2022年番狂わせ10選

UFC
UFC 278:カマル・ウスマン vs. レオン・エドワーズ【アメリカ・ユタ州ソルトレイクシティ/2022年8月20日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC)】
UFC 278:カマル・ウスマン vs. レオン・エドワーズ【アメリカ・ユタ州ソルトレイクシティ/2022年8月20日(Photo by Josh Hedges/Zuffa LLC)】
2022年に繰り広げられた番狂わせの中でも、特に注目のバトルを『UFC.com』のスタッフがチョイス。あくまで非公式なリストはこちら。

1. レオン・エドワーズ vs. カマル・ウスマン2



こんなのアリか!?

レオン・エドワーズがUFCウェルター級の新チャンピオンとなった。UFC 278のメインイベントで、負ける寸前という状況から残り数秒で巻き返しての勝利だった。

チャレンジャーは第1ラウンドで輝きを見せ、ウスマンを倒してマウントを取り、ラスト数分では背中からの体勢に移行してチョークを試み、自分らしいゲームをいかんなく発揮した。しかし、そこから3ラウンド半で試合をコントロールしていたのはウスマンだった。

それ以降の各ラウンドでは、ウスマンのプレッシャーやペース、タイトル戦の経験がエドワーズを苦しめ、エドワーズは芯の通った攻撃を当てられず、テイクダウンを容易に許していた。第4ラウンドの序盤にはチャレンジャーが成功する場面もあり、ウエストロックを決めてフックを落とそうとするも、ウスマンはそこから逃れてすぐにエドワーズをカンバスに倒して痛めつけ、ラウンド終了直前までその手を緩めることはなかった。

第5ラウンドでもウスマンがプレッシャーをかけ続けたが、ウスマンのローブローによって残り2分の段階で試合は一時中断。再開された後にエドワーズがやや勢いを強め、ウスマンは様子を見る形に。そこに左のハイキックを解き放ったエドワーズが、ウスマンをシャットアウトした。

勝利を祝い、感情を爆発させるエドワーズ。その傍らで、スツールに腰を落としたウスマンは、何がまずかったのかといぶかっていた。

これまで長く頂点に君臨してきたウスマンが、この試合の大部分をコントロールしていたことを踏まえれば、2人はおそらく、また戦わなければならないだろう。しかし、次の再戦の舞台にゴールドのベルトと共に現れるのは、エドワーズの方だ。

なんという結末だろう!

2. カーラ・エスパルザ vs. ローズ・ナマユナス2



UFC 274のセミメインイベントとして行われたこの試合は、白熱した展開とは言い難い一戦だった。しかし、25分が経過したときにカーラ・エスパルザが2014年のローズ・ナマユナスに対する勝利を再現し、スプリット判定によってUFC女子ストロー級のタイトルを取り戻している。

スコアは49対46、48対47、47対48でエスパルザだった。

序盤は神経戦であり、お互いが相手の初手を警戒したものの、いずれも前に出ていかない。

第2ラウンドでは最初にエスパルザが動くも、テイクダウンの試みはナマユナスによって阻止され、これがこのラウンド唯一の大きな動きとなったことで、観衆には不満が残る形となった。

第3ラウンドが始まるとナマユナスが火力を上げはじめ、それに応じたエスパルザがテイクダウンするものの、チャンピオンはすぐに立ち上がる。その後は最初の2ラウンドの繰り返しとなり、一流のファイターによる持続的な攻撃は見られないままだ。

第4ラウンド開始2分、エスパルザが再びテイクダウンする。しかし、ナマユナスがスクランブルで立ち上がった。とは言え、そこからタイトルホルダーが激しい反撃に出ることはなく、残り90秒で再び倒されてしまう。今回は右手をついたナマユナスだったが、エスパルザはそれに冷静に対処した。

第5ラウンドにはいくらかの応酬があり、2人がそれぞれ一撃、二撃をたたき込んでいくものの、なおも本格的なバトルに発展することはなく、観衆もすでにそれを承知しているような状態だった。ナマユナスが最終ラウンドの最後の数秒でテイクダウンを決めてこの戦いを締めくくったものの、タイトルを守るには、それでは足りなかった。

3. ショーン・オマリー vs. ピョートル・ヤン



疑いようもなく見事な試合だった。ショーン・オマリーにかけられたすべての疑いを払拭する一方で、ピョートル・ヤンの力を改めて思い知らされる一戦。類まれなバトルを通じて、“シュガー”ことオマリーがスプリット判定で勝利を手にした。

オマリーは傑出したパフォーマンスを発揮し、第1ラウンドでヤンを痛めつけた上、第3ラウンドでは膝の強烈な一撃でヤンに切り傷を負わせた。一方、元チャンピオンは絶えず調整を続け、長い時間でその場のアクションをコントロールしている。一進一退の信じられないほどの攻防。勢いを引き寄せるためにはお互いが全力で攻め込む必要があり、2人はバトルを通じて何度もそれをやってのけた。

