UFC 238見どころ:2大タイトルマッチに大注目の一戦、豪華カードに酔いしれる!

UFC PPV 見どころ
UFCファイトナイト・ブルックリン:ヘンリー・セフード vs. T.J.ディラショー【アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン/2019年1月19日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・ブルックリン:ヘンリー・セフード vs. T.J.ディラショー【アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン/2019年1月19日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間6月9日(日)に開催されるUFC 238のメインイベントではT.J.ディラショーが返上して空位となったバンタム級王座をめぐって、現フライ級王者ヘンリー・セフード(アメリカ)対マルロン・モラエス(ブラジル)の王者決定戦が行われる。

わが世の春のセフードに死角はあるのか

UFCフライ級の初代王者にして、11回連続防衛の絶対王者デメトリアス・ジョンソンを2018年8月のUFC 227で撃破し、世界を驚かせたセフード。史上初のオリンピック金メダル(2008年北京五輪、フリースタイルレスリング)とUFCチャンピオンベルトの両方を持つスーパーチャンプとなったセフードは、さらに2019年1月、最初の防衛戦として当時のバンタム級王者ディラショーを迎え撃つチャンピオン対決を行うと、一回り体格の大きなディラショーをわずか32秒でノックアウトに葬ったのだった。

そして今回、セフードはついにバンタム級のベルト獲得に照準を定める。勝てばコナー・マクレガー、ダニエル・コーミエ、アマンダ・ヌネスに次ぐ史上4人目の同時2冠王となる。

「今回の試合は、MMAの顔としての自分のステータスをますます高めることになる。3カ国語を話し、五輪金メダルを取り、UFCフライ級タイトルも取り、今度はUFCバンタム級のベルトまで手に入れようとしている。こんな男は俺だけなんだ。その俺がパウンド・フォー・パウンドランキングの1位でも、UFCの顔でもないという人は、ちょっとどうかしているんじゃないかと思う」

セフードは2020年東京五輪出場や、プロボクシング進出の可能性まで口にし始めており、まさに最強の栄誉をほしいままにせんとする勢いだ。

一方、他団体でバンタム級王座を5回防衛、過去18戦で17勝、現在4連勝中とすさまじい戦績のモラエス。特に過去3戦は、アルジャメイン・スターリング、ジミー・リベラ、ハファエル・アスンソンの3人を併せて4分57秒でフィニッシュしており、目にものを言わせた絶好調ぶりである。

「この階級のチャンピオンに問題が発生したみたいだから、オレが何とかしてやるよ」とうそぶくモラエスは、「金メダルやベルトをひけらかして自慢ばかりして、フライ級の救世主気取りのセフードは好きになれない」と一刀両断、「自分のキャリア史上、最大の試合になる。準備は万端だ。あとはしっかり戦って、セフードをノックアウトしてやるだけだ」と待望のタイトルショットに虎視眈々(こしたんたん)だ。

ここから始まるシェフチェンコの王道

UFC 238のセミメインイベントではUFC女子フライ級タイトルマッチ、王者ワレンチナ・シェフチェンコ(キルギス共和国)対挑戦者ジェシカ・アイ(アメリカ)の一戦が行われる。

シェフチェンコはUFC 231(2018年12月)で、元女子ストロー級絶対王者ヨアンナ・イェンドジェイチェクに完勝、空位だった女子フライ級タイトルを獲得した。今回が初の防衛戦となる。バンタム級ではアマンダ・ヌネスに王者への道を阻まれたが、フライ級転向後は2戦目での戴冠となった。

「UFCで無冠だった時代はおかしな感じだった。私はムエタイでもキックボクシングで17本もベルトを取ってきた。一等賞こそが私のいるべき場所だからよ。フライ級ができたおかげで、私は本来の技術を全て出すことができるようになった」

今年4月にキルギスに帰国した際には、チャンピオンのがい旋にファンや取材陣が殺到、大統領からは直接勲章をももらったという国民的英雄のシェフチェンコ。31歳にして格闘技歴26年のムエタイクイーンの実力はこの階級で頭一つ抜けており、長期政権の予感もする。試合後に見せるトレードマークの勝利の舞にも注目だ。

他方、2013年に10勝1敗の好戦績をひっさげてUFC入りしたアイ。当時のUFCに女子フライ級がなかったことから、当初は1階級上のバンタム級で体格的に不利な戦いを強いられた。4連敗を喫し、15カ月間試合から離れた時期もあったほどだ。しかしフライ級転向以降は3連勝、フライ級での戦績は13勝1敗と圧倒的だ。連勝の高みも連敗の低みも知り抜いた苦労人が、キャリアの集大成を迎える。

タイトル戦にも引けを取らない大注目のファーガソン対セラーニ

UFC 238ではさらにトニー・ファーガソン(アメリカ)対ドナルド・セラーニ(アメリカ)のライト級トップコンテンダー同士の激突も実現する。

7年間負けなしの元UFCライト級暫定王者ファーガソンは現在11連勝中、前回はUFC 229(2018年10月)でアンソニー・ペティスを大激闘の末に血の海に沈めている。その後のファーガソンはケガとプライベートな問題で試合を離れていたのだが、少々試合を離れることがあっても、必ず何事もなかったかのように、しかも思ったより早く戻ってくるのがファーガソンである。

暫定王者として正王者ハビブ・ヌルマゴメドフに挑むことになっていたUFC 223(2018年4月)の直前、ファーガソンは外側側副靱帯を断裂してしまう(この時、暫定王座をはく奪されている)。ケガは全治1年とも報じられたのだが、ファーガソンはその半年後にはペティスと戦っていたのだ。

一方、前回トップコンテンダーのアル・アイアキンタに完勝したセラーニは、わずか35日という短い間隔での再出撃となる。試合数が多いことでおなじみのセラーニにとっても、これは自身のキャリアで2番目に短いインターバルとなる――2015年には15日の間隔でマイルス・ジューリーとベンソン・ヘンダーソンを連破した――が、今回の試合に際して「(通常の3ラウンド戦ではなく)5ラウンド戦にはできないのか」と自ら要求するなど、いまだにそのスタミナとハングリーさの底は見えない。

セラーニが現在保持している主なUFCレコードは次の通りだ。

最多勝利数:23
最多フィニッシュ勝利数:16
最多ポストファイト・ボーナス数:17
キックによるフィニッシュ数:7
試合数:32(試合目)
ノックダウン数:18

こうしてすでに殿堂入りファイター級の実績をあげているセラーニだが、画竜点睛(がりょうてんせい)を欠くとすれば、それは無冠であることだ。そしてこの試合に勝つことは、タイトルへの大きな近道になることは間違いない。

ベルトこそかけられていないが、連勝記録男と最多勝男による、格闘技ファン垂ぜんのこの一戦は、まさに“ピープルズメインイベント”と呼ぶにふさわしい。世界最高峰の大げんか、心して楽しもう。

【文 高橋テツヤ】
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