UFC月間レポート: 2023年4月

UFC
UFC 287:アレックス・ペレイラ vs. イズラエル・アデサニヤ【アメリカ・フロリダ州マイアミ/2023年4月8日(Photo by Cooper Neill/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 287:アレックス・ペレイラ vs. イズラエル・アデサニヤ【アメリカ・フロリダ州マイアミ/2023年4月8日(Photo by Cooper Neill/Zuffa LLC via Getty Images)】
気付けば、オクタゴンの中の1カ月がまた過ぎていった。暦は4月から5月に変わり、季節は春を過ぎ、これで2023年の3分の1が終わったことになる。

4月は48組のファイターがケージに入り、そのちょうど半分の試合がフィニッシュで決まった。17試合がノックアウト、6試合がサブミッションで終わり、1試合がノーコンテストとなっている。残りの半分はハイレベルのマッチメイクとUFCのランクに行き渡る競争力の高さを際立たせるかのような質の高い拮抗(きっこう)した戦いが繰り広げられた。

元王者たちが輝き、屈強な者たちが去り、新顔が魅せた。どの階級、どの称号にも特筆に値する努力を見せた複数のコンペティターがいた。

この夏に興味深く、激しい争いが展開される下地が整いつつあるが、その前に4月のベストバウトを最新の月間レポートで振り返ってみよう。

ブレイクアウト・パフォーマンス:クリスチャン・ロドリゲス


どんな状況下でも、ファンとオブザーバーはUFC 287の前に25歳のロドリゲスのことを耳にしていたはずだ。1つ上の階級で今や勢いに乗るジョナサン・ピアースとデビュー戦で戦った期待の星は、バンタム級に戻ってから第1ラウンド1本勝ちを決めている。

しかし、マイアミでの相手が18歳の有望株であるラウル・ロザスJr.に決まったことから、メインカード初戦でのロドリゲスはすっかりB面扱いされ、4月最初のイベントでロザスJr.の反対側に立つ男としか言及されなくなっていた。

第1ラウンドで“エル・ニーニョ・プロブレマ”ことロザスJr.の猛烈な攻撃をしのぐ冷静さを見せたルーファスポーツ所属のロドリゲスは、第2ラウンドに入ると残りのアクションを全て支配し、ユナニマス判定で勝利して話題のデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ卒業生を食い止めた。

わずかに計量オーバーしてしまったことが玉にきずだったが、それ以外はロドリゲスにとって素晴らしい週末で、UFC 287まで9試合しかしていないにもかかわらず、彼は印象的なレベルの落ち着きと冷静さを見せた。UFCキャリアの浅い若手ファイターにはなかなか見られないことだ。彼は自身が出場したコンテンダーシリーズで注目のファイターと評されて勝利したものの、契約には至らず。以来ピアースへの果敢な挑戦や階級内での2度の勝利などを通じてそうした評価が正しかったことを証明した。

バンタム級には間違いなく全てのレベルで優秀なファイターがそろっている。この先には危険な道が待ち受けているが、技術にたけ、基礎がしっかりしていることはロドリゲスにとってプラスになるはずだ。このまま辛抱強く前進を続けられれば、いずれはバンタム級でトップ15ファイターの1人になることができるかもしれない。

サブミッション・オブ・ザ・マンス:ステファニー・エッガーに1本勝ちしたイリーナ・アレクシーバ(UFCファイトナイト・ラスベガス72)


月の最後のイベントが始まるまで候補となるサブミッションは2つしかなかったが、ラスベガス72では6つのフィニッシュのうち4つがサブミッションで決まり、母数が増えた。

しかし本当のところ、エッガーをタップさせたアレクシーバの技以外にこの称号にふさわしいものはなかったと言える。

ニーバーはUFCでそれほど頻繁に見られるものではなく、一般的に言って片方のファイターが足を長く相手に絡めすぎたために成り行きでそうなることが多い。クラウディオ・プエレスを除き、「今夜はニーバーを決めてやる」と考えてオクタゴンに入る者はほとんどいないはずだ。だが、短くとも消耗の激しい戦いとなったUFC APEXでの試合で、アレクシーバは第1ラウンド序盤にエッガーの左脚をアタックした時から間違いなくそれを考えていた。

