UFC 248見どころ:あえて難敵を指名、アデサニヤの試みと企み ジャン・ウェイリー初防衛戦も!

UFC PPV 見どころ
UFC 243:ロバート・ウィテカー vs. イズラエル・アデサニヤ【オーストラリア・メルボルン/2019年10月6日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 243:ロバート・ウィテカー vs. イズラエル・アデサニヤ【オーストラリア・メルボルン/2019年10月6日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間3月8日(日)に開催されるUFC 248では、豪華2大タイトルマッチが行われる。メインイベントでは、UFCミドル級タイトルマッチとしてナイジェリアの王者イズラエル・アデサニヤがキューバの挑戦者ヨエル・ロメロを迎え撃つ。

アデサニヤ「ミドル級の強敵を一掃したい」

2019年10月にメルボルンで5万7,127人というUFC歴代最多の観客を動員したUFC 243のメインイベントとして組まれ、オセアニアファイター対決となったUFCミドル級王座統一戦で、正王者ロバート・ウィテカーを下して暫定王者から統一王者になったアデサニヤ。

次期挑戦者の本命としてパウロ・コスタの名前も挙がっていたが、コスタが上腕二頭筋の手術で長期欠場することとなったため、アデサニヤはコスタの回復を待つことなく、初防衛戦の相手として次善の挑戦者であるロメロを指名したのだった。

ロメロが過去4戦で3敗、現在2連敗中と、星取り的には奮っていないことについて、アデサニヤは「そんなことは関係ないんだ」と語っている。「ヨエルは誰もが戦いを回避する猛者だ。俺はああいうビーストのように強い選手と戦って自分を試したい」

MMAで18勝0敗を記録するアデサニヤは2018年2月にUFC入りしてからの2年間を疾風のごとく駆け抜け、7戦7勝、ファイトボーナス6回をマークした。そのクリエイティブなファイトスタイルの類似性から、1階級上の絶対王者ジョン・ジョーンズとの対戦を嘱望する声も高い。

しかし、アデサニヤは「それは時期尚早だ。まずはミドル級の強敵を一掃してから」としている。そのためにも、「UFCではまだフィニッシュされたことがないヨエルを、きっちりと仕留める初めての男になりたいんだ」と自らにあえて高い課題を課しているのだ。

ロメロ「坊や、楽しみだな」

キューバ代表五輪銀メダリスト(レスリング)である”ソルジャー・オブ・ゴッド(神の兵士)”ことロメロにとって、今回が4度目のタイトルマッチとなる。もっともこれまでは、暫定王座戦や軽量失格により勝ってもタイトル獲得資格がない状態で戦っていたため、本格的に正王座に挑戦するのは今回が初めてだ。

ロメロを見た人なら誰もが驚愕(きょうがく)するのは、42歳にして全く衰えを知らない戦闘能力を維持していることだ。ロメロのヘッドコーチも「この年になってまだ強くなっている。いったいどういうことなのか、専門家は一度ロメロの肉体を調査研究した方がいい」とあきれるほどだ。

ロメロも「私の目標は、(プロボクサーの)バーナード・ホプキンスを超えることだ。彼は51歳までトレーニングを続けた」と、ますます意気盛んだからたまらない。

「アデサニヤの戦い方は決まり切っている。同じことを何度もする。クセも穴も、もう見つけてある。坊や、楽しみだな」と不敵に笑うロメロ。評論家筋はファイトスタイルのマッチアップ的に、チャンピオンに不利な面が多いと指摘している。若き無敗王者にベテランの洗礼が待ち受ける。

ジャンのアイドルはラウジー!

UFC 248のセミメインイベントでは中国の王者ジャン・ウェイリーと挑戦者ヨアンナ・イェンドジェイチェク(ポーランド)による女子ストロー級タイトルマッチが行われる。

2019年9月に開催されたUFCファイトナイト深圳でUFCわずか4戦目にして王者ジェシカ・アンドラージに挑戦し、試合開始後42秒、打撃の速射砲連打でチャンピオンを一気に仕留めてベルトを獲得したのがジャンだ。中国人初、アジア人初の快挙だった。

2013年、スポーツジムのインストラクターとして働いていたジャンは、UFC初の女子戦である女子バンタム級タイトルマッチ、ロンダ・ラウジー対リズ・カムーシュ(UFC 157)に衝撃を受け、プロ格闘家の道を志したという。

「ロンダの試合を見て私は、私もこれをやろう、と思った。心からやりたいと思った。それで仕事を辞めて、トレーニングに打ち込むことにしたの」

「当時はUFCでチャンピオンになれるとまでは思っていなかった。とにかくまずは、MMAファイターになるという夢を全力で追いかけてみようと思った。どんな結果がついてくるのかはまるで分からない。ただ、年をとった時に、やっておけばよかったと後悔したくなかった」

新型コロナウイルスの影響で、目下アメリカは中国人の入国を制限している。この制限を回避すべく、ジャンは2月上旬に中国を出国し、タイでトレーニングを行っていた。しかしほどなく、タイでも流行が広がり始めたため、そこからアブダビに飛んで待機していたのだという。現在は無事にアメリカに入国しているが、大切な防衛戦直前に慣れない環境での細切れなトレーニングを強いられたことは、ジャンのコンディション調整にとって好材料とはいえない。

しかしジャンは、「これでこの試合の重要性はさらに増した。私は、コロナウイルスと戦っている人に勝利をささげ、元気と自信を与えたい」と、闘志を燃やしている。

「UFCに来る前から、ヨアンナとの試合の備えはしてきた。彼女の動き、彼女の試合運びは全部知っている。いつの日かオクタゴンで戦う日が来ることも知っていた。準備は万端」と自信を見せるジャン。ラウジーがそうであったように、自らの強い姿で後進の中国人ファイターに希望を与えたいところだ。

けん土重来イェンドジェイチェクが鉄拳をふるう

対するイェンドジェイチェクは、元女子ストロー級絶対王者。その鉄拳でベルトを防衛すること5回、これはラウジーの6回連続防衛に次ぐUFC女子部門のレコードとなっている。

「ベルトを失ってから、私はますますベルトに執着が沸いてきている」とイェンドジェイチェクは語っている。「ウェイリーと戦うためなら、バンコクでも、スリランカでも、ワルシャワでも、どこにでも乗り込んでいくつもりだった。中国までカヌーで来いと言われても行くつもりだった」

ジャンの大振りのパンチにはカウンターを打ち込むスキがあるとイェンドジェイチェクは言う。また、ジャンにはスタミナ面でも穴がありうると指摘している。

「彼女には爆発力があり、打撃は重くてキレがある。それに、まだ若くてハングリー。でも、私の方がオールラウンドね。何より、私は5ラウンド戦に慣れている。コンディションは常に最高。賢くてずるい戦い方も知っている。リーチもある。ゲームプランは完璧、あとは彼女をぶちのめすだけよ」

【文 高橋テツヤ】
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