UFC月間レポート:2023年3月

UFC 試合レポート
UFC 286:ジャスティン・ゲイジー vs. ラファエル・フィジエフ【イギリス・ロンドン/2023年3月18日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 286:ジャスティン・ゲイジー vs. ラファエル・フィジエフ【イギリス・ロンドン/2023年3月18日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images)】
4つのイベント、3つのチャンピオンシップ戦、2つのペイパービューイベントが行われた3月。この月の健闘を称えるために見比べるべきアクションが満載だった。

3月に傑出したパフォーマンスを見せた者の中には、大きな波を起こしたニューカマーや強い印象を与え続ける新進気鋭の才能たち、そして、ミスを見逃さなかった新チャンピオンがいて、雲を突くほどの期待をさらに超えてみせた試合もあった。

3月に活躍したファイターや、この月を代表するパフォーマンスをご紹介。

ブレイクアウト・パフォーマンス:マリオ・バティスタ


バンタム級で際立った活躍をするのは難しい。ひと月に行われた4つのイベント中、2つのメインイベントがバンタム級トップクラスの選手たちの対決、という状況でそれを成し遂げるのは、さらに難しいことだ。それをやってのけたバティスタの奮闘を称えたい。

MMA Lab所属のバティスタはラスベガスでグイド・カネッティを倒して連勝記録を4に伸ばし、3回連続で第1ラウンドでのサブミッション勝ちをマークした。ショートノーティスで受けたUFCデビュー戦でコーリー・サンドヘイゲンに敗北を喫したバティスタだが、その後の戦績は6勝1敗となっている。

最初はカネッティの方が攻めているように見えていたものの、バティスタはどの攻撃も喰らわず、素早くバトルのコントロールを握っていく。バティスタがアルゼンチンから来た対戦相手とは別レベルであることが分かるのに、時間はかからなかった。距離を縮めたバティスタは30秒が経過していない段階でカネッティをカンバスに押しつけ、立ち上がってからは高い位置からのテイクダウンによって素早くカネッティの背中に回る。

ベテランをカンバスに倒そうとして失敗に終わった後、バティスタはスープレックスでカネッティを地面に叩きつけている。体勢を立て直そうと試みるカネッティの動きに合わせて、そのままリアネイキドチョークを決めた。

才能ある選手が多く存在するバンタム級でトップ15に入るのは難しい。しかし、バティスタはそこにやってきた最新の波であり、これから6カ月で名前の横にナンバーが入っている選手たちと対戦することになるだろう。

サブミッション・オブ・ザ・マンス:ワレンチナ・シェフチェンコをサブミットしたアレクサ・グラッソ(UFC 285)


支配的だったチャンピオンを王座から降ろしてUFCのタイトルを手にしたとなれば、その月のベストサブミッションに選ばれる資格は十分にある。しかし、今回UFC 285でシェフチェンコを仕留めたグラッソのサブミッションが選ばれた理由には“政権交代”以上の要素がある。

アスリートや彼らの戦いについてあまり掘り下げられてこなかった点の一つに、ちょっとした機を捉えてそれを最大に生かしていく能力がある。今何が起こっているかに注意を払い、何をすべきかを正確に把握するための判断材料をそろえ、ただちにそれを実行する力だ。

グラッソは2022年3月にジョアン・ウッドを倒したときにそれを見せ、ベテランのウッドがフェンスでバウンドしたところに飛びついていた。3月のはじめ、グラッソはラスベガスでも同じことをやっている。シェフチェンコがスピニングバックキックを繰り出した瞬間、グラッソがシェフチェンコの腰に腕を回し、背中に乗り上げ、少しの調整の後にフィニッシュを決めたのだ。

最高レベルの戦いでは、ちょっとしたミスやほんの小さなチャンスがきっかけで勝負が決することがしばしばある。グラッソがUFC女子フライ級チャンピオンになったのは、まさにそんな戦いからだった。

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:サム・パターソンを倒したヤナル・アシュモズ(UFC 286)


アシュモズが右腕を振った瞬間にパターソンが倒れたため、そのショットがパターソンを捉えたと考えた者もいるだろう。しかし、実際はそうではなかった。

ローキックを受けたアシュモズは、右に視線をやりつつ、パターソンの足を捕まえてそのバランスを崩している。だが、相手を完全に崩したのはロケットのように繰り出された左腕であり、それによってパターソンは伐採されたセコイアのようにゆっくりとカンバスへと倒れていった。捕まえた足を離したアシュモズは左フックをパターソンのこめかみにたたき込み、そこからは理論通りの展開だった。

見事なノックアウトとフィニッシュであり、イスラエル出身のライト級ファイターはこれ以上ない方法で自らをUFCの観客に自己紹介している。

ファイト・オブ・ザ・マンス:ジャスティン・ゲイジー vs. ラファエル・フィジエフ(UFC 286)


他に選択肢があっただろうか?

この対戦が決まった際、ゲイジーとフィジエフがオクタゴンに上るときが近づく前から、UFC 286の圧倒的な敢闘試合賞(ファイト・オブ・ザ・ナイト)候補が登場しただけではなく、ファイト・オブ・ザ・イヤーの有力候補が出てきたことすらも明白だった。それは単純に、2人の評判と戦歴が理由だ。

ロンドンにわたり、O2アリーナに設置されたケージへと足を踏み入れた2人は、ただでさえ高い周囲の期待を上回る熱戦によって、メインイベントでレオン・エドワーズがタイトル防衛を成功させるための舞台を整えている。

『UFCstats.com』によればゲイジーとフィジエフは合わせて200の有効打を交わしており、前者の有効打は60%に達し、後者はそれとわずか3%差だった。2人は距離を取った状態でダイナミックな攻防を演じ、クリンチで相手を痛めつけ、動き、お互いの頭を揺さぶり続ける。15分の超コンペティティブなバトルは見どころ満載で、2023年が終わるときにはファイト・オブ・ザ・イヤーに選ばれることが運命づけられているかのようだった。

ゲイジーはこれでUFC11試合中、7試合で敢闘試合賞に選ばれたことになる。ファイトボーナスすべてを合わせると、11回の受賞だ。フィジエフは過去6試合のすべてでファイトボーナスを受けている。

エキサイトメントを保証するファイター2人を一緒にオクタゴンに送り込めば、対戦カードが発表された瞬間から誰もが電撃的な展開を予想するような試合が出来上がるということだ。
Facebook X LINE

オクタゴンガール
オフィシャルショップ
FANTASY