UFC月間レポート:2023年7月

UFC UFC PPV 対戦カード
UFC 290:ブランドン・モレノ vs. アレクサンドル・パントーハ【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2023年7月8日(Photo by Cooper Neill/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 290:ブランドン・モレノ vs. アレクサンドル・パントーハ【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2023年7月8日(Photo by Cooper Neill/Zuffa LLC via Getty Images)】
1カ月の間にオクタゴンで起こったアクションからベストパフォーマンスのいくつかを紹介するUFC月間レポート。見事なフィニッシュやブレイクしたコンペティター、才能ある新人たちに光を当てるものだ。

いつも7月のオクタゴンは忙しいもの。土曜日から始まった今年の7月はことさら充実しており、5つのイベントから月間賞の候補が出されている。

しかし、率直に言えば、今月に各賞の最終的な勝者を選ぶのは、難しい仕事ではなかった。それに値するパフォーマンスは多く見られ、7月に魅せた才能あるアスリートのすべてに敬意を表すべく、特別賞を設けているほどだ。しかし、それでも各賞を選ぶのは容易だった。

さあ、それでは始めよう。

ブレイクアウト・パフォーマンス:リナト・ファクレトディノフ



7月の初めに組まれたリナト・ファクレトディノフの試合に先立って大きな注目を集めていたのは、対戦相手のケビン・リーの方だった。それも無理のないことだ。リーはしばらくぶりのUFC復帰であり、以前にはライト級暫定王座を懸けて戦ったことのあるファイター。そして、いずれ再びチャンピオンシップに挑戦するファイターだと常に評されて(そしておそらく期待されてすら)いた。

だからこそ、7月最初のイベントのプレリムを締めくくった試合は、ファクレトディノフがブレイクするためのパーフェクトな機会だった。ファクレトディノフはUFC初お目見えからのレスリングの要素が強かった2試合で相手を圧倒し、アンドレアス・マイカライディスとブライアン・バトルに判定勝ちを収めている。

31歳のロシア人ファイターがリーを倒すのに、55秒しかかからなかった。この試合によってファクレトディノフはUFCで3連戦、キャリア20勝目を決めている。

リーをカンバスに倒したのは、右ストレートだった。リーはレスリングに入ろうとしたもののファクレトディノフがギロチンチョークを決め、復帰試合だった“モータウン・フェノム”を落としている。

UFCで3勝0敗を決め、多くの危険な武器を備えた“ザ・グラディエーター”は、すぐにトップ15にいる対戦相手を探すことになるだろう。喜んでそれに応えるものは、それほど多くなさそうだ。

特別賞:グラント・ドーソン、ヌルスルトン・ルジボエフ、ドリカス・デュ・プレシ、デニーシ・ゴメス、ヘスス・アギラー、ガブリエル・ボンフィム

サブミッション・オブ・ザ・マンス:ホリー・ホルムに1本勝ちしたマイラ・ブエノ・シウバ(UFCファイトナイト・ラスベガス77)



オンラインコミュニティで不評を買っているファイターについては、試合結果の重要性が軽視されるような傾向があるようだ。それが、ブエノ・シウバが7月半ばに、ホルムを第2ラウンドで仕留めたときに起こったことだ。

“シータラ”ことブエノ・シウバは第2ラウンドに入ってわずか33秒で、元チャンピオンにニンジャチョークで勝利したことで、女子バンタム級のランキング入りを果たしてからの戦績を4勝0敗に伸ばした。しかし、41歳の常連コンテンダーについては悪い印象があるため、この勝利の衝撃は大幅に軽んじられている。

ホルムはコンテンダーでない者に負けるファイターではない。それは、彼女の戦績が示している。そして、ホルムはこれまでに1度しかサブミットで負けたことはなかった。UFC 196で行われたミーシャ・テイトとのタイトルマッチの最終ラウンドでのことだ。また、フィニッシュによって負けたのも他には1度しかなく、それは“ザ・ライオネス”の異名を持つアマンダ・ヌネスとの戦いだった。つまり、ブエノ・シウバは今回の試合を早い段階で終わらせることによって、それらのファイターと肩を並べたのだ。