オマリーにとっては大金星だ。ここ5試合で無敗のオマリーは、バンタム級で大きく前進している。ヤンについては奇妙な立場にあり、ここ4戦で1勝3敗をマーク。白星で暫定タイトルを獲得した一方、敗北についてはすべて接戦で、議論の生じる展開だった。

熱いドラマととてつもない会場。これ以上は望めないほどの一戦だった。

4. カイ・カラ・フランス vs. アスカル・アスカロフ



ユナニマス判定でアスカル・アスカロフにプロとして初めての敗北を味わわせたカイ・カラ・フランスが、フライ級のタイトルをつかみとった。

スコアはすべて29対28でカラ・フランスだった。

開始から2分までにアスカロフがカラ・フランスを倒し、素早く背中側に回る。残り2分で立ち上がったカラ・フランスだが、アスカロフはその背中をしっかりとキープし、リアネイキドチョークを仕掛けた。しかし、カラ・フランスはラウンド終了まで持ちこたえ、第2ラウンドで流れを変えていく。アスカロフによるテイクダウンをうまく防いだカラ・フランスは、相手にしっかりと狙いを定めてビッグショットを次々と繰り出し、ラスト90秒でアスカロフを圧倒した。

最終ラウンドに入って全力でテイクダウンを試みたアスカロフだが、カラ・フランスはこれも防いだ。アスカロフを引き離したカラ・フランスはヘビーショットで試合を終わらせることを狙う。強烈な打撃にうまく対処したアスカロフだったが、勝利にふさわしいパフォーマンスを見せたのはニュージーランドからやってきたバースデーボーイの方だった。

5. ビクター・ヘンリー vs. ラオーニ・バルセロス



バンタム級のラオーニ・バルセロスとビクター・ヘンリーが3ラウンドにおよぶバトルを繰り広げ、15分の制限時間の大半でショットをやりとりした末、最終的にはオクタゴンニューカマーのヘンリーがユナニマス判定でデビュー戦での白星を飾っている。

スコアは30対27でヘンリーだった。

第1ラウンドはクレイジーなペースでのバトルになった。バルセロスが早い段階で優位に立ち、ラスト1分ではテイクダウンに成功している。しかし、相手のスピードとタイミングが見え始めたヘンリーは、バルセロスに攻撃を当て、ダメージを与えだす。調子を上げたヘンリーに地元アメリカのファンたちが雄叫びを上げる中、バルセロスは流血しながらコーナーへと向かっており、ラウンド間で手当を必要としていた。

第2ラウンドも第1ラウンドと同じくらい緊迫した展開になり、バロセロスが回復した一方、ヘンリーも好調を維持。ポケット内で高度なテクニックをベースにした激しいやりとりが交わされた。

第3ラウンドではヘンリーのプレッシャーがバルセロスのディフェンスをこじ開け始める。ラスト1分でバルセロスも反撃に出るが、軍配はヘンリーに上がった。

6. アレックス・ペレイラ vs. イズラエル・アデサニヤ



UFCミドル級新チャンピオン、アレックス・ペレイラ!

スコアカード上で押されている状態で最終ラウンドを迎えたチャレンジャーは、2人の2度目のキックボクシング対決を終わらせたときのようなパワーショットを求めていた。アデサニヤがフェンス際に追い詰められたとき、ペレイラはその機会を見いだす。怒涛の勢いでチャンピオンにパワーショットを浴びせたペレイラがアデサニヤの動きを封じ、レフェリーのマーク・ゴダードに試合を止めさせている。

20分以上にわたって実に優れたパフォーマンスを見せたのはアデサニヤだった。しかし、ペレイラのパワーがあまりにも大きすぎた。UFC 281を締めくくったこの名試合で、ペレイラが究極のディファレンスメーカーであることが証明されている。

オクタゴンに登場してから1年、もしくは4試合。ペレイラはミドル級の頂点に上りつめた。驚くべき逆転劇で、“ザ・ラスト・スタイルベンダー”の壮大な王朝を終わらせたのだ。

7. アルジャメイン・スターリング vs. ピョートル・ヤン2



アルジャメイン・スターリングが最初にUFCバンタム級のタイトルを勝ち取ったとき、それは本人の望むような形ではなかった。しかし、ピョートル・ヤンとのリマッチで接戦となったUFC 273のセミメインイベントをスプリット判定で制したときに、スターリングは文句なしの王座統一を果たしている。

スコアは48対47、48対47、47対48でスターリングだった。

ヤンはスターリングによる最初のテイクダウンの試みを退けたものの、その後もスターリングは攻撃の手を緩めず、ボディにいくつかの重いキックを蹴り込む。その間、ヤンも前進を続け、大きく外すことがありながらも最後には左からの一撃を決めた。

