素晴らしい戦いに満ちていた2023年には、見事な1本勝ちも数多く見られた。『UFC.com』が非公式に選んだベストサブミッションをご紹介。
1. アレクサ・グラッソ vs. ワレンチナ・シェフチェンコ1
新UFC女子フライ級チャンピオン、アレクサ・グラッソ!
メキシコからやってきたチャレンジャーは、第4ラウンドでワレンチナ・シェフチェンコが犯した戦術上のミスを見逃さず、リアネイキドチョークによるフィニッシュを決めている。
終始きわめて激しいバトルとなったこの試合で、グラッソは第1ラウンドからサウスポーのスタンスで戦うことで、シェフチェンコを驚かせた。チャンピオンのシェフチェンコがグラップリングによってリードを築く一方、グラッソは集中力を保ち、自分に訪れたチャンスのほぼすべてを活用している。
シェフチェンコがスピニングバックキックをミスした瞬間、グラッソがシェフチェンコの背中に乗り上げ、チョークで攻め、しっかりと引き込み、リアネイキドチョークを決めてタップを引き出した。
今年にメキシコからやってきてチャンピオンシップを勝ち取ったファイターは、グラッソで3人目だった。他にはブランドン・モレノとヤイール・ロドリゲスがいる。新王者の、見事な戦いだった。
2. ダモン・ブラックシア vs. ホゼ・ジョンソン
休日にはツイスターなど、いかがだろう?
ダモン・ブラックシアは2連続でのフィニッシュを、UFC史上わずか3度目のツイスターフィニッシュで決めた。開始早々に攻めの姿勢を見せ、グラップリングスキルをいかんなく発揮してホゼ・ジョンソンを堂々とカンバスに引きずり込んだブラックシアは、ジョンソンが犯した戦術上のミスを活用して実にまれなサブミッションフィニッシュを遂げている。
29歳のブラックシアは最初の2試合で白星こそ挙げていないものの、UFCバンタム級で戦うにふさわしいパフォーマンスを周囲に印象付けていた。キャリア通算14勝5敗1分をマークするブラックシアは、ジョンソン戦でUFCのレコードブックに名を残し、この階級に一つの波を起こしている。
3. シャフカト・ラフモノフ vs. ジェフ・ニール
シャフカト・ラフモノフは、ひたすら勝ち続けている。
無敗の新星であるラフモノフはUFC 285メインカードの中盤に組まれたこの試合で、UFCで5連勝、それ以前を考慮にいれれば17連勝をマークし、DWCS(デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ)が生み出したタフなファイターであるジェフ・ニールとの激しい戦いをしのぎきった。28歳のラフモノフにとってキャリアで最も厳しい試練であり、何度か危うい瞬間はあったものの、ラフモノフはこの試練に合格することができた。
3つのラウンドのすべてを通じて、お互いにランク入りしているウェルター級ファイターたちは相手に食らいついていく。ラフモノフの方がバラエティに富み、ボリュームのある攻撃を展開。ニールは第3ラウンドの序盤でラフモノフを揺さぶったものの、ラフモノフをダウンさせるほどの打撃は繰り出せなかった。
ラウンド終盤、無敗の“ノマド”は右手のクリーンヒットでニールを痛めつけ、膝をボディにたたき込む。それでも何とか立っていたニールだが、残り1分を切ってフェンス際の攻防となった際、ラフモノフがスタンディングリアネイキドチョークで試合に幕を引いた。
実におもしろい展開となったこの試合は、そこに参加した2人のファイターの株を上げた。ラフモノフはこのときの勝利によって17勝0敗、フィニッシュ17回をマークしている。
4. ジョン・ジョーンズ vs. シリル・ガーン
ジョン・ジョーンズは誰もが認めるUFCヘビー級新王者になった。そして、ジョーンズがそれを達成するために、それほど長い時間はかからなかった。
“ボーンズ”ことジョーンズは試合開始から1分強でシリル・ガーンをダウンさせており、ガーンはもう、そこから立ち上がることはできなかった。マウントポジションをとると、ジョーンズはギロチンチョークを試みる。これについては跳ねのけたガーンだったが、2度目の試みに捉えられ、すぐにタップすることを強いられた。
オクタゴンを3年離れていたジョーンズだったが、ヘビー級の王座を取り戻すのには1ラウンドもかからなかった。ジョーンズは27勝1敗、ノーコンテスト1回に加え、5連勝を記録。圧倒的なパフォーマンスであり、35歳のジョーンズはこれからも、オクタゴンに立ってきたすべてのファイターの中で最も信じがたい才能の持ち主の1人であり続ける。
5. アリアネ・リプスキ vs. ケイシー・オニール
アリアネ・リプスキがこれまでにないバトルを見せた。
29歳の“クイーン・オブ・バイオレンス”ことリプスキは試合が始まってすぐにケイシー・オニールに仕掛け、持ち味であるストライキングの洞察力と強烈なパワーを見せていく。第2ラウンド序盤でオニールをぐらつかせ、崩した後に、リプスキはアームバーに移行し、相手からタップを引き出した。