ホルムに1本勝ちしただけではなく、ブエノ・シウバは試合後のメディア対応で元チャンピオンのジュリアナ・ペーニャに狙いを定めている。ペーニャはブエノ・シウバのパフォーマンスや試合後のコメントに一言したことがあった。チャンピオンシップ戦に向けて前進し続けるブエノ・シウバにとって、ホルム戦の成果は今後ペーニャ、もしくは他のトップコンテンダーたちと戦うにあたり、有利な要素になるかもしれない。

特別賞:ファクレトディノフ対リー、ユリア・ストリアレンコ対モリー・マッキャン、ジャフェル・フィーリョ対ダニエル・バレス、ボビー・グリーン対トニー・ファーガソン、ケビン・ホランド対マイケル・キエーザ、ガブリエル・ボンフィム対トレヴィン・ジャイルズ

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:ジャスティン・ポワリエをノックアウトしたジャスティン・ゲイジー(UFC 291)



この試合は年末に今年1番のパフォーマンスを選ぶときに間違いなく挙げられる部類の試合だ。だからこそ、ここで選ばれることに何の疑いもない。とは言え、ここで少し紐解いてみよう。このノックアウトが比類ないものである理由は、複数あるからだ。

第一に、技術的に美しいフィニッシュだった。ポワリエが全く予測しなかった右手からの右ハイキックは、わずかなガードを介しても十分 “ザ・ダイヤモンド”ことポワリエにヒットし、カンバスに倒している。

第ニに、この試合はBMFタイトル戦のとして見事であり、過去に自分をノックアウトした相手への報復だった。ゲイジーとポワリエはこの1戦によってお互いに対する戦績をイーブンにしており、ゲイジーはUFC史上最もエキサイティングなファイターの1人という立場を確実なものにしている。そしておそらく、前回のポワリエへの敗北から疼き続けていた最後の傷も、癒えたことだろう。

このキックを特別なものにしているもう一つの理由は、一つの奇妙な偶然にある。ソルトレイクシティのデルタ・センターで実施された直近の2つのペイ・パー・ビューイベントが、サイドが違うだけの同じキックで終わっているのだ! しかも、前回それを受ける側だったカマル・ウスマンは、ゲイジーのメインのトレーニングパートナーであり、ウスマンは7月の土曜日にも、会場にいた。

こういった理由から普通ではないフィニッシュであり、冬に賞を受けても何も不思議ではないだろう。

特別賞:ルジボエフ対ブルンノ・フェヘイラ、ロビー・ローラー対ニコ・プライズ、アギラー対シャノン・ロス、ロマン・コピロフ対クラウディオ・ヒベイロ

ファイト・オブ・ザ・マンス:ブランドン・モレノ vs. アレクサンドル・パントーハ(UFC 290)



このカテゴリーにおいて、競争力のあるメインイベントやチャンピオンシップ戦は、月間レポートでも、年末の賞においても、常に有利になる。なぜなら、5ラウンドマッチだというだけで、より大きな緊迫感とドラマが生まれるからだ。

たとえ、この試合が強烈でスリリングなアクションに満ちたものではなかったとしても、2人の間では一進一退の攻防が繰り広げられ、いずれかがコントロールを握っていると言い切れる瞬間はなかった。モレノとパントーハはラウンドを取り合い、時に優勢に、時に劣勢になりながら、どちらかがはっきりとアドバンテージを取っているとは言い難い超接戦を通して、信じられないほどコンペティティブなフライ級タイトル戦を見せてくれた。

ジャッジが最後につけた点数には一部から不満が出ていたが、現実として、これは2人のトップコンペティターによる信じがたいほどの接戦であり、12月には絶対に賞の候補に入るであろう名試合だった。

彼らが再戦を望むのなら、そこには何の不満もない。

特別賞:エルブス・ブレナー対グラム・クタテラーゼ、ダン・フッカー対ジェイリン・ターナー、ジャック・デラ・マダレナ対バシル・ハファス、ナサニエル・ウッド対アンドレ・フィリ
Facebook X LINE

オクタゴンガール
オフィシャルショップ
FANTASY