UFC月間レポート:2023年6月

UFC PPV UFCファイトナイト
UFCファイトナイト・ラスベガス74:アレックス・カサレス vs. ダニエル・ピネダ【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2023年6月3日(Photo by Chris Unger/Zuffa LLC)】
UFCファイトナイト・ラスベガス74:アレックス・カサレス vs. ダニエル・ピネダ【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2023年6月3日(Photo by Chris Unger/Zuffa LLC)】
1カ月の間にオクタゴンで起こったアクションからベストパフォーマンスのいくつかを紹介するUFC月間レポート。見事なフィニッシュやブレイクしたコンペティター、才能ある新人たちに光を当てるものだ。

2023年UFCスケジュールの半分はすでに実施済みとなった。今年前半の25回の週末に22のイベントが行われるという忙しい日程の影響もあり、オクタゴンで起こったことをリアルタイムに記憶していくのは難しくなっている。だからこそ、1カ月が終わるごとにその月の特筆すべき瞬間を振り返るのは、良い機会だと言えるだろう。

6月にはUFCがカナダを再訪し、ウェルター級の新星が注目をさらった。2名の有望株が見事なフィニッシュを決めた。2人のベテランが面白いバトルを見せてくれた。

2023年6月に際立っていたパフォーマンスは下記の通り。

ブレイクアウト・パフォーマンス:マイク・マロット(UFC 289)



UFC 289に至るまでのバンクーバーでの1週間で、こんなことがささやかれていた。「マイク・マロットは本当にこの週のスターだった。あとは勝利をつかんで去るだけだ」

故郷であるカナダに戻ったマロットは、間もなくやってくる大きなチャンスを前に、メディアデーと記者会見で大活躍してみせた。豊かな個性と高い自信を示したマロットは、数名のチームメイトたちと並んでカナダで戦うことについて熱く語り、アダム・フューギットをフルラウンドまでいかずに仕留めることで、ウェルター級の中でさらに先を目指したいと話している。

31歳のマロットはおふざけを許可されたときのホッケー選手のような“サンドイッチ話法”を展開。古き良きカナダらしい謙遜の心と敬意、雄弁さ、礼節ある振る舞いでサンドイッチしつつ、フューギットを相手にフィニッシュを決めると宣言した。

そして、試合日の夜、マロットは宣言通りのことを実行したのだった。

マロットのキャリアで初めてのことだが、フィニッシュを決めるには第2ラウンドまでかかった。しかし、フューギットとの試合のすべての瞬間をコントロールしていたのは、デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ(DWCS)出身のマロットだ。クリーンでシャープ、テクニカルな打撃を披露した後にフューギットを捉えたマロットは、チーム・アルファ・メールのコーチ時代に磨き上げたギロチンチョークを決めた。

10勝1敗1分という戦績が示す以上の経験を重ねてきたマロットは、これからもウェルター級に波を起こし続けていく。

バンクーバーの1週間で、押しも押されもせぬスターだったマロット。その輝きはこれからも続いていくだろう。

サブミッション・オブ・ザ・マンス:ケトレン・ソウザに1本勝ちしたカリーニ・シウバ(UFCファイトナイト・ラスベガス74)



6月にチョイスの対象となるサブミッションは5試合しかなかった(全49試合中)。とは言え、たとえ候補が5倍あったとしても、今月のベストサブミッションに選ばれるのはカリーニ・シウバがケトレン・ソウザに極めたニーバーだろう。

シウバはロースターの中でも興味深い選手の1人だ。フィジカルでデンジャラスな29歳の女子フライ級ファイターであるシウバはUFCデビュー戦でポリーナ・ボテーリョに1本勝ちしており、これからさらに階級内で成長、発展していく可能性を秘めている。

元LFAチャンピオンで、UFCでは初戦を迎えるソウザとの試合を前に、シウバがボテーリョ戦の展開を再現できるかが1つのポイントとなっていた。ボテーリョと戦った際、シウバは試合終盤でフィニッシュするまで、ずっと優勢を維持していた。実際のところ、それ以上のパフォーマンスを見せていたと言える。

試合開始から30秒を待たずにソウザをカンバスに倒したシウバは、自分がファイターとして何者なのか、そして、勝利への最良の道は何なのかをしっかりと把握している様子だった。ハーフガードの形でヘッドロックのポジションからチョークに持っていけなかったシウバは、ソウザがそこに出していた足を活用したのだ。

シウバがポジションを戻してすぐ、ソウザの左足がシウバの脇に下に収まった。これが問題だった。膝に回転力がかかってすぐ、試合は終わった。当然ながら明らかに苦しい様子を見せたニューカマーが素早くタップしたのだ。

戦績を16勝4敗としたシウバは、才能ある選手を大勢擁し、常にかわり続ける女子フライ級において、注目すべき選手の1人となっている。

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:ニコラス・モッタをノックアウトしたマヌエル・トーレス(UFCファイトナイト・ラスベガス75)



試合開始から1分の間、マヌエル・トーレスとニコラス・モッタはレッグキックをやりとりしていた。それぞれのレンジを探りつつ、お互いのパワーに敬意を払いながら。

第1ラウンド1分が経過する直前、モッタがトーレスに2連打のコンボを入れ、トーレスを少しの間棒立ちにした。10秒後、モッタは再び左フックを繰り出し、トーレスは鼻から出血し始める。

その瞬間、トーレスが変わった。見ている者に分かるほどだった。実況解説を担当していたポール・フェルダーは、その目が変わったと指摘している。その心中が“慎重にいかなければ”だったのか “誰にも俺の血を流させない”だったのかは分からないが、メキシコから来たライト級ファイターは攻勢に転じ、そこから30秒足らずで試合を終わらせた。

ステップインエルボーでのフィニッシュには目を引くものがある。トーレスはジャブからこれ以上ないくらい強烈な左エルボーをたたき込み、モッタはそれを受けると同時に機能停止した。

フェルダーの驚きは、見る者皆の驚きだった。何度見返しても、その衝撃は色褪せない。

ファイト・オブ・ザ・マンス:アレックス・カサレス vs. ダニエル・ピネダ(UFCファイトナイト・ラスベガス74)



予想された通り、アレックス・カサレスとダニエル・ピネダによるフェザー級マッチはきわめてクレイジーだった。

第1ラウンドはヘビーショットの応酬とスクランブル、サブミッションの試みとそこからのエスケープ、そして血と汗と、全体を覆うカオスに特徴づけられていた。第2ラウンドも概ね同様で、疲れは両者に見えていたが、2人のアクションがスローダウンすることはない。第3ラウンドに入って間もなく、カサレスがその場の主導権を握ると、ピネダのボディに連撃を浴びせ、ほとんどの時間で優勢だった。

誰もが、このバトルは敢闘試合賞(ファイト・オブ・ザ・ナイト)候補だと考えていた。そして、試合はその期待を超える展開を見せた。

感傷的に聞こえるかもしれないが、カサレスのキャリアがここまで到達したことには、興奮を禁じえない。今や常にワイルドで面白い試合を見せてくれるベテランとなったカサレスが、ピネダと戦ったこともまた素晴らしい。ピネダもアクションが豊かで、決して見る者を退屈させないファイターであり、数々の戦いを経験してきた。パーフェクトな対戦だったと言えるだろう。
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