シンガポールのスイート16:後編

UFC
UFCファイトナイト・シンガポール:デミアン・マイア vs. ベン・アスクレン【シンガポール・シンガポール/2019年10月26日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images)】
UFCファイトナイト・シンガポール:デミアン・マイア vs. ベン・アスクレン【シンガポール・シンガポール/2019年10月26日(Photo by Jeff Bottari/Zuffa LLC via Getty Images)】
日本時間2022年6月12日(日)にオクタゴンが再びシンガポールに上陸し、UFC 275が実施される。輝くシンガポールの夜に、最高のバトルが期待できるはずだ。なぜなら、この場所では過去にも多くのスリリングな戦いが繰り広げられてきたのだから。

シンガポールのスイート16:前編”と“シンガポールのスイート16:中編”に続き、これまでにシンガポールで行われたUFCイベントの中から記憶に残る16の試合――スイート16――を振り返ってみよう。

<2019年>
デミアン・マイア vs. ベン・アスクレン




ウェルター級のグラップラー対決であるデミアン・マイアとベン・アスクレンの試合はメインイベントとして登場。プロとして初の黒星を喫したアスクレンが、2度のタイトルチャレンジャーであり、UFCで2番目に多い勝利を挙げていたマイアに挑んでいる。

誰もがグラップリングバトルを予想していたものの、アスクレンの動きを回避したマイアは左腕によるヘビーショットから戦いを開始した。アスクレンが距離をつめようと素早く身をかがめるたび、マイアはそれを交わして近い距離からより強力な打撃を展開している。

第1ラウンド残り2分の時点で、こめかみに当たったマイアの左からの一撃でアスクレンがよろめいたように見えた。マイアはさらに、ボディへのキックもお見舞いしている。そのマイアがカンバスに倒されたのはラウンドの終盤のことだった。アスクレンがマイアをテイクダウンしたものの、マイアがすぐにサブミッションを狙い、自らの足で立つためのスペースを見つけようとしたため、アスクレンはそれを防ぎつつスクランブルを強いられている。

それでもラウンド終盤の成功に勢いを得たアスクレンは第2ラウンドで攻勢に出ると、クリンチを試みつつマイアをグラウンドに引きずりおろす手段を探していた。しかし、実際は打ち合いが続き、アスクレンの連打がマイアの左頬に切り傷を作る。ストライキングではアスクレンが優勢を保ち、手数を打ちながら距離を詰めていく。マイアは時おりカウンターを打っている状態だった。

ラウンド終盤に入ってアスクレンは再びテイクダウンを奪ったが、今回はマイアが見事なオモプラッタからトップポジションへ移行し、マウントを取る。アスクレンがスクランブルにすると、マイアがキムラを仕掛け、アスクレンがドミナントポジションを取ろうとしているところでラウンド終了のホーンが鳴った。

第3ラウンドが始まるとマイアはアスクレンの接近を許す。センターまで位置を戻したマイアは力業のテイクダウンを喫するものの、アスクレンがマイアをそこにとどめておくことはできなかった。バトルはスローペースになり、両者に明らかに疲労が見え始める。ストライキングではマイアが相手に差をつけ、重たいショットが出始めたものの、アスクレンによって再びフロアに倒された。

だが、2回目のダウンのときと同じように、マイアはすぐさまポジションを返し、マウントをとってアスクレンの背中を捉え、アスクレンは腹ばいの形になる。ボディトライアングルに入ったマイアは腕でアスクレンの首を絞めつけ、ついにタップを奪った。

マイアにとっては信じられないくらい見事な結末だった。2連敗の状態で2019年を迎えたマイアは、3連勝を決めた状態で2020年へと歩みだしたのだ。

ベニール・ダリウシュ vs. フランク・カマチョ



メインカードの半ばに行われたこのミドル級マッチでは、豊かなアクションでファンを喜ばせるフランク・カマチョがブラジリアン柔術の黒帯であるべニール・ダリウシュと拳を合わせた。

この試合はダリウシュの試合となった。間隙をついてカマチョに一撃を食らわせたダリウシュは、ヘビーキックで相手のボディをぐらつかせ、機を見てテイクダウンを奪うと、背中に乗り上げてリアネイキドチョークで攻め立てる。懸命に守ろうとしたカマチョだが、ダリウシュはさらに締めつけ続け、タップを引き出して3連勝を飾った。

シリル・ガーン vs. ドンテイル・メイエス



経験は少ないながらも将来性あふれるヘビー級のファイターたちが激突したこの試合では、元TKO王者のシリル・ガーンがコンテンダーシリーズ3回出場のドンテイル・メイエスと戦った。

