がなくて、考えられるすべてにおいてそうだった。

家に戻ってからも個人的なことで悩んでいた。父がコーチだったんだけど、2年くらい前に脳梗塞で倒れて、トレーニングをつけてもらえなくなったんだ。大変だった。常に誰かにコントローラーを持っていてもらいたい。オレはただのキャラクター。父がいつもコントローラーを持ってくれていた。コントローラーの電池が切れてしまったら、ただ立っているだけだからね。でも、父はどんどん良くなっている。またボタンを見つけてくれる。

だから、高校時代の友達に、“ねえ、一緒に殴り合わないか?”なんて言って手伝ってもらいながら一人でやっていたんだ(笑)。

それから、ガス欠になった。今は340パウンドで3ラウンド戦える。ベイビーヒョードル(キリル・シデルニコフ、ヒョードル二世の愛称を持つ)とは1ラウンド10分で戦った。それでもガス欠にはならなかった。その後、ベガスに行って、どこかで空気を売っていないかと探したんだ。必要だったから(笑)!

全然、快適じゃなかった。怖かったんだ。自分に向けられる優しさに慣れていなくて、混乱してしまった。ネガティブに考えていたのに、こんなに褒められて、信じられなかった。何よりも、自分を責めていた。ベンに勝つためにやるべきことが何もできなかったから、偽物症候群になっていたんだと思う。

だから、あれが最悪の1週間であり、最高の1週間だった。自分の可能性に気づくことができたからね。

――マディソン・スクエア・ガーデンを舞台に戦うUFC 268の試合について。

ああ、今回はちゃんとレーニングしてきたよ(笑)。オレは完全に別のファイターだ。ヘビー級相手にトレーニングできたし、本物のコーチ、スコット・バレットが付いて、一緒にたくさんのことができた。

今回は今までとは全くの別物になる。自分に自信が持てるように、時間をかけてトレーニングした。本当のことを言ってくれるコーチがいるってのはいいもんだ。彼はまるでオレの父親みたいだよ。父はオレに甘い言葉なんてかけちゃくれない。オレのせいでこのラストネームが恥ずかしいものになったら困るからだろうな(笑)! そういう信頼できる人がコーナーにいてくれるのはうれしいよ。

――対戦相手となるジアン・ヴィランテについて。

彼はファイター中のファイターだ。必死で戦ってやるべきことをやるだろう。

なんだかミームが出回っていてさ。願えば、この試合が4度目のDC(ダニエル・コーミエ)対スティペ(ミオシッチ)戦になるそうだよ(笑)。

オレはいろんなものを復活させるつもりだ。セクシーバに行くぜ! オレがここまで来たのはテコンドーのルーツがあったからだ。オレのようなサイズや身長のヤツがあんなふうにキックするのをみんな見慣れていなかった。スピンも何もかも見せてやるぜ。いろいろ考えて、それは絶対復活させなきゃって決めたんだ。

――UFCでの待遇について。

オレたちの面倒を見るのはデイナ・ホワイトだ。ほら、いわゆるきしる車輪に油を差すってやつさ。いや、オレは何も言っていないし、最初の試合は負けちまったけど、彼らはオレがずっと前からいたみたいによくしてくれたよ。試合以外の時は快適に過ごせている。ファイトマネーのためだけじゃなく、必要なものがないか気を配ってくれる人たちがいるからさ。パフォーマンス・インスティチュート(PI)でのリハビリは必要かとか、なんなら食事の手配もしてくれるし、医療費も払ってくれる。

周りを見れば、彼らもファイターだ。フォレスト・グリフィンがスタッフをしているし、ブロードキャスターも元ファイターたちだ。それによって見るのが10倍は面白くなる。オレはDCの試合解説を聞くのが大好きなんだ。彼は実際にそこにいて、経験してきた人だからね。

UFCは負けたオレによくしてくれている。そういう思考法を持っているんだろうな。“また戻れるし、次はもっと良くなる”ってやつだ。素晴らしいと思うよ。

――UFCで活躍するテコンドー系ファイターについて。

ポール・フェルダーだね。オレはポールが大好きなんだ! 彼とインタビューをしたことがあって、かなりいい流れだった。前に、彼がスピニングインサイドキックをしている写真を投稿していたんだけど、そのときは“おいおい! ちょっと待ってくれよ! ありえねぇ!”と思ったけどね。基本的にはクールな人だよ。

ヤイール・ロドリゲスとは、かなり前に、ジャクソン・ウインクで彼のトレーニングを見る機会があった。彼のダブルスは間違いなくテコンドーだ。

――はまっているポケモンGOについて。

今日はセントラルパークを見つけるのにポケモン(GO)を使った! 公園で3匹捕まえてきた。スポンサーになってくれないかな。あ、でも、オレの名前をもじったポケモンは作ってほしくない。わざと意味もなく、たたいてくるやつが出てくるからな。オレの名前でトレーナーを作って欲しい!

――日本のファンにメッセージ。

日本のファンのみんな、UFCがいつ戻れるかは分からないけれど、自分は(日本の)カードに出た方がいいって思っていた。日本が恋しいし、日本で戦いたくてたまらない。日本の人たちや観客は本当に最高だからね。大好きさ。
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