UFC月間レポート:2023年11月

UFC PPV UFCファイトナイト 試合レポート
1カ月の間にオクタゴンで起こったアクションからベストパフォーマンスのいくつかを紹介するUFC月間レポート。見事なフィニッシュやブレイクしたコンペティター、才能ある新人たちに光を当てるものだ。

1カ月、2カ国、3つのイベント。2023年のUFCシーズンの締めくくりが近づいた11月には、ここで取り上げるべき選択肢が豊富だった。

オクタゴンは11月にサンパウロへ再上陸し、マディソン・スクエア・ガーデンに寄港した後、ホームであるラスベガスへと向かった。その中で八角形のフィールドに上がった男女たちは、3つのイベントと37の試合を通じて、激しいアクションと記憶に残る瞬間を繰り広げている。

これらの試合のうちの過半数が、フルラウンドを戦い抜かずに決着した。UFC 295のメインカード全試合や、UFC APEXのメインカード6試合中5試合がそれにあたる。今年これまでの熱戦を確実に上回ると言えるバトルはなかったかもしれないが、トップ10には入りそうなパフォーマンスはあった。

そんな11月の名パフォーマンスを振り返ってみよう。

ブレイクアウト・パフォーマンス:ブノワ・サン・デニ(UFC 295)

ここしばらくの間、上昇気流に乗っているブノワ・サン・デニは、4連勝をすべてフィニッシュで決め、マット・フレボラとニューヨークシティで対決するUFC 295のメインカードに臨んだ。地元出身のフレボラを91秒で倒したのは、今月のブレイクアウト・パフォーマンスに選ぶのに十分な活躍だった。

フランス出身で28歳のサン・デニがオクタゴンに立つと、そこには驚異的なライト級ファイターが現れる。瞬時に、かつ、執拗に前に出るサン・デニは、自分の望む場所に進むため、もしくは、自分自身の打撃を当てるためなら、一撃や二撃を食らうことをまったく意に介さない。そのことはフレボラ戦に至るまでの2023年の試合で、イスマエル・ボンフィムやティアゴ・モイゼスを下したときに証明されていた。その戦いぶりが、MSGでフレボラを相手に、再び発揮されたというわけだ。

この試合に幕を引くキックが当たる直前に、フレボラがどれだけ猛然と逃げていたかを見てほしい。彼の動きには、段違いの緊迫感があった。それは、試合が始まってすぐの段階で、フレボラがサン・デニのフィジカルと強さを感じとり、リセットを必要としていたからだ。

最後のキックはゴージャスだった。しかし、サン・デニの名がここに上がっている要因としては、この試合によって今年の戦績を3勝0敗としたこと、また、ライト級に移行してから5勝0敗をマークし、いまだ第3ラウンドを経験していないことがある。この勝利によってランキング内に浮上したサン・デニが、試合後インタビューで語ったように、今後チャンピオンになるのかどうかは、まだ分からない。ただ、2024年に喜んで彼と戦おうとするライト級ファイターがそう多くないことは確実だ。

特別賞:ビトー・ペトリーノ、エルブス・ブレナー、ジェカ・サラギ、ジョアンダーソン・ブリート、ペイトン・タルボット、チェイス・フーパー

サブミッション・オブ・ザ・マンス:ジョナサン・ピアースに1本勝ちしたジョアンダーソン・ブリート(UFCファイトナイト・ラスベガス82)

「なら起き上がって何かやってみろよ! ほら! 立ってやってみやがれ!」

トップポジションから攻撃を繰り出していたジョナサン・ピアースが、ジョアンダーソン・ブリートに向かって放った言葉がそれだった。ブラジルからやってきたブリートが、レフェリーに後頭部へのショットについて訴えたピアースをあざけったのを受けての言葉だった。

今にして思えば、黙ってブリートの顔面を打ち続けた方が良かったのかもしれない。なぜなら、デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズが送り出したファイターであるブリートが、実際に立ち上がり、何かをやって見せたからだ。

こういったやり取りは第2ラウンドの中盤に起こったもので、このラウンドはピアースがそのグラップリングによってリードしていた。それから90秒を待たずしてピアースはニンジャチョークにからめ取られ、顔を苦痛に歪ませてタップしている。フルララウンドまでいかずに勝利をつかみ取ったブリートは、デリック・ルイス流にオクタゴンの中央で自らのファイトショーツを足元に落とした。

ブリートのフィニッシュが称賛されるのは、それが、彼がいかに危険か、そして、どんな時でもドンピシャの反撃を打てるかを示したからだ。それまで3試合のすべてを第1ラウンドで決めてきた28歳のブリートは、立ち上がってチョークを決めるその瞬間まで、研ぎ澄まされた状態を維持し続けた。

