UFC月間レポート:2023年10月

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UFC 294:イスラム・マカチェフ vs. アレキサンダー・ボルカノフスキー【アラブ首長国連邦・アブダビ/2023年10月21日(Photo by Chris Unger/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFC 294:イスラム・マカチェフ vs. アレキサンダー・ボルカノフスキー【アラブ首長国連邦・アブダビ/2023年10月21日(Photo by Chris Unger/Zuffa LLC via Getty Images)】
1カ月の間にオクタゴンで起こったアクションからベストパフォーマンスのいくつかを紹介するUFC月間レポート。見事なフィニッシュやブレイクしたコンペティター、才能ある新人たちに光を当てるものだ。

9月に17週連続開催の流れが一段落した後、10月には3つのイベントが行われた。うち2つはラスベガス4連戦の締めくくりとしてUFC APEXで行われ、最後の1つは毎年恒例のアブダビへの旅だった。アラブ首長国連邦・アブダビのエティハド・アリーナを舞台に、UFC 294が実施されたのだ。

1年を通して言えることだが、先月行われたイベントにも、月間レポートで取り上げるべき選択肢は豊富にあった。とは言え、その中でも2つの試合については、年度末の選考の際に有力候補になることが明らかに予想されている。

10月にオクタゴンで起こっていたことを、最新の月間レポートで振り返ろう。

ブレイクアウト・パフォーマンス:ジョナサン・マルチネス(UFCファイトナイト・ラスベガス81)

このパフォーマンスこそ、バンタム級のランクを素早く駆け上がっていくマルチネスが必要としていたものだった。

2試合前のカブ・スワンソン戦でもほとんど同じような成果を上げていたマルチネスだが、対戦相手が初めて(そしておそらくこれが唯一の機会として)バンタム級に階級を移したベテランだという事実が、第2ラウンドでのテクニカルノックアウト勝ちのインパクトを少し弱めていた。同じように、常に危険なファイターとして知られるサイード・ヌルマゴメドフにユナニマス判定勝ちを収めた試合も、どういうわけか周囲にはそれほど響いていない。そういった経緯が、今回のエイドリアン・ヤネスとの試合をさらに重要なものにしていた。

5連勝しているマルチネスはデイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ出身のヤネスよりも上のポジションにつけているにもかかわらず、この試合では本命と見られていなかった。しかし、いざ試合が始まれば、マルチネスは自分の方が優れていることを急速に示していく。364日前にスワンソンに対して実行したのとまったく同じように、マルチネスは序盤にヤネスのリードレッグを執拗に攻めていった。第1ラウンドが終わる頃にはヤネスの足の動きが悪くなっているのが明らかであり、第2ラウンド中盤ではもう試合続行が不可能なほどになっている。

マルチネスはソーシャルメディアで大きく取り上げられた選手ではなく、試合後のインタビューでも多くを語らなかった。しかし、マルチネスはこれで、おそらくUFCでも最も層が厚い階級で6連勝を決めたことになる。過去12試合で10勝2敗をマークしており、黒星のうちの1つは、誰もがマルチネスの勝ちだと考えた試合で喫したスプリット判定負け。メインカードでヤネスを下したことにより、次はまた新たなランク入りファイターとオクタゴンで邂逅(かいこう)することになるだろう。

これまでマルチネスにノーマークだった者も、今や大注目しているはずだ。

特別賞:ジョー・パイファー、ネイト・マネス、ミシェル・ペレイラ、メッリサ・ディクソン、イクラム・アリスケロフ、シャラ・マゴメドフ

サブミッション・オブ・ザ・マンス:ティム・エリオットを破ったムハンマド・モカエフ(UFC 294)

会心のニンジャチョークに惹かれ、サイード・ヌルマゴメドフの名前を出したいところだ。しかし、UFC 294でモカエフの勝利をもたらしたものが、それ以上に際立っていた。

UFC5戦で5勝を挙げた状態でこの試合を迎えたモカエフにとって、ランク内の選手と戦うのはこれが初めてのこと。23歳の新星はアブダビで冷静に、忍耐強く戦い抜き、第3ラウンドでエリオットにアームトライアングルチョークをきめて、キャリア最大の勝利をつかみとった。

この一戦はモカエフにとって大きな試練とみなされていた。だが、最初の2ラウンドで激しい接戦を演じた後、これまでにも相手を引き離す傾向のあった第3ラウンドではエリオットよりフレッシュな状態で登場しており、結果として大成功を収めている。試合序盤でエリオットが優勢だったときにも、モカエフがそれに煩わされている様子はまったくなく厄介なものになりそうだった何度かのサブミッションの試みからも冷静に逃れていた。

