大番狂わせ | 2023年UFC.COMアワード

UFC
ノーチェUFC:アレクサ・グラッソ vs. ワレンチナ・シェフチェンコ【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2023年9月16日(Photo by Chris Unger/Zuffa LLC via Getty Images)】
ノーチェUFC:アレクサ・グラッソ vs. ワレンチナ・シェフチェンコ【アメリカ・ネバダ州ラスベガス/2023年9月16日(Photo by Chris Unger/Zuffa LLC via Getty Images)】
2023年にファイトファンをうならせてきた数々の番狂わせ。その中から『UFC.com』が非公式にチョイスした10試合を紹介しよう。

1. アレクサ・グラッソ vs. ワレンチナ・シェフチェンコ1


新UFC女子フライ級チャンピオン、アレクサ・グラッソ!

メキシコからやってきたチャレンジャーは、第4ラウンドでワレンチナ・シェフチェンコが犯した戦術上のミスを見逃さず、リアネイキドチョークによるフィニッシュを決めている。

終始きわめて激しいバトルとなったこの試合で、グラッソは第1ラウンドからサウスポーのスタンスで戦うことで、シェフチェンコを驚かせた。チャンピオンのシェフチェンコがグラップリングによってリードを築く一方、グラッソは集中力を保ち、自分に訪れたチャンスのほぼすべてを活用している。

シェフチェンコがスピニングバックキックをミスした瞬間、グラッソがシェフチェンコの背中に乗り上げ、チョークで攻め、しっかりと引き込み、リアネイキドチョークを決めてタップを引き出した。

今年にメキシコからやってきてチャンピオンシップを勝ち取ったファイターは、グラッソで3人目だった。他にはブランドン・モレノとヤイール・ロドリゲスがいる。新王者の、見事な戦いだった。

2. ショーン・ストリックランド vs. イズラエル・アデサニヤ

シドニーへ飛び、5ラウンドにわたってイズラエル・アデサニヤを上回ったショーン・ストリックランドが、UFCミドル級新王者になった。

挑戦者は試合を通じて多くの有効打を繰り出し、第1ラウンドの後半にアデサニヤを痛めつけて、このバトルの雰囲気を決定づけた。すべてのラウンドで攻勢なのはストリックランドであり、チャンピオンを後退させ、相手に打ち込める隙を見せなかった。5ラウンドを通してアデサニヤはターゲットを見つけることができず、ストリックランドが王者に当て続け、猛烈にプレッシャーをかけていく。

スコアカードは全員が49対46でストリックランド。UFC史上最大クラスの番狂わせだった。

3. ボビー・グリーン vs. グラント・ドーソン

唐突なフィニッシュによって、ボビー・グリーンは時間を無駄にすることなくグラント・ドーソンを下した。

ドーソンはすぐに立ち技でのバトルに入ろうとしたが、グリーンが左手の攻撃からドーソンをカンバスに倒す。さらに振ってくる打撃をドーソンが防ぐ中、レフェリーのキース・ピーターソンはアクションを止めざるを得ないと判断している。

大金星を上げたグリーン。37歳のベテランは、このときの活躍によって、その名の横に数字がつくことになる。

4. ボビー・グリーン vs. トニー・ファーガソン

そんなグリーンはドーソンとの試合に先立って、トニー・ファーガソン戦でも勝利を挙げている。ペイ・パー・ビューイベントのメインカードで、グリーンはファーガソンを6連敗に追いやった。

試合を通じてよりシャープに、よりアクティブに見えていたのは“キング”と呼ばれるグリーンの方で、序盤にノックダウンしながらもそこから立て直し、元ライト級暫定チャンピオンよりもキレの良い動きを見せていた。中盤にはかなりの時間でファーガソンにトップポジションから打撃を加え、第3ラウンドではラウンドを通じて元コンテンダーを上回る。ラスト数秒でグリーンはついにファーガソンにアームトライアングルを決め、鮮やかに試合を締めくくった。ベテランのグリーンだが、1本勝ちはこれがUFCキャリア2度目のことだった。

5. アレクサ・グラッソ vs. ワレンチナ・シェフチェンコ2

ノーチェUFCを舞台としたチャンピオンシップ戦の結末は実に魅力的だった。アレクサ・グラッソとワレンチナ・シェフチェンコが5ラウンドにわたって全力のバトルを展開し、ときには互角に、そして時にはどちらかに形勢が大きく傾きながら、終始エキサイティングなメインイベントが繰り広げられた。

第1ラウンドはやや拮抗しており、シェフチェンコが早い段階で打撃を当てるも、グラッソはサウスポーにシフト。そこからジャブで効果的な攻撃を展開していった。第2ラウンドではチャンピオンが右腕で挑戦者を後退させたが、第3ラウンドは元タイトルホルダーが取り戻し、マウントギロチンで脅かしつつ、効果的なグラウンドワークを継続する。

チャンピオンシップラウンドは緊張感が高まり、接戦になっていた。第4ラウンドではグラッソが一連のショートニーをシェフチェンコの頭部に当てた後、バックテイクを急いでポジションを失う。ラウンド後半には“バレット”ことシェフチェンコのエルボーによって、グラッソにカットが生じた。第5ラウンドでは元チャンピオンの蹴りだしが良く、グラッソに攻撃を加えていったものの、ミスを犯したことでメキシコのタイトルホルダーがシェフチェンコの背中を取り、ラウンド終了までショットを当て続けると同時にチョークを狙って相手を脅かした。