ブリートが締め上げた瞬間、試合は終わった。たとえ、ピアースからタップを引き出すのにあと5秒がかかっていたにしろ、それは変わらない。

4連勝を決めてピアースの5連勝を阻止した“トゥバラン”ことブリートが次にいつオクタゴンに戻ってくるとしても、相手は強敵になっていることだろう。

特別賞:マテウシュ・レベツキ対ルーズベルト・ロバーツ、ムイクティベク・オロルバイ対ウロシュ・メディチ、チェイス・フーパー対ジョーダン・レビット、ブレンダン・アレン vs. ポール・クレイグ

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:セルゲイ・パブロビッチをノックアウトしたトム・アスピナル(UFC 295)

ヘビー級タイトルの決定打になるノックアウトは最高だ。6試合連続で対戦相手を第1ラウンドで、しかも70秒以内で仕留めてきたファイターのパワーショットをさばいてからの一撃は、文句なしで11月のベストノックアウトだった。この一撃によって、アスピナルは暫定王座を手にしている。

技術的な見地からすると、見事な出来栄えだった。アスピナルはフットワークとスピードを生かしてパブロビッチのビッグショットを防ぎ、カウンターを繰り出していく。1発目で相手の平衡感覚を奪ったアスピナルは、2発目でパブロビッチを沈めた。

一方、この攻撃の前に、アスピナルがパブロビッチのクリーンショットを受けていることも特筆すべきだろう。パブロビッチのミサイルを食らった他のファイターたちは、少なくともアプローチを再考することを強いられてきた。アスピナルはシンプルにあごを調整し、再び前進してパブロビッチを仕留めた。

このノックアウトがこの場に選ばれたもうひとつの理由が、ヘビー級のトップに交代劇を起こしたものだという点だ。

アスピナルは比類ない才能の持ち主であり、UFCで8戦中7勝をマーク。唯一の敗北は、非接触による膝の負傷によるものだった。アスピナルの動きは卓越しており、素早く、なめらかであり、あらゆる面でのスキルを持ち合わせている。アスピナルにはこの階級のどんな相手でも倒せるだけのパワーと正確性がある。カンバスで大暴れしたいなら、アスピナルは優秀なグラップラーでもあり、ブラジリアン柔術の黒帯を持っている。

ジョン・ジョーンズがケガから回復し、スティペ・ミオシッチとの対戦を予定している今、これから数カ月で戦況がどうなっていくかは誰にも分からない。それでも、一つ確かなことがある。アスピナルは有力なコンテンダーであり、長い間そうであり続ける可能性を秘めているファイターだ。

特別賞:ビトー・ペトリーノ対モデスタス・ブカウスカス、エルブス・ブレナー対カイナン・クルシェウスキー、ジャレッド・ゴードン対マルク・マドセン、ディエゴ・ロペス対パット・サバティーニ、ブノワ・サン・デニ対マット・フレボラ、ジェシカ・アンドラージ対マッケンジー・ダーン、ジェカ・サラギ対ルーカス・アレクサンダー

ファイト・オブ・ザ・マンス:リナト・ファクレトディノフ vs. エリゼウ・ザレスキ・ドス・サントス(UFCファイトナイト・サンパウロ)

11月に2回にあった引き分けのうちの最初の1つが、リナト・ファクレトディノフとエリゼウ・ザレスキ・ドス・サントスによる見どころ満載のウェルター級マッチだった。

試合開始から20秒も経たないところで、ファクレトディノフがブラジルから来たドス・サントスにクリーンな右パンチを浴びせ、相手をカンバスに崩してフィニッシュを決めようとする。第1ラウンドが残り2分を切った段階では、ドス・サントスが打撃数で39対2と押されており、ファクレトディノフがさらに圧をかけていた。ドス・サントスは何とかこの状況を耐え抜く。第2ラウンドはより接戦になっていたものの、最終ラウンドが始まった時点では、2対0でファクレトディノフが優勢だった。

しかし、ファクレトディノフの最初の2ラウンドでのペースが次第に落ち、第3ラウンドに入ってすぐにドス・サントスがテイクダウンの試みを阻止したときに、流れが変わるのが感じられた。ドス・サントスはその後もうまくテイクダウンを防ぎ続け、相手の隙をうかがい、ニーでボディを狙って、ファクレトディノフの燃料が尽きかけたところでジャブを繰り出していく。

残り30秒となったとき、ドス・サントスがファクレトディノフの腹部にフロントキックをたたき込む。それ以降、ファクレトディノフは必死にしがみつくモードに入り、ドス・サントスはフィニッシュのチャンスを追い求めた。

ある意味シンメトリーなバトルであり、序盤と終盤で異なるファイターがフィニッシュを決めようとしていた。その間の時間では、多くの競り合いや接戦が見られている。スコアが読み上げられたとき、そして、マジョリティードローが宣言された――ジャッジの1人は29対28でドス・サントスだとしていた――とき、両名とも結果に満足しているように見えた。

特別賞:ニコラス・ダルビー vs. ガブリエル・ボンフィム、ジョシュア・ヴァン vs. ケビン・ボルハス、ナジム・サディコフ vs. ヴィチェスラフ・ボルシェフ

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