最初からハイペースのバトルを展開したビッグボーイたちは、それぞれに自分のレンジを見いだしてダメージを加えようと滑るようにケージ内を移動した。最初の数分ではどちらのファイターも不発に終わったものの、ガーヌが距離をつかむとボディキックを打ち込み、鮮やかな右からのパンチを浴びせていく。ラウンド終盤になると当時無敗だったフランスのガーヌの右手がメイエスを捉え、一時的にカバーアップの体勢を強いた。これで攻勢を強めたガーンは、ホーンが鳴るまでメイエスをフィニッシュ直前に追いつめている。

第2ラウンドも流れは変わらず、ガーンはプレッシャーをかけ続け、キレのある動きと重い打撃でメイエスを苦しめた。メイエスもよく持ちこたえたが、バトルを一時的に止めたローブローだけは別だった。ラウンドが終わりに近づくとガーンが手を変え、レベルチェンジでメイエスをグランドに倒す。しかし、“ロード・コング”は自分の足で立つことに成功し、それほどのダメージを食らうことなくラウンドが終了した。

第3ラウンドは両者のキックの応酬で始まる。ガーンはボディへのティープでメイエスを痛めつけると、テイクダウンを試みた。ガーンのテクニックと調整能力が試合を決定づける要素として明らかに目立っており、ガーンが次々と繰り出す攻撃の幅は、第3ラウンドでも第1ラウンドと同じくらいの多彩さを維持している。

残り90秒、ガーンの膝がボディに入ったメイエスが体勢を崩し、“ボン・ギャマン”ことガーンにチャンスが訪れた。ボディへの攻撃を続けたガーンはメイエスをカンバスに引きずりおろし、ラスト2秒でヒールフックによってタップを奪っている。

フランスから来た有望株である無敗のヘビー級ファイターが、信じられないパフォーマンスで2戦連続のサブミッション勝利を収め、戦績を5勝0とした。

ムスリム・サリコフ vs. ラウレアノ・スタロポリ



メインカードのトップバッターだったこのウェルター級マッチで、スタロポリは“キング・オブ・カンフー”ことサリコフを相手に8連勝を決めることを狙っていた。サリコフはアブダビで行われた前戦に、第1ラウンドで勝利している。

バトル開始からの2分間の大部分は、お互いに間合いを測り、それぞれの相手を読むことに費やされた。いずれも積極的に手を出すことはなく、展開を変えるような打撃もなかった。しかし、中盤から戦いは激化し、サリコフがミッドセクションにスピニングバックキックを炸裂させると、スタロポリがカウンターのハイキックを放ち、再び両者が慎重な姿勢に戻っている。

第2ラウンドではスタロポリがアグレッシブさを強め、前に進み出てキックを繰り出すも、サリコフが素早いスピニングキックで応じる。ただし、これは完全には当たらなかった。負けず劣らずハイキックをかますスタロポリに思わず笑みをこぼしたサリコフは、キックをキャッチしてスタロポリをわずかの間ながらカンバスに引きずり倒した。

バトルが半ばを過ぎたとき、サリコフが再びスタロポリのキックを止め、その背後から痛烈な右腕の一撃を繰り出す。次第にサリコフが主導権を握り始め、フェンス沿いでのキックとヘビーなブローでスタロポリを攻め立て、バトルの仕上げにかかっているかのようだった。スタロポリはそれでも自らの足で立ち、応戦の意思を見せていたが、ホーンが鳴るまでサリコフが場をコントロールし続けている。

最終ラウンドが始まると、スタロポリが体を揺らしながらコーナーから進み出る。2人のバトルは再び盛り上がることが期待された。しかし、サリコフは距離を取り、テイクダウンの機会をうかがう。スペースを取ったサリコフは右からのクリーンヒットを当てるも、スピニングキックは外れ。一方のスタロポリの攻撃も止まってはいなかった。ラウンドの半ばではサリコフがケージの中央で相手の背後までとどきそうな一撃を放つも、スタロポリはこれをしっかりと防ぐ。フリーになったスタロポリはボディショットをいくつか入れた。

ケージ中央で一進一退の攻防を続けた2人。サリコフがより派手で目立つ攻撃をするのに対し、スタロポリは自分なりのスタイルで応戦し、勝敗の行方はジャッジに委ねられることに。

軍配はサリコフに上がった。オクタゴンで3連勝を決めたサリコフは、スタロポリの長く続いた成功を断ち切っている。


シンガポールで行われる最新のイベントであるUFC 275:テイシェイラ vs. プロハースカは日本時間2022年6月12日(日)開催予定。2つのエキサイティングなタイトルマッチをお見逃しなく!
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