UFC月間レポート:2024年1月

UFC 試合レポート
UFCファイトナイト・ラスベガス84:マゴメド・アンカラエフ vs. ジョニー・ウォーカー【アメリカ・ネバダ州ラスベガス /2024年1月13日(Photo by Chris Unger/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・ラスベガス84:マゴメド・アンカラエフ vs. ジョニー・ウォーカー【アメリカ・ネバダ州ラスベガス /2024年1月13日(Photo by Chris Unger/Zuffa LLC via Getty Images)】
1カ月の間にオクタゴンで起こったアクションからベストパフォーマンスのいくつかを紹介するUFC月間レポート。見事なフィニッシュやブレイクしたコンペティター、才能ある新人たちに光を当てるものだ。

2024年最初の1カ月も、早速この記録に残されている。

ホームのラスベガスでのアクション満載のショーに続き、5年以上ぶりにトロントを舞台としたイベントが、今年最初の2イベントとして行われた。今後の月と比較して、1月については選考の対象となるイベントが半分ほどしかない。ここに上げられている選手や試合を選ぶのは、難しいことではなかった。

今年最初の2回のイベントでは、23試合で12のフィニッシュ、2人の新チャンピオンが生まれ、すでに年間を通じてもベストにあげられる可能性のある戦いがあった。

1月の傑出したパフォーマンスを振り返ってみよう。

ブレイクアウト・パフォーマンス:ジョシュア・ヴァン(UFCファイトナイト・ラスベガス84)

過去9カ月にわたって、ヴァンはUFCで3連勝を上げてプロキャリアを10勝1敗とし、フライ級で突出したプロスペクトという立場を確かなものにした。

ニューヨークで実施されたUFC 295でケビン・ボルハスにユナニマス判定勝ちを収めたヴァンはこの1月、今年最初のUFCイベントで、デニス・ボンダーの代役としてショートノーティスでフェリペ・ブネスとの試合を受けている。そもそもはブネスが昨年にジャルガス・ジュマグロフとの試合から除外されたことでヴァンにUFCデビューの機会が訪れており、この試合でスロースタートを切った“ザ・フィアレス”ことブネスは第2ラウンド後半からギアを上げて勝利をつかんだ。今回もまた、めぐり合わせの一戦だ。

ヴァンをフライ級の中でも興味深い、注目すべき選手としている、いくつかの突出した要素がある。

まず、ヴァンは22歳にして、すでにこのスポーツでも最多レベルのフィニッシュを決めてきた。第2に、ヴァンは2021年10月にプロデビューしたばかりなのにもかかわらず、わずか2年と少しの間で11戦に出場し、UFCで3勝をマークしている。そして、本人も認めるようにまだ成長中であり、最近までレスリングをしたことがなかったという。

ブネス戦の最初のラウンドでは、未熟さや経験不足が透けて見えることがあった。しかし、落ち着きを取り戻したヴァンが第2ラウンド終了前にフィニッシュを狙っていった様子からは、大きな才能を秘めていること、さらなるトレーニングと経験を積めばもっと良くなっていくことが示唆されていた。

フライ級には若く、印象的なファイターがたくさん存在する。今年の最も見応えのある階級の一つになることは、間違いない。

特別賞:ニコラス・モッタ、ジェアン・シウバ、ファリド・バシャラート、マーカス・マクギー、サム・パターソン、ショーン・ウッドソン

サブミッション・オブ・ザ・マンス:プリシラ・カショエイラに1本勝ちしたジャスミン・ジャスダビシアス(UFC 297)

優れたアナコンダチョークを決めたとなれば、カショエイラを退けたジャスダビシアスに2024年最初のこの賞を送らざるを得ないだろう。とは言え、率直なところ、このナイアガラトップチームに所属する選手がUFC 297で発揮した総合的なパフォーマンスに、称賛を送りたいところだ。

ジャスダビシアスはカショエイラに不満を持っていたものの、プレリムで行われるこの試合の、ファイトウイークに入ってからの階級変更に同意した。カショエイラが、女子フライ級での試合は選択肢にならないと断言していたのだ。母国カナダはトロントでのイベントに登場したジャスダビシアスは、入場で大勢のファンを沸かせた後、ほぼ3ラウンドのすべてにわたって徹底的な打撃を浴びせていった

カナダ・オンタリオ州セントキャサリンズ出身のジャスダビシアスは、階級変更のツケを相手に払わせたいと話していた。そして、その通りに戦った。最初の2つのラウンドを10対
8としたジャスダビシアスは、そこからチョークで試合を終わらせようと何度も仕掛けていく。