ホーンが鳴ったとき、観客ははっきりとしない結果に騒然とした。ポイントが読み上げられると、まさに引き分けの状況だということが分かった。両者が1枚のカードで48対47で相手を上回り、3人目のオフィシャルはこの試合をイーブンと見なしている。

見事な対決で、グラッソがタイトルを保持した。ここから何が起こっていくか、実に興味深い。誰も望まない結果ではあったものの、2人の信じられない才能の持ち主がぶつかりあった、名試合だった。

6. レオン・エドワーズ vs. カマル・ウスマン3

この2人の男によるバトルは、回を重ねるごとに進化していく。UFC 286のメインイベントはその中でも最高の一戦だ。

5ラウンドのすべてで、ウェルター級のライバル同士は互角の戦いを繰り広げた。それぞれのファイターに、ビッグショットを決める瞬間があった。エドワーズは次々とキックを浴びせ、ウスマンは常にプレッシャーをかけて手を使う。しかし、はっきりとしたアドバンテージは、どちらも握っていなかった。常に動きを止めなかった2人は、最後のホーンの瞬間まで戦い続け、結果はジャッジの手に委ねられた。

第3ラウンドでテイクダウンの試みを避けるためにエドワーズがフェンスをつかんだことに対する減点が、並々ならぬ経緯を持つ2人による、これ以上なくコンペティティブで、異常なほどの接戦になった試合に大きく影響した。

スコアがすべて出たとき、エドワーズがマジョリティ判定で勝利を手にした。エドワーズは偉大な選手と対決し、絶対的にクラシックなバトルとなったこの試合で、キャリア最大の瞬間を迎えた。

7. アリアネ・リプスキ vs. ケイシー・オニール

アリアネ・リプスキがこれまでにないバトルを見せた。

29歳の“クイーン・オブ・バイオレンス”ことリプスキは試合が始まってすぐにケイシー・オニールに仕掛け、持ち味であるストライキングの洞察力と強烈なパワーを見せていく。第2ラウンド序盤でオニールをぐらつかせ、崩した後に、リプスキはアームバーに移行し、相手からタップを引き出した。

UFCにやってきてしばらくの間は安定性に欠けていたリプスキだが、今は3連勝をマークし、ランク入りしたファイターを相手に番狂わせを演じて2023年を締めくくった。時間はかかったかもしれないが、元KSWチャンピオンはオクタゴンでもダイナミックでデンジャラスな存在になり始めている。

8. トム・アスピナル vs. セルゲイ・パブロビッチ

UFCヘビー級暫定王者、トム・アスピナル!

バトルが始まってすぐにセルゲイ・パブロビッチからのショットを食らったアスピナルは、いったん仕切り直すと、素早い右腕の連打をロシアの猛獣のこめかみに当てる。最初の打撃がパブロビッチをゆるがせ、2撃目によってその巨体はカンバスに崩れた。

UFCで7勝1敗を記録しているアスピナル。唯一の敗北は負傷に起因するものであり、勝利した試合はいずれも終了時間を待たずして終わっている。常に未来のコンテンダーとして注目されてきたアスピナルが、ついにその身にベルトを巻いた。

イングランドよ、新たな王者の誕生を祝おう。

9. ドリカス・デュ・プレシ vs. ロバート・ウィテカー

次のミドル級タイトルチャレンジャーは、ドリカス・デュ・プレシだ。

南アフリカ出身のデュ・プレシは無敗の記録を維持しつつ、ミドル級のトップに向けた旅を続けている。UFC 290に組まれた試合の第2ラウンド半ばで、デュ・プレシはロバート・ウィテカーを退けた。第1ラウンドの終盤で元王者に猛打を浴びせたデュ・プレシは、第2ラウンドでもウィテカーにダメージを与えて、決して相手を自由にさせることはなかった。フィニッシュまで攻撃を続けた。それは、本人の宣言通りだった。

UFCで6勝0敗となった“スティルノックス”ことデュ・プレシは、いずれミドル級タイトルマッチに臨むことになるはずだ。階級内でも体格が大きく、フィジカルの強さを特徴とするデュ・プレシと、イズラエル・アデサニヤの対決は、魅力的なバトルになるだろう。

10. シャフカト・ラフモノフ vs. ジェフ・ニール

シャフカト・ラフモノフは、ひたすら勝ち続けている。

無敗の新星であるラフモノフはUFC 285メインカードの中盤に組まれたこの試合で、UFCで5連勝、それ以前を考慮にいれれば17連勝をマークし、DWCS(デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ)が生み出したタフなファイターであるジェフ・ニールとの激しい戦いをしのぎきった。28歳のラフモノフにとってキャリアで最も厳しい試練であり、何度か危うい瞬間はあったものの、ラフモノフはこの試練に合格することができた。

3つのラウンドのすべてを通じて、お互いにランク入りしているウェルター級ファイターたちは相手に食らいついていく。ラフモノフの方がバラエティに富み、ボリュームのある攻撃を展開。ニールは第3ラウンドの序盤でラフモノフを揺さぶったものの、ラフモノフをダウンさせるほどの打撃は繰り出せなかった。

ラウンド終盤、無敗の“ノマド”は右手のクリーンヒットでニールを痛めつけ、膝をボディにたたき込む。それでも何とか立っていたニールだが、残り1分を切ってフェンス際の攻防となった際、ラフモノフがスタンディングリアネイキドチョークで試合に幕を引いた。

実におもしろい展開となったこの試合は、そこに参加した2人のファイターの株を上げた。ラフモノフはこのときの勝利によって17勝0敗、フィニッシュ17回をマークしている。
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