第3ラウンドの序盤、モカエフは見事なピークアウトを決めてエリオットをカンバスに倒し、短いショットを用いて相手を崩しつつ、アームトライアングルの形に持っていった。フェンスに近かったことから動きに制限があるように見えていたものの、モカエフはチョークに移行できる形を整え、締めつけを強めることで、迅速にエリオットからタップを引き出している。

結局のところ、フィニッシュが必要だったのだ。モカエフは2ラウンドにわたって、3つのスコアカードのうち、2つで相手を下回った状態で最終ラウンドを迎えていた。

キャリア通算11勝0敗、ノーコンテスト1回となったモカエフは、今回の勝利によってトップ10に食い込んだ。その比類ない才能によって、今後10年をそこで過ごしたとしてもおかしくない。

特別賞:ジョー・パイファー対アブドゥル・ラザク・アルハサン、サイード・ヌルマゴメドフ対ムイン・ガフロフ

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:アレキサンダー・ボルカノフスキー戦でテクニカルノックアウトを決めたイスラム・マカチェフ(UFC 294)

他に選択の余地はなかった。

最初のバトルで生じた疑問を払拭すべく、また、フェザー級王者であるアレキサンダー・ボルカノフスキーの方がパウンド・フォー・パウンドでは優れているとの声を黙らせるべく、イスラム・マカチェフはボルカノフスキーとのタイトル戦リマッチに臨んだ。そして、これ以上ないくらい強烈な方法で、自らの言い分をアピールした。

UFC 294のメインイベントがスタートしてから3分も経たぬうちに、マカチェフは左ハイキックをボルカノフスキーにたたき込む。そのキックによって平衡感覚が揺さぶられたボルカノフスキーは、カンバスに倒れた。ライト級チャンピオンのマカチェフは素早く襲いかかり、猛烈な追撃を加えており、レフェリーのマーク・ゴダードにはこのアクションを止めるしか選択肢がなかった。

UFCのフォトグラファーであるクリス・アンガーが捉えた、素晴らしい写真がある。その場を去るマカチェフが唇の前に指を1本立て、観客と批判家たちを黙らせている。その背景で、フェンスにもたれたボルカノフスキーがケガの確認を受けている。この1枚に、32歳になったマカチェフのパフォーマンスと、チャンピオンとして改めて名乗りを上げた瞬間が、完璧に封じ込まれている。

アブダビで4勝0敗をマークしているマカチェフは、過去3回のアブダビ訪問でもフィニッシュを決めており、そのうちの2回はタイトル戦での勝利だった。ハビブ・ヌルマゴメドフの後継者として何年も前から予言されていたことではあるが、現チャンピオンは友人でもあるコーチがかつてそうしたように、ライト級で自らの道を踏み固めている。

特別賞:ボビー・グリーン対グラント・ドーソン、ドリュー・ドーバー対リッキー・グレン、ネイト・マネス対マテウス・メンドーサ、テランス・マッキニー対ブレンドン・マロット、イクラム・アリスケロフ対ワーレイ・アウベス、マイク・ブリーデン対アンシュル・ジュブリ

ファイト・オブ・ザ・マンス:エドソン・バルボーザ vs. ソディック・ユサフ(UFCファイトナイト・ラスベガス81)

試合最初の1分で、ユサフはバルボーザをめった打ちにした。それはレフェリーのハーブ・ディーンが介入して試合を止めたとしても誰も反対しなかっただろうと思われるほどの激しさだった。最初の5分間を終えて、バルボーザのチームと彼の熱狂的支持者たち以外に、ブラジル人ベテランファイターが最後まで生き延びられると信じる人を探すのは難しかっただろう。

その5分間はまるで、ついにUFC13年目のバルボーザも時間の神に追われ出したのかと感じさせるもので、これでは到底若き対戦相手のパワーに太刀打ちできないだろうと思わせるほどだった。

そこから大どんでん返しが待っていようとは誰が予想できただろうか。バルボーザはフィニッシュを決めたばかりでなく、その後のすべてのラウンドを取って、48-46が2人と49-46のスコアでユナニマス判定を勝ち取り、2連勝した。

これはまさに不屈の精神とベテランの意志の強さで勝ち取った試合で、バルボーザがUFCに在籍した期間の中で数多く残してきた異世界レベルの戦いやハイライトに加えられる1戦だった。自身の代名詞とも言えるスピニングホイールキックでユサフを攻めたバルボーザはその後少し距離を取り、ラスト2ラウンドで次第にペースを上げていった。

ユサフはこの経験から間違いなく学んで成長するはずであり、バルボーザは類いまれなるファイターとしてトップ15入りを続け、誰であれ、UFCが提示する相手と喜んで試合に応じるだろう。

特別賞:クリスチャン・ロドリゲス vs. キャメロン・サーイマン、メリッサ・ディクソン vs. イリーナ・アレクシーバ、ハムザト・チマエフ vs. カマル・ウスマン
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