UFC月間レポート:2023年8月

UFC 試合レポート
UFC 292:アルジャメイン・スターリング vs. ショーン・オマリー【アメリカ・マサチューセッツ州ボストン/2023年8月19日(Photo by Cooper Neill/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 292:アルジャメイン・スターリング vs. ショーン・オマリー【アメリカ・マサチューセッツ州ボストン/2023年8月19日(Photo by Cooper Neill/Zuffa LLC via Getty Images)】
1カ月の間にオクタゴンで起こったアクションからベストパフォーマンスのいくつかを紹介するUFC月間レポート。見事なフィニッシュやブレイクしたコンペティター、才能ある新人たちに光を当てるものだ。

5つのイベントが行われた7月が終わり、8月にもオクタゴンでのバトルが4回実施された。UFCはナッシュビル、ボストン、シンガポールを訪れており、最後の2つの間にはラスベガスにあるAPEXでのホームゲームが行われている。

タイトルが移り、伝説が去り、ここで議論すべきいくつかの歴史的な試みがあり、多くの新人や新進気鋭のファイターたちが今後も注目すべき成果を残した、興味深い1カ月だった。

UFCのケージで繰り広げられた試合のちょうど半分がフィニッシュで決まっており、中でもUFC APEXを舞台とした唯一のショーのプレリムは、すべてがフィニッシュで決着。また、何人かのよく知られた名前がビッグパフォーマンスを見せた。その筆頭がシンガポールでマックス・ホロウェイがジョン・チャンソンを相手にもぎとった、傑出した、かつエモーショナルな勝利だ。

夏の最後の1カ月は見どころある試合に満ちていた。その中でも特に見る者の心を打った選手と試合をご紹介しよう。

ブレイクアウト・パフォーマンス:ディエゴ・ロペス



今年前半に無敗のフェザー級ランカー、モフサル・エフロエフとの対戦を試合直前になって引き受け、ロシアの逸材であるエフロエフを相手に健闘を見せたことで、ロペスの株は急騰した。

しかし、難しいのはそうなった後だ。意外性や準備不足といった要素が結果の大きな要因ではなかったとどうすれば分かるのだろう? 加えて、ロペスにはあの試合で大きな期待はされていなかった。彼は完全に圧倒されるだろうというのが大方の予想だった。しかし、久しぶりの参戦となるギャビン・タッカーとの対戦を前に、彼には初めてのフルキャンプを終えてきたという自負があった。

果たしてロペスはアンコールにどう応えたのか?

下腹部に入った強烈な蹴りでしばらくもだえ苦しんだロペスだったが、再び立ち上がって取り組みを開始し、タッカーがシングルレッグを狙ったところですかさずトライアングルチョークに飛び込み、そこから見事なアームバーに移行して、開始からわずか98秒で試合を終わらせた。

これによって彼のエフロエフへのパフォーマンスが、スキル、才能、そして彼がケージにもたらすデンジャラスなスタイルに基づくものだったということが鮮明になった。ロペスはあっという間に――そしてなるべくして――ファンの人気を勝ち取った。今年前半に見せた健闘と今回の勝利によって、ランク入りも近いはずであり、次もまた名のある相手との対戦が組まれるだろう。

特別賞:アスー・アルマバイエフ、マーカス・マクギー、アイザック・ダルガリアン、ダモン・ブラックシア、ルアナ・サントス、ナタリア・シウバ、カリーニ・シウバ、ギャレット・アームフィールド、ビリー・ゴフ

サブミッション・オブ・ザ・マンス:ホゼ・ジョンソンに1本勝ちしたダモン・ブラックシア(UFCファイトナイト・ラスベガス78)



この1カ月はいくつかの素晴らしい1本勝ちが生まれた。階級的な重要性においても、試合内での価値においても、また単純なかっこよさにおいても、ロペスのタッカーへのトライアングルアームバー、タティアナ・スアレスのジェシカ・アンドラージへのギロチン、マルティン・ブダイのジョシュ・パリジアンへのキムラなど、優れたものは多数あったが、UFC史上3度目のツイスターサブミッションを決めたとあっては、サブミッション・オブ・ザ・マンス賞を与えずにはいられない。

デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ出身のジョンソンが自分のポジションの危うさに気付くより早く、ブラックシアは最初のラウンドで体勢を整え、ロックアップして、このレアなフィニッシュを勝ち取った。確かに、彼らは普段ケージ内でツイスターへの防御を強いられることはないし、ジム内でもめったに経験することはないはずだ。しかし、解説陣がそれに気づき、ジョンソンが反応する前に、ブラックシアは彼の胴体をぬれた洗濯物を絞るようにねじり始めていた。

地元で圧倒的な強さを見せながらもUFC最初の2試合で勝ち星がなかったブラックシアにとって、これは素晴らしいフィニッシュだった。今年前半のルアン・ラセルダ戦で初勝利を飾り、ジョンソン相手に2連勝した彼は、この7日後にボストンで開催されたUFC 292でバンタム級を上昇中のマリオ・バティスタと対戦して善戦した。