第2ラウンド2分、スターリングがバトルをマットへ持ち込み、素早くヤンの背中をとる。フィニッシュには至らなかったものの、しばらくの間は“ファンク・マスター”ことスターリングがバトルを支配していた。

第3ラウンドでもそれは繰り返され、開始から2分でヤンをテイクダウンしたスターリングがあっという間に背中に回り、その場をコントロール。ヤンがそこから逃げ出すことはできなかった。

スコアで遅れを取るヤンは第4ラウンドの開始から攻勢に出つつ、テイクダウンを試みるスターリングを回避していく。ラウンド開始から2分でスターリングが三角絞めを決めるも、ヤンは簡単にそこを抜け出し、最終的に相手がガードする形に持っていく。そこから抜け出そうとするスターリングだが、ヤンがグラウンドでのバトルを続け、このラウンドを自分のものとした。

第5ラウンドの前半でもヤンはスターリングのテイクダウンをうまくかわし、後半に入るとさらにオフェンシブポイントを積み上げていく。ホーンが鳴るまで、ヤンが明らかに相手よりもフレッシュな状態で場を支配していた。

8. タイ・トゥイバサ vs. デリック・ルイス



タイ・トゥイバサとデリック・ルイスは、セミメインイベントで対決した彼らに寄せられた期待に応えるバトルを見せた。ヘビー級のノックアウトアーティスト2人が対峙したこの試合の第2ラウンドで、地元ヒューストン出身のルイスをトゥイバサがノックアウトしている。

試合の序盤はフェンス際のクリンチに多くの時間が費やされ、こう着状態となった2人の間にレフェリーのダン・ミラリオッタが割って入った。短い応酬を経て再びクリンチになったが、これはルイスのテイクダウンによって中断されている。そこからルイスがいくつかのハードショットを繰り出すも、トゥイバサはそれを受けきり、2人が立ち上がったときに反撃を開始。そして、またもやクリンチの形となっている。残り1分でルイスがテイクダウンするも、すぐに2人は立ち上がり、ホーンまでクリンチのままだった。

第2ラウンド開始から間もなく、ルイスのアッパーカットによってトゥイバサに火がついた。短いクリンチを経て2人は激しい打ち合いになり、トゥイバサのエルボーによってルイスが崩れ落ちる。ダン・ミラリオッタがストップをかけ、公式タイム第2ラウンド1分40秒で熱戦は決した。

9. ロマン・ドリーゼ vs. ジャック・ハーマンソン



ロマン・ドリーゼがショートノーティスでやってきたこのチャンスを最大限に生かしたのは間違いない。ドリーゼは“ザ・ジョーカー”ことジャック・ハーマンソンを第2ラウンドで片付け、この年の3つ目の白星を上げつつ、4連勝を飾っている。

試合の大部分を支配しているように見えたのはハーマンソンの方であり、リズムを外したストライキングでドリーゼのバランスを崩していた。しかし、第2ラウンド中盤にグラウンドでのバトルになった際、ドリーゼが相手の背中を取りつつカーフスライサーを決め、ハーマンソンを腹ばいにさせて身動きを封じている。

ドリーゼは決して相手を離さず、ハーマンソンには逃れるすべがない。レフェリーのマーク・ゴダードには、そこに割り込んで試合を止めるしかなかった。

デレク・ブランソンの代役としてショートノーティスでこの試合を受けたドリーゼが、傑出したパフォーマンスを披露した。この勝利によって、ドリーゼの前にトップ10入りの道が開けた。

10. マルチン・ティブラ vs. アレクサンドル・ロマノフ



アレクサンドル・ロマノフにはじめて黒星をつけたファイター。それがマルチン・ティブラだ。

トップ15につけている堅牢なファイターは、第1ラウンドでロマノフの手荒い歓迎を受けた。持ち上げられ、何度もカンバスに叩きつけられる。無敗のロマノフが、簡単にベテランを片付けてしまうように見えた。しかし、ティブラは最初の猛攻をしのぎきり、第2ラウンドが始まったときには、ロマノフが疲れ果てているのは明らかだった。

系統だった攻撃を展開したティブラは、足やミッドセクションへのキックと変則的なパンチによって、そこから2ラウンドをコントロールする。

圧倒的な第1ラウンドをロマノフが完封したことで、2人のバトルは引き分けに向かうかと思われた。しかし、第1ラウンドで10対8をつけたジャッジが一人だけだったため、ティッブラが勝利をつかみとっている。

昨年10月にアレクサンドル・ボルコフに敗れたティブラが、見事な立て直しを果たした。過去8試合で7勝を上げたティブラは、その過程でロマノフを無敗の座から引きずり下ろしている。
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