2022年上半期の試合で最も観客を沸かせた番狂わせといえば、どの試合を思い出すだろうか? 非公式ながら、下記に5つの試合を挙げてみよう。
第5位 タイ・トゥイバサ vs. デリック・ルイス
タイ・トゥイバサとデリック・ルイスはセミメインイベントに組まれるだけの期待に応える試合を見せた。ヘビー級のノックアウトアーティスト同士が激突したこの試合の第2ラウンドで、トゥイバサがヒューストンを拠点とするルイスをテクニカルノックアウトで仕留めている。
戦いの序盤はフェンス沿いでのクリンチに費やされ、アクションが止まったところでレフェリーのダン・ミラリオッタが2人を引き離す。短いやり取りの後、再びクリンチの形になったものの、ルイスがテイクダウンによってこれを破っている。ルイスは何発かのハードショットを入れるが、トゥイバサが反撃して2人は立ち上がり、またクリンチへ。残り1分でルイスがテイクダウンしたものの、2人はすぐに体勢を立て直し、ホーンが鳴るまでクリンチの状態が続いた。
第2ラウンドが始まってすぐに、ルイスのアッパーカットがトゥイバサを揺るがす。短いクリンチの後、2人は強烈な打撃の応酬に。トゥイバサのエルボーでルイスが崩れ落ち、ダン・ミラリオッタが公式なタイムとしては第2ラウンド1分40秒で試合を止めた。
この勝利によって、ランキング11位のトゥイバサは戦績を15勝3敗とした。ランキング3位のルイスは26勝9敗ノーコンテスト1回となっている。
第4位 カイ・カラ・フランス vs. アスカル・アスカロフ
ユナニマス判定によってアスカル・アスカロフにプロとして初めての黒星をつけたとき、カイ・カラ・フランスはフライ級のタイトルに挑戦するチャンスをつかんだ。
29対28で勝利したランキング6位のカラ・フランスは24勝9敗ノーコンテスト1回を記録し、ランキング2位のアスカロフは14勝1敗1分となっている。
アスカロフは開始2分でカラ・フランスの背中をカンバスにつけ、さらにグラウンドの状態でその背中を取る。対するカラ・フランスは残り2分で立ち上がるも、アスカロフがその背中に取りついたままであり、リアネイキドチョークを決めようとしていた。しかしながら、ニュージーランド出身のカラ・フランスはなんとかそのラウンドを逃げ切っており、第2ラウンドから流れが変わってくる。アスカロフのテイクダウンの試みをうまく逃れたカラ・フランスはビッグショットで攻め始め、残り90秒では上半身への連打で猛攻に出た。
最終ラウンドでは全力でテイクダウンを狙いにいったアスカロフだが、カラ・フランスがまたもこれを防ぎ、距離を保ちつつ試合を終わらせる一撃を繰り出そうと努めている。それらの攻撃をうまくしのいだアスカロフだが、終盤の攻勢はニュージーランドからきたファイターに勝利というバースデープレゼントをもたらすのに十分だった。
第3位 アルジャメイン・スターリング vs. ピョートル・ヤン2
アルジャメイン・スターリングがピョートル・ヤンの失格によって最初にUFCバンタム級タイトルを勝ち取ったとき、それは本人の望むような形ではなかったかもしれない。しかし、UFC 273のセミメインイベントでヤンと再戦したスターリングは、スプリットデシジョンで接戦を制し、自らの王座を確かなものにした。
スコアは48対47、48対47、47対48だった。スターリングがこれで21勝3敗になったのに対し、2021年3月に失格でスターリングに負けていたヤンはさらに黒星をつけられて16勝3敗となっている。
ヤンはスターリングの最初のテイクダウンの試みを退けたものの、ニューヨーク出身のスターリングは攻撃の手を緩めず、いくつかのキックをボディに入れている。その間、ヤンも前進を続け、ときに大きく空振りしながらも、終盤には左からの打撃を何度か決めていた。
第2ラウンド開始2分、スターリングはマットでのバトルに持ち込み、素早くヤンの背中を捉える。フィニッシュこそ決められなかったものの、“ファンク・マスター”ことスターリングの優勢が見えていた。