“ザ・モンスター”は階級内で誰にとっても危険な対戦相手であり、このパフォーマンスによってそれは誰の目にも明らかとなったはずだ。

特別賞:タティアナ・スアレス対ジェシカ・アンドラージ、ディエゴ・ロペス対ギャビン・タッカー、カールストン・ハリス対ジェレマイア・ウェルズ、ヤスミン・ルシンド対ポリアナ・ヴィアナ、マルティン・ブダイ対ジョシュ・パリジアン、カート・ホロボー対オースティン・ハバード、カリーニ・シウバ対マリナ・モロズ

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:アルジャメイン・スターリングをノックアウトしたショーン・オマリー(UFC 292)



ショーン・オマリーと、バンタム級で最高の選手たちと戦う能力についてのあらゆる疑問は、ボストンで解消された。“シュガー”ことオマリーは正確な右パンチとそれに続く数撃でアルジャメイン・スターリングを仕留めている。

公式にはテクニカルノックアウトとされているが、ここではこの試合が選ばれるべきだろう。バンタム級のトップで交代劇が起こっただけではなく、元からきわめて高かったオマリーの評判が、新たな高みに達した試合だった。

実に見事なフィニッシュでもあった。

スターリングは前進し、左手で攻撃するも、オマリーはそれを見ていた。退いたオマリーが素早く繰り出した右腕がヒットし、チャンピオンはカンバスに崩れる。誰もがダウンするようなクリーンで鮮やかな一撃であり、続く打撃があっという間に試合を終わらせた。

そういった要素から、新バンタム級王者は一段と際立ち、危険な存在になっている。正確な打撃、巧みなフットワーク、素早くパワフルな腕。それらがスムースに混ざり合っているのがオマリーだ。こういったカウンターを決めてきた選手は他にもいるし、オマリーが最後というわけでもない。しかし、オマリーの鋭さはとてつもなく印象的であり、決して過小評価することはできない。

スターリングが近づくや否や、オマリーは打撃の準備を整えていた。“ファンクマスター”の二つ名を持つスターリングにこの時のことを尋ねれば、きっと重大なミスを犯したことは分かっていたと話すだろう。オマリーがボディへのフロントキックを当てると、スターリングは弧を描く腕と共に突進し--ドカン。下に向かって繰り出された腕が完ぺきに顎をとらえ、新チャンピオンが誕生した。

王冠を頂いた頭は重く、トップに立ち続けることはそこにたどり着くことより難しい。それでもオマリーは、このパフォーマンスによって疑いを向け続けてきた者たちを黙らせた。UFCバンタム級王者となったオマリーがこれから何を見せてくれるか、楽しみだ。

特別賞:カリル・ラウントリーJr.対クリス・ドーカス、マーカス・マクギー対J.P.ベイズ、マックス・ホロウェイ対ジョン・チャンソン、ワルド・コルテス・アコスタ対ルーカス・ブジェスキー

ファイト・オブ・ザ・マンス:ブラッド・カトーナ vs. コーディ・ギブソン(UFC 292)



ジ・アルティメット・ファイター(TUF)シーズン31のライト級決勝戦がアクションに満ちた試合になるのは十分に予測できた。単純に、カート・ホロボーはプレッシャーファイターで、フィニッシュを決めていく傾向があるためであり、実際、ホロボーはオースティン・ハバードに1本勝ちを決めている。

しかしながら、ブラッド・カトーナとコーディ・ギブソンが15分にわたって立ち続け、最後まで強烈に打ちあったのは予想外だった。

3ラウンド分の有効打は2人合わせて324回であり――カトーナの有効打率は51%、ギブソンはそれを10%上回っていた――、一進一退の展開になったのに加え、試合の大部分でカトーナが自らの血にまみれていたこともあり、かなり見応えのある試合だった。

ギブソンは開始直後から積極的に動き、カナダ出身ながらもアイルランド・ダブリンを拠点とするカトーナにバトルをしかけていく。カトーナは側頭部に作った切り傷から流れる血ですべてを赤く染めつつ、ギブソンの攻撃をすべて受けとめて反撃へ。試合を通じて違いとなっていたのが、カトーナのスタミナとコンディショニングだ。カトーナの方がわずかに優れたペースを維持し、試合が進むにつれ、特に終盤で強いパンチを出していた。

ユナニマス判定勝ちを収めた31歳のカトーナは、ジ・アルティメット・ファイターで2回優勝した初めての選手になった。シーズン31バンタム級王者になったカトーナは、以前にシーズン27フェザー級のタイトルも獲得している。

Spike TVで放送されたグリフィン対ボナー(TUF 1)ほど、このプロモーションにとって重要な試合はもうないだろうが、この対戦はそれに迫るくらいの試合であり、12月にファイト・オブ・ザ・イヤーの議論に含まれるのは間違いないだろう。

特別賞:ビリー・クアランティーロ対デイモン・ジャクソン、ギガ・チカゼ対アレックス・カサレス
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