UFCにやってきてしばらくの間は安定性に欠けていたリプスキだが、今は3連勝をマークし、ランク入りしたファイターを相手に番狂わせを演じて2023年を締めくくった。時間はかかったかもしれないが、元KSWチャンピオンはオクタゴンでもダイナミックでデンジャラスな存在になり始めている。
6. エリン・ブランチフィールド vs. ジェシカ・アンドラージ
メインイベントという舞台で、第2ラウンド序盤でジェシカ・アンドラージに1本勝ちを収めたことで、エリン・ブランチフィールドは正式に女子フライ級のタイトル争いの一角となっている。
急上昇中の有望株であるブランチフィールドは、元女子ストロー級チャンピオンを捉え、早い段階から打撃を応酬することで、第1ラウンドの大部分でアンドラージのポケットにとどまり続けた。両者とも序盤5分で相手にビッグショットを当てていたが、アンドラージはブランチフィールドのテイクダウンの試みをうまく防いでいる。
第2ラウンドになって、ブランチフィールドは素晴らしいトリップを見せ、サイドコントロールを握り、素早くアンドラージの背中に回る。さらに驚異的な精度でリアネイキドチョークに入ると、すぐさま相手にタップを強いた。
23歳の傑出したファイターがずば抜けたバトルを見せた。UFCで5勝0敗となったブランチフィールドは、タイトル戦の出場を狙っている。
7. ヤイール・ロドリゲス vs. ジョシュ・エメット
UFCデビューから9年、また、チャンピオン候補と見られるようになってから数年、“エル・パンテーラ”の二つ名を持つヤイール・ロドリゲスは、キャリア最大の一戦で、これまでで最も印象的なパフォーマンスをまとめ上げた。
メキシコの傑出したファイターである30歳のロドリゲスは、第1ラウンドからジョシュ・エメットに仕掛け、強烈なボディキックと、クリーンで多彩な打撃で攻めていく。ラウンド終盤ではエメットがロドリゲスにパワーショットを浴びせるも、ロドリゲスはこれをうまく防ぎ、足での攻撃に戻した。
第2ラウンドの早い段階では、ロドリゲスがエメットにダメージを入れる。スポットに狙いをつけ、その狙い通りにパワフルなブローをたたき込んだロドリゲスは、フライングニーを当ててエメットの頭部のワセリンをはぎ取った。この機にロドリゲスをカンバスに引き込んだエメットだったが、ダイナミックなアスリートであるエメットがトライアングルチョークを決め、エメットにタップさせている。
信じられないほどのパフォーマンスだった。長く期待のかかっていたファイターが、それにふさわしいスタイリッシュで、痛烈で、印象的な戦いを披露した。見事な勝利であり、ロドリゲスはこれを受けて、次はメインイベントに立つことになる。
8. ディエゴ・ロペス vs. ギャビン・タッカー
オクタゴンにおいて、ディエゴ・ロペスの名が急速に知られるようになっている。
ショートノーティスで迎えたデビュー戦で、モフサル・エフロエフに対して持てる力をすべて出しきったロペスは、ギャビン・タッカー戦の序盤でトライアングルチョークに飛び込んだ。タッカーはしばらくの間これに耐えたものの、ロペスはチョークを固めつつタッカーの腕を伸ばし、マウントの形にローリングして、ついに相手にタップさせている。
メキシコを拠点とするブラジル人であるロペスにとって、驚異的な数カ月だった。しかも、彼の旅は始まったばかりだ。28歳のロペスはキャリア22勝6敗を数え、今や才能あふれるフェザー級において必見の選手となっている。
9. リナト・ファクレトディノフ vs. ケビン・リー
ここにリナト・ファクレトディノフあり!
リナト・ファクレトディノフはケビン・リーに猛攻を浴びせ、ノックダウンし、強烈な右腕で試合を終わらせかけたあと、リーが意識を失うまでハイエルボーギロチンを締め続けた。
“グラディエイター”ことファクレトディノフが、とてつもない試合を見せてくれた。UFCで3勝0敗をマークしたファクレトディノフは、この一戦によって恐れるべきウェルター級ファイターとして頭角を現している。とにかく、とんでもないパフォーマンスだ!
10. ジリアン・ロバートソンvs. ピエラ・ホドリゲス
ジリアン・ロバートソンはUFC女子ストロー級デビュー戦で見事な戦いを見せ、ピエラ・ホドリゲスから無敗の冠をはぎ取った。
優れたグラップラーであるロバートソンは第1ラウンドでスイープを試み、序盤からカンバス上での実力の差を見せつけた。第2ラウンドに入ってすぐ、ロバートソンまたもホドリゲスをマットに引きずり下ろし、相手をコントロールする体勢からエルボーを浴びせて、1本勝ちのチャンスをうかがっている。
第2ラウンド終盤、ロバートソンがアームバーを仕掛け、その腕を伸ばしていく。ホドリゲスはロバートソンの膝に触れて防御を続けていたものの、レフェリーのキース・ピーターソンが止めに入った。デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズに出場経験のあるホドリゲスは、すぐにこのストップに抗議したが、もしここで止められていなくても、ロバートソンが腕をねじり上げ続けたのは明らかだった。
新たな階級に挑戦したロバートソンが、素晴らしい白星を上げた。ロバートソンにとって9回目の1本勝ちは、オクタゴンでは7回目を数えている。