エッガーは距離を縮めた後でスクランブルに持ち込み、アレクシーバのバックに回っていた。だが彼女の胴体に手を回した直後、アレクシーバが回転し、脚を締め上げた。放送中に言及されたようにサンボのバックグラウンドを持つ彼女らしいスマートなセットアップだった。ポジションを調整し、エッガーが自由に動こうとしたところで、アレクシーバは回転して脚を取り、タップを勝ち取った。

“ロシアン・ロンダ”は個性の固まりで、オクタゴンの中ではちょっとした野生児だ。だがこれは、グラップリングに取り組むまでは基礎やスタンドでのテクニックに興味を示さず、乱闘を切望しながらデビュー戦に臨んだファイターによるシャープでテクニカルなフィニッシュだった。プロモーションの新顔として印象的な勝利であり、アンコールで登場したアレクシーバが今度は何を見せてくれるかと人々が興味津々で待つようなパフォーマンスだった。

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:アレックス・ペレイラをノックアウトしたイズラエル・アデサニヤ(UFC 287)


強烈なニーでそれぞれの対戦相手をノックアウトしたブランドン・ロイバルとエドソン・バルボーザにも敬意を表しつつ、“ザ・ラスト・スタイルベンダー”ことアデサニヤがミドル級タイトルを奪還し、ペレイラにリベンジを果たしたUFC 287のメインイベントをこの称号から外すことはとてもできなかった。

このフィニッシュをここまで特別にしたのは、アデサニヤがペレイラを誘って打撃戦に巻き込み、右の一撃を打ち込む隙を見つけ、そこから試合を終わらせる一連の流れを作ったことだ。それらはどれも2人のオクタゴンでの最初の対戦を思い起こさせるものだった。

昨年秋にマディソン・スクエア・ガーデンで拳を合わせた際はペレイラがアデサニヤをフェンスに追い込んで連打を放ち、王者を圧倒するクリーンなヒットでTKO勝ちした。今回はアデサニヤが彼を同様のポジションに置き、フェンスに追い込んでパンチを打ち込み、ペレイラが前に出て攻撃するように仕掛けた。ペレイラは服従を強いられた。

前に進み出たペレイラはアデサニヤを打ちのめそうとパンチを連打し、大きなニーはわずかにそれたが、重い左フックを繰り出したところで挑戦者アデサニヤがその内側から右パンチを放った。それが王者の顎をとらえ、彼はその場で硬直。次の右パンチでペレイラはキャンバスに倒れ、戦いは表面上決着した。

王は倒れた。王よ、永遠なれ。

ファイト・オブ・ザ・マンス:マックス・ホロウェイ vs. アーノルド・アレン(UFCファイトナイト・カンザスシティ)


両者についてわれわれはこの試合で多くを学んだ。1人が未来の殿堂入りファイターとされる元王者であり、もう1人が9勝0敗でオクタゴンにやってきたことを思えばおかしな話に聞こえるが、事実だ。

ホロウェイは昨年アレキサンダー・ボルカノフスキーに敗れたものの、今でもフェザー級のトップクラスであるところを証明し、タフさではUFCのノンタイトルホルダーの中で誰にも負けないことを示した。彼はトレードマークとも言えるボリュームを抑えて、デンジャラスでパワフルなアレンに対してより慎重でテクニカルなアプローチを取り、大部分で成功した。ラウンドごとに徐々に相手との距離を広げていき、アレンが第5ラウンドで攻め始めるのを待った。

スコアカードでは残念ながら敗者の側だったが、アレンはフェザー級のエリートたちに備わっているものが自分にも備わっていることを示した。彼がトップ10のファイターと第1ラウンドを超えて戦ったのは初めてであり、最初の4ラウンドをよく持ちこたえて第5ラウンドへと進んだ。

今すぐにタイトル挑戦の機会を与えられることはなさそうだが、アレンを倒したことで階級屈指のコンテンダーたるホロウェイの地位は強化された。一方、“ブレスト”への敗北は決してアレンが顔を伏せなければならないようなことではない。負けるのは悔しい。だが、元王者への敗北ならばまだ受け止められる痛みだ。

今年はすでにクレイジーな試合も多く、もっと大きなものが懸かった試合も多かった。それでもこれは2人の傑出したファイターによる優れたバトルであり、7月と12月のトップ10リストにも掲載されることだろう。

そうでなければ、次の8カ月がとてつもなく奇想天外な展開だったということになる。
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