フィニッシュそれ自体について言えば、ジャスダビシアスは実に巧妙に半ばこの形を整え、そこに短く鋭いエルボーを浴びせてカショエイラにその対応を強いることで、ホールドをより容易に固めていた。これこそ、サブミッションを狙うときにファイターたちが取るべき方法だ。

故郷で、しかも前回の敗北からの立て直しを目指すという重要な状況の中で、ジャスダビシアスは支配的な力を見せた。この日、ジャスダビシアスは“ゾンビ・ガール”ことカショエイラを圧倒している。

特別賞:ジム・ミラー vs. ガブリエル・ベニテス、ジミー・フラック vs. マルコム・ゴードン、サム・パターソン vs. ヨアン・レイネス

ノックアウト・オブ・ザ・マンス:ジョニー・ウォーカーをノックアウトしたマゴメド・アンカラエフ(UFCファイトナイト・ラスベガス84)

仮に自分がUFCライトヘビー級ファイターで、マゴメド・アンカラエフとの1回目の試合が議論を呼び、直ちに再戦が求められる状況になったとしよう。そんなとき、あなたはマッチメーカーにこう言うかもしれない。「次に行っても問題ない」と。なぜなら、このロシアのコンテンダーは、そういった再戦において、これまでのキャリアで最も鮮やかなフィニッシュのうちの2回を決めているからだ。

2020年をイオン・クテラバとのバトルに費やし、2度目の対戦に見事な決着をつけていたアンカラエフ。2024年シーズンの初戦はウォーカーとの再戦であり、それに先立ってUFC 294でウォーカーと戦った際には、アンカラエフがウォーカーに反則となる膝を入れたことでノーコンテストに終わっていた。

クテラバ戦の続編と同様に、アンカラエフは1月に行われたウォーカーとの再戦でも、どちらが優れているかに疑問の余地を挟まない戦いを見せた。メインイベントだったこの試合の第2ラウンド中盤、アンカラエフはフェンスに寄りかかっていたウォーカーに強烈な一撃を入れている。

この1年にこれから見られる中でも、実に明確な“こいつをここから連れ出せ”の一撃だった。ウォーカーを崩したアンカラエフはフェンスに近づき、拳をまるごと、ウォーカーの鼻にたたき込む。ウォーカーはすぐに顔を覆い、身を守る体勢をとっており、これによって試合に幕が引かれた。

アンカラエフがライトヘビー級のランク内で、タイトル争いにからみはじめて何年かがたっている。しかし、この試合の前2戦が引き分けとノーコンテストに終わっていることで、その立場は少し揺らいでいた。

アンカラエフはウォーカーを倒したことで再び勝利をつかみ、無敗の記録を12試合に伸ばしている。このおかげで、ライトヘビー級のタイトルチャレンジャーの有力候補の1人になっているはずだ。

特別賞:ニコラス・モッタ vs. トム・ノーラン、ブルンノ・フェヘイラ vs. フィル・ハウズ

ファイト・オブ・ザ・マンス:ラモン・タバレス vs. セルヒー・シーディー(UFC 297)

トロントでファイト・オブ・ザ・ナイトの栄誉に浴したのは、ミドル級タイトルマッチだった。それは分かっている。そして、この月間レポートは決して公式な判定ではない。その上で、デイナ・ホワイトのコンテンダーシリーズ出身のタバレスとシーディーによるリマッチを、ベストファイトとしたい。

広く、複数の部分で、興味深い試合だった。

試合開始から、タバレスの方がシャープで素早いファイターだった。第1ラウンドの終盤にかけてシーディーに傷を負わせたタバレスは、第2ラウンドでもシーディーを崩し、痛めつけており、仮にフィニッシュではないにしろ、いずれこの試合で勝つのはタバレスのように思われた。しかしながら、カナダ・オンタリオ州バーリントン出身のシーディーがとてつもない気概と粘り強さを見せ、反撃に出て試合を大いに盛り上げる。シドニーが最終ラウンドの第3ラウンドでもプレッシャーをかけ続け、2人は激しい接戦を繰り広げた。

ジャッジはタバレスにスプリット判定での勝利を与えた。その判定に、偏向的な観客たちは驚いたものの、結果に対する感情はともあれ、2人のデビューしたてのバンタム級ファイターによる見事な試合だったことは間違いなく、2人のUFCでのこれからのキャリアが有望なものになることもまた、間違いない。

特別賞:ドリカス・デュ・プレシ vs. ショーン・ストリックランド
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