第3ラウンドでも同じことが繰り返され、開始2分でヤンを再びテイクダウンしたスターリングは今回も素早い動きでヤンの背中に回り、ヤンがそこから逃れるまで状況をコントールし続けた。
スコアカード上で遅れを取ったヤンは第4ラウンドの最初から攻めに転じつつ、スターリングのテイクダウンを防ぐ。開始から2分でスターリングがトライアングルチョークの形にするも、ヤンは簡単にこれを逃れ、相手にガードを強いた。スターリングは何とか劣勢から逃れようとするが、ヤンは戦いをグラウンドにとどめ、このラウンドを自分にとって重要なものとしている。
第5ラウンドの半ばまでスターリングのテイクダウンをかわしつづけたヤンは、ラウンド後半に入って攻撃を強めてスコアを延ばし、ホーンが鳴るまでその場を支配し続けていた。
第2位 ビクター・ヘンリー vs. ラオーニ・バルセロス
バンタム級ファイターのラオーニ・バルセロスとビクター・ヘンリーは3ラウンドにわたって激しいバトルを繰り広げ、最後にはオクタゴンニューカマーのヘンリーがデビュー戦で見事なユナニマス判定勝ちを決めている。
スコアは全員が30対27であり、トレビン・ジョーンズの代役だったヘンリーは22勝5敗、バルセロスは16勝3敗となった。
第1ラウンドは狂気的なペースで進み、序盤に押していたバルセロスがラスト1分でテイクダウンも奪っていた。しかし、いったんヘンリーが相手のスピードとタイミングを読めるようになると、ブラジル出身のバルセロスに攻撃を当て、苦しめ出す。地元ファイターの活躍にカリフォルニアの観客が大歓声を上げる中、バルセロスは流血しながらコーナーへと戻り、ラウンドブレイクの間にその手当を必要としていた。
第2ラウンドも第1ラウンドと同じくらい激しい展開となり、バルセロスが調子を取り戻した一方、ヘンリーも最初の好調を続け、甲乙つけがたいバトルを繰り広げる。いずれもポケットから技術的な知識に裏付けされたハイレベルなやりとりをかわした。
第3ラウンドにはヘンリーのプレッシャーがバルセロスのディフェンスを崩し始めたものの、ラスト1分ではバルセロスも反撃し、最終的にジャッジの判断によって勝敗は決している。
第1位 カーラ・エスパルザ vs. ローズ・ナマユナス2
UFC 274のセミメインイベントは白熱した試合とはとても言えないものだった。しかし、25分の戦いの末、カーラ・エスパルザは2014年にローズ・ナマユナスを相手に収めた勝利を再現し、スプリット判定でUFC女子ストロー級タイトルを手にしている。
スコアは49対46、48対47、47対48でエスパルザの勝利であり、エスパルザの戦績は20勝6敗、ナマユナスの戦績は12勝5敗となった。
序盤は神経戦であり、両ファイターが注意深く仕掛けられる隙を伺うものの、どちらも大きな動きには出られずにいた。
第2ラウンドになってエスパルザが初めてテイクダウンに動くも、ナマユナスによって阻止される。これが、観客が不満にじりじりしていたこのラウンドでの、唯一の大きな動きだった。
第3ラウンドでは手数を増やしてきたナマユナスに、エスパルザが短時間のテイクダウンで応じる。しかし、ナマユナスはすぐに体勢を立て直した。その後は最初の2ラウンドの展開が繰り返され、いずれの側からも長続きする攻撃は見られない。
第4ラウンドが始まって2分、エスパルザが再びテイクダウンするも、ナマユナスはスクランブルで窮地を脱する。ナマユナスは反撃に転じるも、残り90秒で再びグランドに持ち込まれた。その中で右腕の攻撃を当てたナマユナスだったが、エスパルザはこれを受け流している。
第5ラウンドには攻防があり、お互いが1発か2発のショットをお見舞いするも、またしても継続的なやりとりにはならなかった。ナマユナスはラスト数秒でテイクダウンをとって試合を終えたものの、タイトルを守るには十分ではなかった。